2.4.1.3 原動機の試験台への設置状況の確認
1)原動機の吸気システム
相当確認を受ける原動機には、原動機製作者等が指定した運転条件において指定の吸気抵抗を与える吸気装置を装備すること。また吸気装置は、当該原動機に適用するテストサイクルに応じた最大空気流量を流せるものであること。
2)原動機の排気システム
相当確認を受ける原動機には、その運転条件で原動機製作者等が指定した排気背圧を与える排気装置を装備すること。また排気装置は、当該原動機に適用するテストサイクルに応じた定格出力が出せるものであること。
3)原動機の冷却システム
相当確認を受ける原動機の冷却システムは、製造者が指定する通常の温度を保持できる十分な容量を持つものを用いること。
2.4.1.4 その他原動機ファミリーに必要な試験条件
原動機ファミリーを承認するための相当確認が有効と認められるためには、 別紙6の1. に規定する試験の有効性の確認に適合しなければならない。
2.4.1.5 計測及び計算方法の選択
原動機の排気ガス流量を、次の1)から3)に掲げるいずれかの方法により計測及び計算を行うこと。なお計算の詳細については、 別紙6を参照すること。
1)空気、燃料計測による方法
(1)計測項目:燃焼空気流量(VAIRW、VAIRD又はGAIRW)、燃料質量流量(GFUEL)
(2)計算式: 別紙6の(4)式、(5)式、(6)式、(a)式及び(b)式
なお、V EXHW以外を計測している場合は、排気ガス密度(EXHDENS)の計算を必要とする( 別紙6資料1「排気ガス密度(EXHDENS)の推定法」)。
2)炭素バランス法
(* 本方法は、燃料中に酸素を含まない場合に適用できる。)
(1)計測項目:燃料質量流量(GFUEL)、燃料成分濃度、排気ガス成分濃度
(2)計算式: 別紙6の資料2中「湿り排気ガス質量流量(GEXHW)の標準的計算法」Iによる。
なお、排気ガス密度(EXHDENS)の計算を必要とする( 別紙6資料1「排気ガス密度(EXHDENS)の推定法」)。
3)ユニバーサル炭素・酸素バランス法
(* 本方法は、燃料消費量が計測可能で燃料の組成及び排気ガス成分の濃度が判っている場合に適用できる。)
(1)計測項目:燃料質量流量(GFUEL)、燃料成分濃度、排気ガス成分濃度、湿度
(2)計算式: 別紙6の資料2中「湿り排気ガス質量流量(GEXHW)の標準的計算法」IIによる。
2.4.2 試験の実施
2.4.2.1 原動機の出力等の計測
1)計測項目
船舶安全法の「船舶検査の方法」(平成9年6月16日付海検第40号)1.4.7-1(1)(b)に規定する原動機の陸上試運転に準拠し、当該原動機性能の計測及び記録を行うこと(これらは、2.3.1の1)(3)に規定する陸上試運転における当該原動機性能の全記録である。)。
2)出力
(1)NOx計測試験の基準となる出力は、試験台上におけるNOx計測試験のために必要な標準的補機器類のみを備えた状態での、クランク軸端の出力とする。
(2)例えば原動機と増減速機が一体となっている場合のように、必須でない補機器が取り外せない場合、定格回転速度における補機器による消費出力を計算又は計測し、増減速機端で計測された出力から、クランク軸端の出力を決定して差し支えない。ただし、補機器による消費出力はクランク軸端の出力の5%を超えてはならない。
3)試験用燃料
(1)試験用燃料は、以下の表に規定するDM級の船舶用燃料(ISO8217-1996)で、その原動機の仕様に適した燃料を用いること。ただし、当該燃料が入手できない場合、使用する燃料がその試験成績書により、当該燃料に相当すると船舶検査官が判断する場合には使用して差し支えない。
(2)試験用燃料の性状を計測及び記録すること。ただし、事前に行われた燃料油の分析結果により、使用する試験用燃料の性状が確認できる場合は、当該計測及び記録を省略して差し支えない。
(3)燃料温度は原動機製作者等の推奨によること。燃料温度は燃料噴射ポンプの入り口若しくは指定箇所で計測し、計測値及び計測位置を記録すること。
表 DM級(留出油)船舶用燃料(ISO8217-1996)
性状 |
単位 |
DMX |
DMA |
DMB |
DMC |
最小 |
最大 |
最小 |
最大 |
最小 |
最大 |
最小 |
最大 |
セタン価
密度(15℃) |
kg/l |
45
- |
-
- |
40
- |
-
0.89 |
35
- |
-
0.90 |
-
- |
-
0.92 |
引火点
活動点
冬用
夏用
動粘度(40℃) |
℃
℃
℃
mm2/s |
43
-
-
1.4 |
-
-
-
5.5 |
60
-6
0
1.5 |
-
-
-
6.0 |
60
0
