日本財団 図書館


2-2. 海洋教育普及のための情報整備
(1)副読本巻末資料7参照
 学校の授業に海洋の事象を取り上げることは義務ではなく、担当する教員の任意の選択に依存する。従って、海洋教育の普及を目指すのであれば、「選択して頂く」の気持ちを込めて動機づくりを検討すべきである。我々は、選択に結びつく動機を提供するには、敷居の高い学術啓蒙書より、やわらかいまたはユニークな内容の方が効果的であると考えた。もちろん、内容の平易さだけではなく、教科書の単元に対応することや、知識の広がりにつながるようであれば、一層教育現場で利用しやすいと考えられる。
 以上のコンセプトのもと、現役の学校職員および日本海洋学会・教育研究部会会員との共同作業で作成したのが「海のトリビア」である。正確には平成16年度の調査研究事業で作成したものであるが、年度末の完成であっため、本報告で紹介する。
 
題名:海のトリビア
著者:シップ・アンド・オーシャン財団 海洋政策研究所、
日本海洋学会
発行:日本教育新聞社
価格:934円+消費税 ISBN: 4-89055-275-8
 
 発行後の広報活動の効果もあり、8月半ばに品切れ状態となり、第二版を印刷することとなった(アマゾンランキング最高780位まで確認)。海洋関連団体からの評価も概ね良好であった。以下はアマゾンのサイトに掲載された書評2件
 
 どうしてこんな本がなかったのか? June 11, 2005
 レビュアー:カズちゃん
 よくある話の種本とは違って、大学などの研究者が関わっており、中にあるものは裏付けとなる出典が明らかな確かなデータが使われているようだ。帯を見ると、小学校の先生の授業ネタなどに使えるのを目標としているようで(?)、関連する教科書の単元名も一目で分かるように書かれている。海に関連しそうな内容がこれでもかこれでもかと盛り込まれており、授業ネタだけなく話のネタにはうってつけである。今話題の「沖ノ鳥島」「メタンハイドレート」から、「犬ぞりが南極で使えない」のような内容もあり、「海」と関係するかな、と思うものもあったがおもしろかった。
 それにしても、考えてみれば「海」って学校ばかりでなく、世間でもなかなか教えられていない。この本は海のおもしろさの扉を少し開くために役立ちそうだ。
 
 参考になりました。September 18, 2005
 レビュアー: rentogen-
 内容はどちらかと言うと教師向けですが、なかなか面白かったです。海以外の内容が多かったのが少し気になります。ダイバーには少し不満の出る内容だったかな?
 
(2)情報ネットワーク巻末資料7参照
 教育現場の活動記録がインターネット上で公開されれば、これから海洋教育を導入しようとする学校に先行事例を紹介することになり、現在実施している学校に成果の公表の場を提供することになり、さらに次なる展開を考える学校には新しい視点の事例を示すことになる。
 こうした想定のもと、海まなサイト(海を学ぶ、海に学ぶ、海で学ぶ、学校教育のためのサイト)を開設した。海まなサイトのねらいは、海洋教育をキーワードとした情報提供の場の整備であり、将来的には広範なネットワーク構築の支援をめざしている。
 
図2-1 海まなのロゴとオリジナルグッズ
 
 サイトの開設に合わせて登録の段取りを決定したが、広報活動を続けるなかで、より分かりやすくするためのフロー作成、オリジナルグッズの制作など、効率化を目指して臨機応変に取り組んだ(表2-1)。
 
表2-1 海まなに関する準備実施状況
月日 実施事項
2005年 6月29日 海まな登録制度概要・作業スキーム・フロー決定
7月20日 webサイトオープン・登録受付開始
8月20日 URL転送設定
9月13日 海まな報告発信機能完成
9月15日 登録フロー決定
11月29日 登録1校目
12月18日 登録証完成
2006年 1月15日 オリジナルグッズ完成
 
 サイトの開設当初は、なかなか登録する学校もなかったが、新聞への掲載、ポスターの作成、イベント参加、教育関係者への直接的働きかけ、およびオリジナルグッズの配布などにより(表2-2)、現在では6校11グループの登録に至った。今後も、登録校を増やすとともに、登録校同士の連携を高め、海洋教育全般の意見交換の場を提供したい。
 
表2-2 海まなに関する広報活動一覧
月日 実施事項
2005年 7月20日 日本教育新聞 記事掲載
7月30日 ポスター・パンフレット作成
7月31日 第3回水とのふれあいin浜名湖にて配布
8月4日 東京湾は生きている船の科学館にて配布
8月6日 教員セミナー大阪にて配布
8月7日 総合的な学習を推進する緊急シンポジウムにて配布
8月17日 柏崎市立教育センター教職員研修講座にて紹介
8月18日 上越市教育委員会 教育長 小林毅夫さん 訪問
8月18日 佐渡市立高千小学校 校長 三田吉夫さん 訪問
8月27日 横浜教員研究会にて配布
8月28日 新潟生活科・総合の会にて配布
9月5日 富津市教育委員会学校教育課 今井常夫さんに依頼
9月8日 国立教育政策研究所 教育課程センター研究開発部
教育課程調査官 藤 修さん 訪問
10月7日 熊本県教育庁社会教育課 野尻絹子さんに依頼
10月7日 水俣市教育委員会
生涯学習課生涯学習係 研川英治さんに依頼
10月7日 目黒星美学園小学校訪問
10月7日 横浜国立大学付属人間教育学部小学校
高橋明久さんに依頼
10月12日 呉市立渡子小学校 訪問
12月 海洋教育実施校の調査(53校)
12月 パンフレット等送付 学校関係者・水族館等 約60件
2006年 1月24日 横浜国立大学付属人間教育学部小学校 紹介
2月20日 日本教育新聞 紙面対談
*海洋教育実施校のリストは巻末資料7に示した
 
(3)海洋教育実践者インタビュー巻末資料7参照
 副読本の提供、先行事例の紹介に加えて、海洋教育パイオニアたちの肉声は、新規参入を促すものと考えた。失敗談とその克服、生徒との喜びを分かち合うときの感動、海への思い入れなど、経験に基づく談話は新規参入を考えるものに勇気を与える。
 そんな思いから、昨年度より、現場で汗を流したパイオニアたちへのインタビューを掲載することにした。本年も、干潟教育に先鞭をつけた今井常夫教諭、海洋科学の楽しさを子どもたちに伝えるために努力する岸道郎博士、今では全国区の知名度にもなっているアマモ隊を率いる坂田邦江教諭、子どもたちに海洋の安全について説く菅家英朗研究員に、その胸のうちを語ってもらった。
 
(4)フリーの素材提供巻末資料7参照
 教育現場のなかで海を紹介するにも、資料がない、インターネット検索するものの適当なホームページがみつからない、このような声に応えるため、当財団海洋教育サイトの中に、フリー素材のページを開設した。この素材には著作権を設定せず、“海を学ぶ”、“海に学ぶ”、“海で学ぶ”学校への提供を想定した。
 
(5)活動報告巻末資料1-6参照
 海洋教育関係者、これから海洋教育に着手しようとする学校に、当財団の海洋教育普及推進活動を紹介するために、逐次サイト掲載を行った。これらの活動報告の閲覧が契機となり、海洋教育への興味を高めることがねらいである。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION