1. 調査研究概要
1-1. 背景
これまでの学校教育の現場では海に関わる事象が取り上げられる機会が少なく、以前より、海洋関係者の間では海洋教育の普及・推進を望む声があった。そうしたなか、平成14年度の総合的な学習の時間の導入は、外部機関が学校教育に参入する好機と捉えられ、海洋関連機関も次々と支援を目指し始めた。しかし4年が経過した今日、一部においては成果のみられる例があるものの、全体的には外部機関の支援が十分に普及したとは言い難く、教育現場と支援側の双方に不満足な事例が見受けられる。当財団は、学校と支援機関による効率的な連携体制を模索するため、平成14年度より3ヶ年にわたり、「海洋教育拡充に向けた取り組み」を実施し、課題または方法について一定の方向性を示してきた。本研究は、同調査研究で得られた知見を踏まえ、本年度より新たに3年計画で、海洋教育の効率的な普及方法を検討するものである。
「海洋教育拡充に向けた取り組み」では、教育現場の実態把握と支援手法の検討を軸として、1)教科書分析、ヒヤリングおよびワークショップ開催による現状把握・問題点の抽出、2)教員研修、学習支援活動および事例見学を通しての支援の手法検討、および3)副読本の作成などの普及方法の検討を行った(図1-1)。本調査研究では、基本的な方向性についてはこれらを引き継ぎつつ、普及・推進方法の検討・実践により重点を置いた調査研究を行う(表1-1)。
図1-1 これまでの調査研究内容と方向性
表1-1 調査研究項目および重点
平成17年度実施項目は、支援方法の事例研究および海洋教育普及のための情報整備に区分される。
(1)支援方法の事例研究
効率的な支援のあり方を検討するため、教員研修、学習支援を行うとともに、他機関の教育活動への参加を通して、教育現場とのつながりを保つことに努めた。本年度の実施内容は下記のとおり。
(1)教員研修:柏崎市教育委員会、中央区教育委員会、千葉県教職員組合君津支部教育研究集会、東京都環境教育研究会
(2)学習支援:横浜市立西柴小学校(出張授業・アドバイス)
(3)他機関の活動研究:日本海洋学会主催(海の自然教室)
(2)海洋教育普及のための情報整備
海洋教育普及推進のために、日本海洋学会との共同による副読本の作成、情報交換を促進するための“海まな”サイトの開設、現場の海洋教育実施者のインタビュー公開および海洋教育に利用できるフリー素材の提供を行った。
(1)副読本:海のトリビアの普及活動
(2)情報ネットワーク:海まなサイトの開設・公開、実践校の登録
(3)海洋教育実践者のインタビュー:ホームページ公開
(4)フリー素材の提供:底生生物他の写真
(5)活動報告:教員研修、学習支援、海の学習見聞録など
表1-2. 支援方法の事例研究の活動一覧
区分 |
月日 |
行事名(主催) |
場所 |
内容 |
担当 |
(3) |
6/4〜6/5 |
海の自然教室
(日本海学会) |
高知県
室戸市 |
参加 |
福島・菅家 |
(1) |
8/17 |
職員研修講座
(柏崎市教育委員会) |
新潟県
柏崎市 |
講師派遣
企画協力 |
福島・赤見・堀口 |
(1) |
8/25 |
平成17年度 第5回 小学校理科研修会
(中央区教育委員会) |
中央区立
明石小学校 |
講師派遣
企画協力 |
福島・日野 |
(1) |
9/23 |
教育研究集会
(千葉県君津支部) |
千葉県 |
講師派遣
企画協力 |
福島・菅家 |
(1) |
10/29 |
平成17年度研究会
東京湾の汚染を探る
(東京都環境教育研究会) |
東京都
お台場 |
講師派遣
企画協力 |
菅原・福島
菅家・日野 |
(2) |
1/27 |
総合学習出前授業
アマモに学ぼう 西柴小学校の諸君
(横浜市立西柴小学校) |
横浜市立
西柴小学校 |
授業実施
助言提供 |
福島・菅家・日野 |
|
(1):教員研修、(2):学習支援、(3):他機関の活動研究
|
表1-3. 海洋教育普及のための情報整備の活動一覧
区分 |
月日 |
情報内容 |
場所 |
内容 |
担当 |
(1) |
3/31 |
海のトリビア 発行 |
- |
発売 |
全員 |
(4) |
4/10 |
干潟写真 |
千葉 |
公開 |
福島・赤見・堀口 |
(3) |
5/3 |
今井常夫先生:富津市教育委員会 |
千葉 |
公開 |
赤見・堀口 |
(5) |
3/31 |
海のトリビア 発刊報告 |
- |
公開 |
全員 |
(5) |
6/20 |
他機関の教育活動研究:日本海洋学会 |
高知 |
公開 |
菅家・福島・赤見 |
(2) |
7/20 |
海まな サイト開設 |
- |
公開 |
赤見・堀口 |
(2) |
|
海まな登録:新潟県新発田市藤塚小学校 |
新潟 |
登録/公開 |
赤見・堀口 |
(2) |
|
海まな登録:新潟県柏崎市石地小学校 |
新潟 |
登録/公開 |
赤見・堀口 |
(2) |
|
海まな登録:岡山県呉市渡子小学校 |
岡山 |
登録/公開 |
赤見・堀口 |
(2) |
|
海まな登録:横浜国立大学付属横浜小学校 |
神奈川 |
登録/公開 |
赤見・堀口 |
(2) |
|
海まな登録:目黒星美学園小学校 |
東京 |
登録/公開 |
赤見・堀口 |
(2) |
|
海まな登録:横浜市立西柴小学校 |
神奈川 |
登録/公開 |
菅家・赤見・堀口 |
(4) |
9/12 |
底生生物写真 |
千葉 |
公開 |
福島・赤見・堀口 |
(5) |
9/22 |
教員研修:柏崎教育委員会 |
新潟 |
公開 |
福島・赤見・堀口 |
(5) |
10/14 |
教員研修:中央区教育委員会 |
東京 |
公開 |
日野・福島・赤見 |
(5) |
12/20 |
教員研修:東京都環境教育研究会 |
東京 |
公開 |
菅家・福島・赤見 |
(3) |
12/20 |
岸 道郎先生:北海道大学 |
北海道 |
公開 |
福島・赤見 |
(3) |
2/20 |
坂田邦江先生:横浜市立西柴小学校 |
神奈川 |
公開 |
菅家・赤見 |
(5) |
3/16 |
出張授業:西柴小学校 |
神奈川 |
公開 |
菅家・福島・赤見 |
(3) |
3/24 |
菅家英朗研究員:海洋政策研究財団 |
- |
公開 |
菅家・赤見 |
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(1):副読本、(2):情報ネットワーク
(3):海洋教育実践者のインタビュー
(4):フリー素材の提供、(5):活動報告
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*場所は公開対象の存在(住む)場所
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