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それからもうひとつ国連海洋法条約というものがいわゆる枠組条約であって、これをもとに、先ほど川村所長が言われましたように、海洋をめぐる紛争の平和的解決とか、あるいは持続可能な資源の開発とか、あるいは国際協力というものが原則的に定められていて、それに則ったいろいろな地域的あるいは地球的なレジームがこれからできあがっていく。そういう中にあって、枠組を示したこの国連海洋法条約を、今あるそのままの姿でいいというのではなく、これからいろいろなレジームができあがっていく過程が非常に重要なんだ。したがってある意味で、国連海洋法条約というのは「進化する法」とも言える、というようなことであったと思います。

 

15:海洋の世界の新三層構造

 

それから、そういう中にあって、海洋の世界ではどうも新しい三層構造ができつつあるのではないかということでした。ひとつはいわゆるウェストファリア体制以降の領域主権国家というものが主体となった国家と海洋との関わりの構造。二つ目は領域主権国家間同士の国益を調整する国際法が律する海洋世界の構造。それからもうひとつ、新しくいろいろなレジームができあがってくる段階で、領域主権国家の枠組を越えた、いわゆるボーダーレスというかトランスナショナルというか、そういうような海洋世界の構造もできてきている。非常に複雑な三層構造で、いわゆるナショナルとインターナショナルとトランスナショナルと、三つの構造ができつつあるのではないだろうかと。それが安全保障とか海洋の利用とか、そういうようなものにいろいろな影響を与えて行くであろうという説明があったと理解しています。

私は海洋法はあまり勉強しておりません、といったら「防衛研究所で海洋の研究をしているのに何をやっているんだ」と言われると思いますが、海洋法につきましては布施先生がどちらかと言いますと、いわゆる国連海洋法条約をこれからどう運営していくのかということについて確固とした哲学に従って動いておられますのに対して、私は本日ここにおいでの大内和臣先生の論文も拝見しているんですが、大内先生は非常にプラクティカルで、今の海洋の世界というものを現実的に見つめておられるのではないかなという印象を受けました。われわれとしては布施先生と大内先生、両先生のお話7 をお伺いできたというのは非常に有意義であったのではないかと考えております。簡単でございますが以上です。

 

第3回研究委員会(1999-9-27)

曽我正美氏「海洋と石油資源入門」

 

小川 どうもご苦労様でした。それでは、9月27日の第3回の研究委員会に話題を移しますが、日本エネルギー経済研究所のお二人の先生をお招きしました。理事の十市勉先生(136〜142頁参照)と主任研究員の曽我正美先生(143〜152頁参照)です。本日は曽我先生にお越しいただいておりますので、曽我先生から補足あるいは、その後の発展などについて、コメントをいただければと思います。ご自由にお話しください。

 

7 大内和臣・中央大学教授の講義については、第5回研究委員会「2004年の国連海洋法条約見なおしに日本はなにをすべきか」を参照。

 

 

 

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