2. 調査研究内容
2-1. 支援方法の事例研究
(1)教員研修
昨年度に続き、柏崎市立教育センターの依頼を受け、教職員研修の企画協力およびフィールド解説を行った。講師の派遣に際しては、将来の地域内協力を念頭に置き、同市にある財団法人海洋生物環境研究所の研究員の参加を働きかけた。
研修目的: |
フィールドに出て、教育素材としての海を認識すること。 |
主催者: |
柏崎市立教育センター(担当 指導主事 中野博幸) |
受講者: |
柏崎市内の小学校教諭18名 |
企画者: |
海洋政策研究財団 調査研究員 堀口瑞穂、赤見朋晃 |
解説員: |
財団法人海洋生物環境研究所 研究員 道津光生、三浦正治 |
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海洋政策研究財団 研究員 福島朋彦 |
場所: |
柏崎市内海岸および柏崎市立教育センター会議室 |
日時: |
2005年8月17日 8:30-16:00 |
○支援に関する検討事項
複数の外部機関が合同で研修を担当する。
→ 事前に対面するとともに、その後の連絡を密にする。
→ 役割分担を明確にする。
地元機関に引き継ぐことを念頭にして研修を行う。
→ 主催者と該当機関の仲介に努める。
○その他(担当者の所感より抜粋)
小学校では、行事や他の教育カリキュラムとの関わりもあり、近くに海があってもなかなか訪れることができない。受講者の一名は、海から50mに学校が位置するにも関わらず、海に親しめないとのことであった。また、教育施設の活用にも課題があった。見学した“サケのふるさと館”には、毎年多くの学校が施設見学に訪れているにもかかわらず、河口や海岸と併せて見学したり、近くに暮らす人たちの実体験を聞いたりしたのは初めてという。
海洋教育の推進には好適なロケーションやハード面の充実は必要条件ではあるが、それだけでは不十分である。ノウハウの紹介、コーディネートを含めたソフト面の充実がより重要である。この点については、当財団の行っている海洋教育普及推進事業の方向性の正しさを改めて確認した。
(2)中央区教育委員会主催 平成17年度第5回小学校理科研修会( 巻末資料3 参照)
中央区教育委員会が主催する「小学校理科研修会」は、中央区内の教職員を対象にした理科教育研究行事の一つであり、当方にとっては海洋教育推進の場としてとらえることができる。当財団は昨年度の第4、5回の研修も引き受け、海洋教育の必要性を訴えることに一定の成果を収めた。そこで本年も、同教育委員会からの依頼を受け、沖ノ鳥島を題材に講演することとした。
研修目的: |
時事の話題である沖ノ鳥島を題材にして、教育素材について検討すること。 |
主催者: |
中央区教育委員会(担当 久松小学校教諭 杉本茂雄) |
受講者: |
中央区教職員14名(9小学校) |
内容企画: |
中央区立久松小学校 教諭 杉本茂雄 |
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海洋政策研究財団 研究員 福島朋彦 |
講演者: |
海洋政策研究財団 研究員 福島朋彦 |
講演補助: |
海洋政策研究財団 研究員 日野明日香 |
場所: |
中央区立明石小学校 教室 |
日時: |
2005年8月25日 10:00-12:00 |
○支援に関する検討事項
時事の素材を教育のなかで活かす方法を提示する。
→ 相手方担当者と予め打ち合わせ、初等教育の素材になるかを検討した。
→ 小学校の教諭が対象であったので、理科に執着せず、幅広い話題を検討した。
○その他(担当者の所感より抜粋)
講演終了後、参加者から配布資料のデジタルデータが求められたことや、沖ノ鳥島の様子を掲載しているwebサイトの問い合わせがあったのは、ある程度、受講者の興味を惹きつけることができたためと考える。
「沖ノ鳥島の自然をとおして子供たちの将来を考える良い機会になった」、「次世代には発言権も選択権もないことをあらためて心に刻んだ」、といった意見が寄せられたことから、知識にとどまらず、考える場も提供できたものと思う。沖ノ鳥島という小さな島をもとに、海洋や子供らの将来について考え、さらに教育の素材としての活用されることを期待したい。
千葉県教職員組合君津支部が実施する教育研究集会は千葉県君津地区の教職員を対象にした教育研究行事の一つで、その中の「環境問題と教育分科会」は、海洋教育および環境教育に関する意見交換の場となっている。当財団は、一昨年より共同研究者(助言者)として招聘を受けて参加している。当方にとっても、教育現場の実情把握に有効であることから、本年度も派遣依頼を受け、参加することとした。
