5.2 IMO排出基準対応システムの試験
(1)試験目的
「5.1 スペシャルパイプ基本性能向上システムの試験」では、スペシャルパイプだけの処理で目標としたSTEP基準をクリアーした。しかし、バクテリアに対する効果は低い結果であった。
IMO排出基準対応システムは、「2.2 スペシャルパイプ基本性能向上システムの企画・検討」に示したIMO排出基準のクリアーが目標である。この基準には、病原性コレラ菌、大腸菌、腸球菌数を一定濃度未満にすることが規定されている。つまり、これらバクテリアに対して安定した処理効果が求められている。
よって、本試験では、「2.2 IMO排出基準対応システムの企画・検討」、「3.2 IMO排出基準対応システムの設計」、「4.2 IMO排出基準対応システムの製作」の手順で検討・製作した「スペシャルパイプ基本性能向上システム」に活性化物としてオゾンを注入する方式について、IMO排出基準達成の可否及びその条件把握を目的として実施した。
(2)試験・観測項目
試験・観測項目は、次の通りである。
(1)流量(スリット部流速を算出)
(2)スリットの上流及び下流の管内圧力
(3)水質(水温、塩分、水素イオン濃度(pH)、溶存酸素量(DO)、濁度(NTU)、電気伝導率(EC)、密度、吸光度(波長254,480,630,645,663,665,750nm)、溶存オゾン、未処理原水の溶存有機炭素(DOC)、未処理原水の粒子状有機炭素(POC)
(4)貯留タンク内の気相オゾン
(5)50μm以上の水生生物濃度(殺滅率算出)
(6)10μm以上50μm未満の水生生物濃度(殺滅率算出)
(7)バクテリア(大腸菌群数、従属栄養細菌数)の濃度(殺滅率算出)
1)試験時期
2004年10月11日から28日
2)試験場所
佐賀県伊万里市の臨海試験施設
3)試験方法
(1)試験システム・操作
試験システムは、「2.2 IMO排出基準対応システムの企画・検討」で示したシステムである。システム内には、注入オゾン量を測定するために、表II.5.2-3に示した吸光光度計を導入した。
システムの操作は、まず港湾内の自然海水を一旦タンクに貯める(未処理原水)とともに、オゾン発生機を運転し発生オゾン量を安定させた。次いで、高圧ポンプとバルブ操作により、オゾンは注入するがスペシャルパイプを通さない、すなわちオゾンだけの処理水を比較対象のためのコントロール水として採水した。その次に、オゾンを注入しスペシャルパイプを通したシステム処理水(以下、処理水)を採水した。
各採水は、容積500 のプラスチック製タンクに行った。採水量は約450 であり、採水後は実際のバラストタンクを模擬するため、これらプラスチックタンクを暗所に保管した。
処理時の管内圧力は、スリットの上流と下流に設置した圧力計により測定した。流量計はオゾン注入前である散気管上流に設置して計測し、スリット総面積で割ってスリット部流速を算出した。また、注入オゾン量は、発生オゾン濃度計でチェックし、溶存オゾン濃度は、採水直後にサンプリングして速やかに吸光光度計で測定した。
なお、上記操作は、下記の各試験ケースで各々2回繰り返した。
(2)試験ケース
表II.5.2-1には試験ケース及びサンプリング時期を示した。
使用したスペシャルパイプは、「5.1スペシャルパイプ基本性能向上システムの試験」で性能が高く効率的と判断されたスリット幅0.3mmで、スリット部流速は40m/sを基本に設定した。
オゾン注入量は、注入時の濃度が1.0、2.5及び5.0mg/ になるように行った。なお、オゾン濃度5.0mg/ に関しては、スリット部流速30m/sの試験も行った。
表II.5.2-1 IMO排出基準対応システムの試験ケース及びサンプル
試験ケース |
注入時の
オゾン濃度 |
サンプル |
スリット幅 |
スリット部流速 |
0.3mm |
40m/s |
1.0mg/ |
未処理原水
コントロール水
処理直後
処理1日後
処理3日後 |
2.5mg/ |
30m/s |
5.0mg/ |
40m/s |
5.0mg/ |
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ここでいう“未処理原水”とは港湾自然海水をいい、“コントロール水”とはオゾンを注入しスペシャルパイプを通さない海水をいう。“処理”を冠してあるのは、オゾンを注入し、スペシャルパイプを通過させた処理水を表す。なお、各試験ケースは各々2回繰り返した。
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表II.5.2-2には、観測・分析項目及び概略方法を示した。
また、表II.5.2-3には、溶存オゾンを測定するための吸光度計の仕様を示した。
表II.5.2-2 |
IMO排出基準対応システムの試験における観測・分析項目及び方法 |
分類 |
観測・分析項目 |
観測・分析方法 |
物理条件 |
システム運転時の管内流量 |
超音波式流量計による計測 |
システム運転時の管内圧力 |
ひずみゲージ式圧力計による計測 |
水質 |
水温
塩分
水素イオン濃度(pH)
溶存酸素量(DO)
濁度(NTU)
電気伝導率(EC)
密度 |
水質メーター(HORIBA、U-21XD)による測定 |
溶存オゾン |
表II.5.2-3の吸光度計による測定 |
未処理原水の溶存有機炭素(DOC)
未処理原水の粒子状有機炭素(POC) |
燃焼酸化-赤外線方式 |
気相 |
貯留タンク内の気相オゾン |
検知管法 |
生物分析
(IMO基準対象項目等) |
50μm以上の水生生物数 |
顕微鏡下における計数(未固定) |
50μm未満10μm以上の水生生物数 |
顕微鏡下における計数(未固定) |
大腸菌群 |
平板培養法 |
従属栄養細菌 |
平板培養法 |
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表II.5.2-3 オゾン濃度を測定するための計器仕様
計測器名称 |
メーカー及び型式 |
測定原理及び仕様 |
注入オゾン濃度計 |
メーカー:荏原実業(株)
型式:EG-2001A |
測定原理:紫外線吸収式
測定範囲:0〜200g/Nm3 |
吸光度計
(溶存オゾン測定) |
メーカー:HACH
型式:DR/2000 |
測定原理:インディゴ法
測定範囲:0〜1.5mg/ |
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