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2)試験・観察項目別の結果
(1)物理条件
 表II.5.3-9には、各試験ケースにおける物理条件各項目の計測結果を示した。
 処理海水量は1時間当たり約20m3弱、スリット部の圧損は1MPa弱であった。
 なお、これら物理条件項目の値は、「5.2 IMO排出基準対応システムの試験」におけるスリット幅0.3mm、スリット部流速40m/sと同じである。
 
表II.5.3-10 IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における物理条件各項目の計測結果
試験名
(注入オゾン濃度)
回数 測定日 スリット幅
[mm]
注入オゾン量
[g/hr]
海水流量
[m3/hr]
スリット部流速
[m/s]
スリット圧損
[kPa]
圧損係数
2.5mg/L 1st 2月19日 0.3 47.08 18.56 38.06 965.2 1.294
2nd 2月20日 0.3 46.43 18.44 37.80 958.4 1.303
1.0mg/L 1st 2月21日 0.3 18.59 18.46 37.84 956.9 1.297
2nd 2月22日 0.3 18.53 18.76 38.45 954.3 1.253
0.7mg/L 1st 2月23日 0.3 12.69 19.08 39.12 958.4 1.216
2nd 2月24日 0.3 12.21 18.39 37.69 921.6 1.260
 
(2)気泡上昇速度
 スペシャルパイプの下流側に設置した停留タンクで目視計測を行った。
 目視計測は、停留タンクへの注水中は流動が激しく困難なため、注水終了後に行った。
 各ケースでの気泡上昇速度には、特段の差は認められなかった。
 気泡のサイズで上昇速度は一定せず、大きい気泡は速く、小さい気泡は遅かった。上昇速度範囲は、0.33〜5cm/秒であった。
(3)水質
 水質メーターによる計測結果は、巻末参考資料3.に収録した。
 なお、オゾンの分解に影響する未処理原水の有機物量は、溶存有機炭素(DOC)が0.8〜1.2mg/、粒子状有機炭素は0.1 mg/で10月に実施した「5.2 IMO基準対応システムの試験」時とほぼ同じであった。水温は10℃前後と低かった。
(4)水中(溶存)オゾン濃度の変化
 表II.5.3-11及び図II.5.3-1には水中オゾン濃度の変化を示した。
 注入オゾン濃度が最も高い2.5mg/のスペシャルパイプ直後でも、0.14mg/と非常に低い値であり、オゾンの分解速度の速さを表している。また、注入オゾン量0.7mg/はバラストパイプを模擬した停留タンク内(注入時から50秒後)で検出限界以下となり、注入オゾン量1.0mg/はバラストタンクを模擬した貯留タンク注水直後で0.02mg/、注入オゾン量2.5mg/は同貯留タンク注水直後で0.03mg/と極微量のオゾン濃度であった。この残留オゾン濃度の船体腐食への影響は、今後の研究を待たねばならないが、いずれにしても腐食に対するオゾン直接の影響はそれほど大きく無い可能性がある。なお、注入オゾン量2.5mg/では、貯留タンク注水1.5時間後で再上昇に転じた。この再上昇理由に関しては未解明であるが、貯留タンク注水6時間後には検出限界以下の濃度となった。
 
表II.5.3-11 IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における水中(溶存)オゾン濃度の変化(mg/
測定(サンプリング)場所及び時間 試験ケース(注入オゾン濃度) オゾン注入時からの起算時間
0.7mg/ 1.0mg/ 2.5mg/
(1) スペシャルパイプ直後 0.03 0.08 0.14 15秒後
(2) 停留タンク注水 10秒後 ND 0.06 0.07 30秒後
(3)    〃    20秒後 0.02 ND 0.06 40秒後
(4)    〃    30秒後 ND 0.03 0.03 50秒後
(5) 貯留タンク注水 直後 ND 0.02 0.03 60秒後
(6)    〃    1.5時間後 ND ND 0.14 5,445秒後
(7)    〃    3時間後 ND ND 0.08 10,845秒後
(8)    〃    6時間後 ND ND ND 21,645秒後
オゾン注入位置:ミキサーパイプ
 
図II.5.3-1 IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における水中(溶存)オゾン濃度の変化(mg/
(拡大画面:22KB)
オゾン注入位置:ミキサーパイプ
 
(5)貯留タンク内の水中オキシダント濃度
 表II.5.3-12及び図II.5.3-2には、貯留タンク内の水中オキシダント濃度の変化を示した。
 オゾンは海水中に注入されると、海水中に豊富にある臭素等と反応し、オキシダント化合物を生成する。このオキシダント化合物も酸化力を持ち、生成生物殺滅能力と腐食能力を持っている。したがって、オキシダントも水生生物殺滅性能の視点からは多く生成され、環境への影響及び船体に対する腐食影響の面では急速に分解されることが望ましい。
 今回の試験結果では、注入したオゾンによって全ての注入濃度ケースで未処理原水の濃度に概ね5mg/のオキシダントが付加された。そして、この生成オキシダントは、貯留タンク内で1時間の間に急速に減少し、最終的に5日後には未処理原水と同レベルに分解された。
 この生成オキシダントの船体腐食への影響及び毒性に関しても、オゾン同様に今後の研究による評価が必要である。
 
表II.5.3-12 IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における貯留タンク内水中オキシダント濃度の変化(mg/
測定(サンプリング)場所及び時間 試験ケース(注入オゾン濃度) オゾン注入時からの起算時間
0.7mg/ 1.0mg/ 2.5mg/
(1) 貯留タンク注水開始時 14.6 14.9 15.6 45秒後
(2) (1)から5分後 13.0 5.7 17.7 345秒後
(3)  〃  10分後 13.3 11.9 17.2 645秒後
(4)  〃  1時間後 13.6 10.4 11.6 3,645秒後
(5)  〃  6時間後 11.7 12.7 10.3 21,645秒後
(6)  〃  24時間後(1日後) 10.6 14.0 11.3 86,445秒後
(7)  〃  48時間後(2日後) 9.8 11.8 12.2 172,845秒後
(8)  〃  72時間後(3日後) 11.6 10.9 14.8 259,245秒後
(9)  〃  120時間後(5日後) 7.5 9.4 9.8 432,045秒後
未処理原水 10.2 10.6 9.8
オゾン注入位置:ミキサーパイプ
 
図II.5.3-2 IMO排出基準対応改良システム(SPHS-V1)の試験における貯留タンク内水中オキシダント濃度の変化(mg/
(拡大画面:26KB)
オゾン注入位置:ミキサーパイプ


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