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3 方法論
3.1 プロセス
 
3.1.1 ステップ
 
3.1.1.1 FSAは次のステップで構成される:
 
.1 ハザードの特定;
 
.2 リスク分析;
 
.3 リスク制御オプション;
 
.4 費用対効果の評価;及び
 
.5 意志決定のための勧告
 
3.1.1.2 Figure 1はFSAの手順のフローチャートである。このプロセスは、意思決定者が全ての関連する境界条件や制約と共に評価すべき問題を定義することから始まる。これらは、FSAを実行し、意思決定者が決議するために使われるFSAの結果を意思決定者に提供するグループに提示される。意思決定者が追加の作業を実施する必要がある場合には、その意思決定者は、問題の表現若しくは境界条件あるいは制約を変更し、当該グループにこれを再提示し、このプロセスは必要に応じて繰り返される。FSAの手順において第5ステップは、意志決定のための勧告に至る際に、他のステップと相互に作用し合う。FSAプロセスを実行するグループは、取り扱う事象の性格と影響の範囲に対応した適切な資格と経験をもつ専門家によって構成されなければならない。
 
3.1.2 問題のふるいわけ
 
3.1.2.1 この手順の適用深度及び範囲は、問題の性格と重要度に見合うものでなければならない。一方、詳細にわたる適用を始める前に、検討すべき問題の全体像をすべて包含するために、関連する船舶の種類やハザードの分類区分に対して大まかな適用を実施することが望ましい。データや専門家の判断等に不確実性が介在する場合には常に、これらの不確実性の度合いを評価しなければならない。
 
3.1.2.2 ハザードとリスクの性格判定は、定性的かつ定量的で、記述的かつ数学的であって、利用可能なデータと整合性をもつものでなければならず、また、リスクを削減するオプションを包括的に含む十分な広がりをもつものでなければならない。
 
3.1.2.3 階層的なふるいわけを利用することができる。これにより、初期分析を実施する際に比較的簡単なツールを用いることにより過度な分析をする必要がなく、その結果は意思決定の支援に使うこと(支援の程度が適切な場合に)も、さらに詳細な分析の見通しや枠組み作りに使う(適当でない場合)ことを可能にする。従って、この初期分析は、その性格上本質的に定量的なものであり、後の分析作業の中で必要に応じて詳細化と定量化の程度が進んでいくものと認識される。
 
3.1.2.4 実績データの調査は詳細検討の準備として役立てることができる。この目的のために、ロス・マトリックスが有用である。Figure 2にその例を示す。
 
3.2.1 FSAプロセスの各ステップで必要とされる適切なデータの利用可能性は非常に重要である。データが利用できない場合には、価値のある結果を得るために、専門家の判断、物理的モデル、シミュレーション及び分析的モデルを用いることができる。既にIMOで使用可能となっているデータ(例えば、海難事故と欠陥統計)及びFSAの実施を見越してこれらのデータに改善がなされている可能性(例えば、事故の主要原因、基本的要素及び潜在的要素を含む関連データの記録仕様の改善)について、考慮しなければならない。
 
3.2.2 事件の報告、ニアミス及び運航上の不全に関するデータは、よりバランスの良い、予防的かつ費用対効果の良い規則制定をする上で、非常に重要である。不確実性や制限を見極め、利用可能なデータに課されるべき信頼性の度合いを提示するために、収集可能なデータの価値を判定しなければならない。
3.3 人的要因 (Human Element) の取り込み
 
3.3.1 人的要因は、事故の誘発及び回避に寄与する最も重要な側面の1つである。Figure 3に示される統合システム全体にわたる人的要因の問題は、事故の発生、その根本原因或いはその影響に直接関連してくるので、FSAのフレームワークの中で体系的に取り扱われなければならない。人的要因を組込むための適切な手法が使用されなければならない。
 
3.3.2 人的要因は、人間信頼度分析(HRA: Human Reliability Analysis)を使って、FSAプロセスに組み入れることができる。FSAにおけるHRAの利用のガイダンスは付録1に与えられ、Figure 4に図示されている。参照を容易にするため、付録1における番号の振り方は、FSAプロセスにおける番号の振り方と一致させてある。
3.4 規制影響 (Regulatory Influence) の評価
 
事象の発生に関連する法規制体制の影響ネットワークを特定することは重要である。 影響関連図の作成が有益である(付録3を参照)。








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