依頼事項: |
現場教員による発表について外部研究者としての客観的な助言を述べること |
主催者: |
千葉県教職員組合 (担当 環南小学校教諭 辻 俊明) |
参加者: |
君津地区の小・中学校教員 約30名 |
助言者: |
海洋政策研究財団 研究員 福島朋彦 |
記録補佐: |
海洋政策研究財団 研究員 菅家英朗 |
場所: |
君津教育会館 |
日時: |
2005年9月23日 10:00-12:00 |
○支援に関する検討事項
発表する教員とは事前に面談することが困難であり、準備なしの本番的要素が大きい。
→ 主催側の担当者より事前に資料を取り寄せる。
30分の発表内容だけから活動を評価することの困難さ。
→ 先入観を抑えて発表者の真意の理解に努める。
○その他(担当者の所感より抜粋)
分科会は2部構成で行われ、前半は2件の教育事例の発表があり、後半は講師の全体講評であった。約30名の教職員が参加し熱心な意見交換が行われた。2件の報告は、身近な自然である干潟や森を守り育てることで、児童・生徒に自分が住む町への誇りを芽生えさせる好事例であった。
講評では、外部支援団体を有効に活用し、教育現場にはない専門的な知識やノウハウなどを得ることができれば活動内容が一層充実する旨めアドバイスを行った。特に児童・生徒のやる気を引き出すうえで活動成果を学校外にPRする機会をつくる重要性が共通認識として確認できたことは大きな成果であった。
* 後日、本件を当財団のホームページへ掲載することを希望する旨を伝えたところ、躊躇する学校があり、掲載を見送ることとした。児童を預かる立場からすると、氾濫する情報に強い警戒感を持つことが分かった。予め趣旨説明などの配慮が必要だった。
東京都小中学校環境教育研究会は、都内の教職員を対象にした環境教育研究行事の一つであり、当財団では昨年度の研修も引き受け、海の教育素材としての価値を訴えた。このように当方にとっては海洋教育推進のための場としてとらえることができるので、本年も研究会への講師派遣を受諾した。
研修目的: |
私たちの生活は、海洋環境にどのように関わっているのか、それを系統立てて理解すること |
主催者: |
東京都小中学校環境教育研究会 |
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(代表 杉並区立泉南中学校長 飯田滋) |
受講者: |
東京都小中学校教諭 約10名 |
内容企画: |
中央区立久松小学校 教諭 杉本茂雄 |
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生物水処理研究所 代表 清水透 |
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船の科学館 研究員 小堀信幸 |
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海洋政策研究財団 菅原善則、福島朋彦、菅家英朗、日野明日香 |
進行役: |
菅原善則 |
解説者: |
清水透、小堀信幸、藤井美恵、福島朋彦、菅家英朗、日野明日香 |
場所: |
お台場公園 および 船の科学館会議室 |
日時: |
2005年10月29日 12:00-18:00 |
○支援に関する検討事項
生物水処理研究所、船の科学館および当財団の合同で解説すること
→ 合同で解説にあたるにしても役割を明確にする。
→ 解説員とは別に専任の進行役を用意する。
座学、フィールド観察、機材の取り扱いなど、盛りだくさんの内容。
→ それぞれの内容が分散しないように関連付ける。例えば、プランクトンネットで採集したものを実験室で観察するなど。
→ カブトガニの立場では東京湾をどう評価するか、といったユニークな視点の提供
→ 我々の排出物が汚染源となっていることを、系統立てて説明する。
○その他(担当者の所感より抜粋)
研修会終了後の懇談会では議論が白熱し、当初の予定を大幅に越えて議論が続いたことは、本研究会のプログラムが参加者の興味をかきたてたと評価できる。また、紹介した水質実験資材の販売先や値段などの詳細情報提供が求められたことは、実際の授業で使ってみようと評価されたものである。今後も、今回の経験をいかしつつ、海洋教育の拡充について努めていきたいと思う。
