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 また, わが国の発展を支えてきた漁業は, 国連海洋法条約が定める排他的経済水域その他の海洋生物資源の保存及び管理の枠組みによって大きな影響を受けており, その中でわが国漁業とその進んだ漁労技術, 魚食文化を世界の海洋資源の保存及び管理とどう両立させるかが懸案となっている。
 さらに, 貿易立国を支えてきたわが国の海運は, 日本経済の発展と構造変化に応じてその営業を拡充してきているが, 国際単一市場での競争に生き残るためにかつての自国籍船, 自社運航, 自国船員という伝統的形態から便宜置籍船, 船舶管理会社, 外国人船員主体の運航へと経営を複雑化させている。生産の中心が中国等のアジア諸国に移り, 日本人船員, 特に最後まで残っていた船長・機関長が急速に減少していく中で, 集荷能力を維持しつつ外国籍船舶, 外国人船員を主体にしてどのように運航の安全・効率を確保し, 競争力のある海運経営をしていくのか, また, 近年, 西欧諸国を始め各国が, 自国籍船, 自国船員の確保政策に力をいれている中で, わが国は経済立国のインフラであるわが国海運のあり方について国の政策を持たないでよいのか, などの点が注目されている。(第7章参照
 
図1-1-2 九十九里浜の海岸侵食
日本で有数の広大な砂浜も危機に直面している
 
図1-1-3 混乗船で行われる共同訓練
日本人船員と外国人船員が共同で放水訓練を行っている
 
 加えて, 近年のマラッカ海峡や東南アジアでの海賊事件の頻発, アメリカでの9.11テロ以降のテロの脅威とその対策の進行, イラク戦争, そして2001年末の東シナ海での北朝鮮工作船事件などにより, わが国では従来過小評価されてきた感のある海洋の秩序維持と安全保障の問題がにわかにクローズアップされてきている。(第5章第6章参照
 
図1-1-4  インド洋上で捕捉されたアロンドラ・レインボー号
マラッカ海峡に入った直後にインドネシア人の海賊団に襲われ消息を絶ったが, その後インド洋上でインド海軍により捕捉された
 
 このように見てくると, わが国の国政を考えるに際しては, 常に海洋を視野の中に置き, その時々の海洋情勢に応じた海洋政策を立案し, 実行することがいつの時代にも大変重要な課題であることが見えてくる。
 折から2001年4月, 久々にわが国の海洋政策が科学技術・学術審議会に諮問され, 同審議会海洋開発分科会における1年余の審議を経て, 2002年8月「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について−21世紀初頭における日本の海洋政策」が答申された。実に海洋開発審議会3号答申以来12年ぶりの海洋政策全般にわたる答申である。
 前回答申から今回までの12年間に, 海洋を取り巻く内外の情勢と国際社会及び世界各国の海洋に対する取組みは大きく変化し, 進展している。そこで, 次にそのような大きな国際的潮流と各国の動き, この間の海洋国日本の動きと対応, 今回の答申の評価と今後の課題について見ていきたい。
 
図1-1-5 地域別に見た海賊発生件数(IBM資料をもとに作成)
※ 2003年は上半期データ
 
 

国連海洋法条約
 海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS: United Nations Convention on the Law of the Sea)地球の表面の71%を占める海洋について, 領海及び接続水域, 国際海峡, 群島国, 排他的経済水域, 大陸棚, 公海, 島, 閉鎖海, 内陸国の権利・自由, 深海底, 海洋環境の保護`保全, 海洋の科学的調査, 海洋技術の発展・移転, 紛争解決など, 海洋法の全ての側面を規定する統一的な法体系。第3次国連海洋法会議で1982年採択され, 1994年発効, わが国は1996年批准。(第2節以下参照。)
 
排他的経済水域(EEZ)
 沿岸国が領海の外側に, 沿岸の基線から測定して200海里までの範囲内で設定することができる水域で, そこでは沿岸国は, 天然資源の開発やその他の経済活動に対する主権的(排他的)権利, 環境保護や科学的調査などに関する管轄権等を持つ。他方, 他の諸国の航行, 上空飛行, 海底電線敷設などの公海の自由は一般的に認められる。
 
便宜置籍船
 第7章(64頁)を参照







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