6
- |
-
-
-
11.0 |
60
0
6
- |
-
-
-
14.0 |
硫黄分
10%残油の残留炭素分
残留炭素分
灰分
水分
沈殿物 |
質量%
質量%
質量%
質量%
質量%
質量% |
-
-
-
-
-
- |
1.0
0.3
-
0.01
-
- |
-
-
-
-
-
- |
1.5
0.3
-
0.01
-
- |
-
-
-
-
-
- |
2.0
-
0.3
0.01
0.3
0.07 |
-
-
-
-
-
- |
2.0
-
2.5
0.05
0.3
- |
|
<参考> |
軽油2号 (JISK2204):DM級(DMX, DMA及びDMB)相当
重油1種(A重油)(JISK2205):DMB相当
重油3種(C重油)(JISK2205):RM級(残さ油)相当 |
2.4.2.2 排気ガス濃度の計測
2.2.1の1)(2)で確認されたNOx計測試験方案の内容に基づき、以下に留意して適切に計測が行われることを確認する。
1)分析器の校正
試験開始前に、 別紙5の規定に基づく分析器の校正としてゼロ調整及びスパン調整を行うこと。なお、校正ガスの有効期限は、製造者の推奨する保存期間を超えないこと。
2)計測項目
NOx、CO、HC、CO2及びO2の体積濃度を計測すること。
3)計測及び原動機の条件
(1)原動機の運転が安定した各運転状態における回転速度は、アイドリング時を除き、定格回転速度の±1%又は±3回転/分のどちらか大きい方の数値以内に保持されなければならない。またトルクは、計測中の平均が試験回転速度における最大トルクの±2%以内になるように保持されなければならない。
(2)試験中において、少なくとも各運転状態の最後の10分間分析器に排気ガスを流した状態で、分析器の出力をチャートレコーダーに記録するか、あるいは同等のデータを得られるシステムで計測しなければならない。
(3)原動機の回転速度、負荷、吸気温度及び燃料流量は、各運転状態において原動機の運転が安定した状態で計測されなければならない。合わせて、排気ガス流量を計測又は計算し、記録しなければならない。
4)分析器の再校正
計測試験終了後に、計測前に使用したゼロガス及びスパンガスを用いて分析器の再校正を行うこと。なお、計測前後の校正結果の差は2%以内でなければならない。
2.4.3 排気ガス流量の算出
1)排気ガス濃度の決定
各運転状態のNOx、CO、HC、CO2及びO2、の平均濃度(conc)を、最後の60秒間の平均値とそれに対応する校正データから決定すること。
2)排気ガス成分濃度の湿り濃度への補正
2.4.1.5に規定するいずれかの方法による排気ガス流量のうち、GEXHW又VEXHWを用いる場合において、計算に使用する排気ガス成分の濃度が乾き濃度で計測されている場合には、以下の規定による補正係数(Kw)又は湿り濃度を使用すること。
(1)空気、燃料計測による方法又は炭素バランス法による場合
補正係数(Kw)により換算された湿り濃度を使用する。
(計算式: 別紙6の(7)式及び(8)式、又は(11)式)
(2)ユニバーサル炭素・酸素バランス法による場合
排気ガス質量流量の計算過程で計算された湿り濃度を使用する。
3)標準温度及び湿度におけるNOx濃度への補正
NOx排出量は周囲の空気条件に依存するため、 別紙6の3. の規定による係数を乗じて、周囲空気温度と湿度に対する補正をすること。
なお、本項の規定によらない補正式を使用する旨の希望があった場合には、必要な書類を添えて検査測度課長まで伺い出ること。
4)各運転状態における排気ガス成分の流量の算出
2)によって算出された排気ガス質量流量を用いて、各運転状態におけるそれぞれの排気ガス成分の流量を 別紙6の5. の規定によるいずれかの算式により算出すること。
なお、係数u、v及びwは、下表に規定された値を使用すること。
Gas |
u |
V |
W |
conc |
NOx |
0.001587 |
0.002053 |
0.002053 |
ppm |
CO |
0.000966 |
0.00125 |
0.00125 |
ppm |
HC |
0.000479 |
- |
0.000619 |
ppm |
CO2 |
15.19 |
19.64 |
19.64 |
percent |
O2 |
11.05 |
14.29 |
14.29 |
percent |
|
注:係数uは、排気密度が1.293(kg/m3)である場合の補正値である。
排気密度≠1.293(kg/m3)の場合は、u=w/密度となる。 |
5)重み付け係数を考慮した排気ガス放出量の計算
それぞれの排気ガス成分の放出量を、 別紙6の6. の規定による算式により算出すること。
|