西柴小学校は既に海洋教育を積極的に取り入れており、特設クラブ「西柴アマモ隊」の知名度は今や全国区である。当財団は、アマモ隊を指導する坂田教諭と交流があり、かねてより助言等の協力に努めてきた。今回依頼されたのは、4年生の総合的な学習の時間の締めくくりの授業であるが、この授業は、2005年6月に「金沢八景−東京湾アマモ場再生会議」が実施した出前授業のフォローアップも兼ねている。授業では、アマモの解説と、水の酸素と汚れを調べる簡単な実験を行った。
授業目的: |
アマモという植物を通じて、海洋の環境全体を理解すること |
実施学校: |
横浜市立西柴小学校 4年1, 2, 3, 4組 |
クラス: |
4年1・2組 および 3・4組 |
内容企画: |
西柴小学校 教諭 坂田邦江 |
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海洋政策研究財団 研究員 菅家英朗、福島朋彦、日野明日香 |
場所: |
横浜市立西柴小学校 理科室 |
日時: |
2006年1月27日 9:00-11:00(2回分) |
○支援に関する検討事項
別の調査機関の授業を引き継ぐ形式なので、重複を除き、一貫性を保つ必要がある
→ 菅家・菅原が同授業を見学し、予め、状況把握に努めた。
→ 担当教諭とは繰り返し面談し、状況把握に努めた。
授業のフォローアップについて
→ 生徒から出た質問について、後日回答書を作って送付した( 巻末資料6)。また生徒から感想文( 巻末資料6)をもらい、授業に対する自己評価に努めた。
当財団の出前授業は6年生が中心だったので4年生は初めての試みだった。
→ マンガのキャラクターを盛り込むなどの工夫を施した。
実験は講義を実施する場合の注意力散漫にならないような努力
→ 先に講義を行い後から実験に参加させる。
○その他(担当者の所感より抜粋)
今回の出前授業では、これまで学習したアマモやヘドロ、海の生き物などのことを通じて、海をきれいにするにはどうしたら良いのだろうという、子どもたちの純粋な気持ちと具体的な行動への意気込みが感じられた。西柴アマモ隊の活動をきっかけとした取り組みが、学校の中だけではなく、大きく地域に広がっていっていることに感動すら覚えた。
「海の自然科学教室」は、海洋学会と国立室戸少年自然の家が高知県内の小学生を対象に開催した海洋教育実践活動である。開催に際して、海洋学会より当財団に招きがあったことから、科学的裏付けのある教育ツールや効果的な伝達方法などを学ぶためオブザーバーとして参加することとした。
開催目的: |
海洋を自然科学的観点から親しみ・学ぶこと |
実施対象: |
高知県内の小学校 3, 4, 5, 6年生 約30名 |
内容企画: |
日本海洋学会 教育問題検討部会 岩崎望/岸道郎 |
場所: |
高知県室戸市 国立少年の家 |
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地先海岸および国立少年の家実験室 |
日時: |
2005年6月3-5日 |
参加: |
海洋政策研究財団 福島朋彦 菅家英朗 |
○スノーケリングに関連して学んだ事項
潜水体験、乗船体験が伴うことについて
→ 高知大学教育学部からのボランティアスタッフが多数参加した。
→ スノーケリングにおいては、特定の入り江の中に限定した。
→ 子どもが船酔いすることを踏まえて実習の順番を考える
→ 亀の見学など、子どもの集中力や体力を考慮した休息を兼ねたプログラム
室内実験について
→ 安価で製作できるオリジナル測定器
→ 直接体験できなかった子どものためにビデオなどの疑似体験で補う
→ 実験装置をお土産として与える・・・家に帰って再び試す
→ 実験失敗に備えてのビデオ映像の用意
→ 自分の観察した生物(プランクトン)の写真提供は子どもにインセンティブを与える
○その他
海の自然科学教室に参加し、様々な視点の教育手法を学んだ。それぞれの講師が工夫を凝らした実演だったので、どれをとっても興味深い内容ばかりであった。特に、身近な事例から海洋学の最前線を説明する手法は、研究者集団である海洋学会ならではの試みだった。
一方で、受講する対象が小学校3年生から6年生までと幅広かったため、すべての参加者に満足いくプログラムの作成は困難である。また、著名な研究者であろうとも、子どもたちの注意をひきつけるテクニックについては、小学校の教諭には太刀打ちできないのも確かであろう。この点は、学校側との協働作業を念頭に置いている我々のスタイルを是非参照していただきたいとも感じた。
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