(6)貯留タンク内の気相オゾン濃度
表II.5.3-13及び図II.5.3-3には貯留タンク内における気相オゾン濃度の変化を示した。
バラストタンクを模擬した貯留タンク内における気相オゾンの測定開始時の濃度は、注入オゾン濃度に比例する形で2.5 mg/ で最も高く0.7mg/ で低かった。その後の、いずれの試験ケースでも貯留タンク予定量貯留直後から30秒間で急激に減衰し、1時間後にはほとんど検出されない濃度まで低下した。
この気相オゾン濃度に関しても、船体腐食や作業環境の影響に関しては、今後の検討・評価にゆだねられる。しかし、30秒間での急激な減衰と約1時間後での消滅は、現在、国内外で検討されている他の活性化物(塩素、過酸化水素等)に比べてかなり有利にあると考えられる。
表II.5.3-13 |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における貯留タンク内の気相オゾン濃度の変化(ppm) |
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測定(サンプリング)場所及び時間 |
試験ケース(注入オゾン濃度) |
オゾン注入時からの起算時間 |
0.7mg/ |
1.0mg/ |
2.5mg/ |
(1) |
貯留タンク満水直後 |
2.9 |
6.2 |
9.8 |
180秒後 |
(2) |
(1)から 10秒後 |
2.4 |
2.8 |
5.3 |
190秒後 |
(3) |
〃 30秒後 |
2.2 |
1.6 |
0.9 |
210秒後 |
(4) |
〃 1分後 |
1.6 |
1.0 |
1.1 |
240秒後 |
(5) |
〃 5分後 |
1.1 |
0.8 |
1.1 |
480秒後 |
(6) |
〃 10分後 |
0.6 |
0.5 |
0.9 |
780秒後 |
(7) |
〃 30分後 |
0.5 |
0.2 |
0.9 |
1,980秒後 |
(8) |
〃 1時間後 |
ND |
ND |
0.5 |
3,780秒後 |
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図II.5.3-3 |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における貯留タンク内の気相オゾン濃度の変化(ppm) |
(拡大画面:22KB) |
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(7)水生生物
a. 50μm以上の水生生物
表II.5.3-14(1)及び図II.5.3-4(1)には、注入オゾン濃度0.7mg/ における50μm以上の生物数変化及び殺滅率を示した。
この試験ケースでは、処理5日後に動植物プランクトン合計で96.2%の殺滅率を記録するが、IMO排出基準(生物数10/m3未満)の達成に至らなかった。
表II.5.3-14(1) |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における注入オゾン濃度0.7mg/、スリット部流速40m/sによる50μm以上の水生生物数変化及び殺滅率 |
サイズ区分 |
50μm以上 |
殺滅率(%) |
対象生物 |
植物プランクトン
(細胞数/m3) |
動物プランクトン
(個体数/m3) |
合計
(生物数/m3) |
植物
プランクトン |
動物
プランクトン |
合計 |
未処理原水 |
11,863 |
23,250 |
35,113 |
- |
- |
- |
処理直後 |
ND |
1,150 |
1,150 |
100.0 |
95.1 |
96.7 |
処理5日後 |
788 |
538 |
1,325 |
93.4 |
97.7 |
96.2 |
処理8日後 |
125 |
163 |
288 |
98.9 |
99.3 |
99.2 |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、生物数の数値は4回の試験の平均値。NDは検出限界以下。
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図II.5.3-4(1) |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における注入オゾン濃度0.7mg/、スリット部流速40m/sによる50μm以上の生物数変化及び殺滅率 |
(拡大画面:25KB) |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、生物数の数値は4回の試験の平均値。
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表II.5.3-14(2)及び図II.5.3-4(2)には、注入オゾン濃度1.0mg/ における50μm以上の生物数変化及び殺滅率を示した。
この試験ケースでは、処理5日後に動植物プランクトン合計で97.4%の殺滅率を記録するが、IMO排出基準(生物数10/m3未満)の達成に至らなかった。
表II.5.3-14(2) |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験におけるオゾン注入濃度度1.0mg/、スリット部流速40m/sによる50μm以上の水生生物数変化及び殺滅率 |
サイズ区分 |
50μm以上 |
殺滅率(%) |
対象生物 |
植物プランクトン
(細胞数/m3) |
動物プランクトン
(個体数/m3) |
合計
(生物数/m3) |
植物
プランクトン |
動物
プランクトン |
合計 |
未処理原水 |
17,225 |
23,213 |
40,438 |
- |
- |
- |
処理直後 |
125 |
188 |
313 |
99.3 |
99.2 |
99.2 |
処理5日後 |
<50(13) |
1,025 |
1,038 |
99.9 |
95.6 |
97.4 |
処理8日後 |
500 |
138 |
638 |
97.1 |
99.4 |
98.4 |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、生物数の数値は4回の試験の平均値。NDは検出限界以下。
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図II.5.3-4(2) |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における注入オゾン濃度1.0mg/、スリット部流速40m/sによる50μm以上の生物数変化及び殺滅率 |
(拡大画面:24KB) |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、生物数の数値は4回の試験の平均値。
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表II.5.3-14(3)及び図II.5.3-4(3)には、注入オゾン濃度2.5mg/ における50μm以上の生物数変化及び殺滅率を示した。
この試験ケースでは、処理5日後で動植物プランクトン合計で99.9%、8日後でほぼ100%を記録する高い殺滅率であった。しかし、IMOの排出基準を明確に達成する結果とはならなかった。この理由であるが、本試験では各試験ケース共に4サンプルを分析しており、1サンプル当たりの検出限界値は100個/m 3である(この分析方法に関しては、「 5.2 IMO排出基準対応システムの試験、 (3)試験方法、 (3)観測・分析項目及び方法、 e. 水生生物の分析方法等」参照)。つまり、本試験ケースにおける処理5日後の25個/m 3は分析した4サンプルのうち2サンプルは検出限界以下で残りの2サンプルで各1個体が検出された値である。また、処理7日後の13個/m 3(12.5個/m 3)は、さらに少なく、分析した4サンプルのうち3サンプルが検出限界以下で残りの1サンプルで各1個体が検出された値である。すなわち、両数値は検出限界付近の極めて微妙な値である。この数値の評価を正確に行うためには、さらに多くのサンプル量で検証するしか無い。しかし、この数値を持ってIMO排水基準に対して非達成と評価するのは早計であり、基準を達成している可能性がある数値と位置づけられる。
表II.5.3-14(3) |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験におけるオゾン注入濃度2.5mg/、スリット部流速40m/sによる50μm以上の水生生物数変化及び殺滅率 |
サイズ区分 |
50μm以上 |
殺滅率(%) |
対象生物 |
植物プランクトン
(細胞数/m3) |
動物プランクトン
(個体数/m3) |
合計
(生物数/m3) |
植物
プランクトン |
動物
プランクトン |
合計 |
未処理原水 |
23,050 |
14,888 |
37,938 |
- |
- |
- |
処理直後 |
ND |
563 |
563 |
100.0 |
96.2 |
98.5 |
処理5日後 |
ND |
<50(25) |
<50(25) |
100.0 |
99.8 |
99.9 |
処理8日後 |
ND |
<50(13) |
<50(13) |
100.0 |
99.9 |
100.0 |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、生物数の数値は4回の試験の平均値。NDは検出限界以下。
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図II.5.3-4(3) |
IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における注入オゾン濃度2.5mg/、スリット部流速40m/sによる50μm以上の生物数変化及び殺滅率 |
(拡大画面:22KB) |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、生物数の数値は4回の試験の平均値。
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