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6. 材料試験及び性能試験
6.1 材料試験
(1)海水による各種材料の腐食試験
 作動水配管使用材質適性確認目的で、海水による腐食試験をテストピースにより、実施した。試験には、明石市二見港採取の海水を使用した。採取海水中の塩分濃度は、18000mg/Lで海上保安庁海洋情報部記載データ(19353mg/L)とも、ほぼ一致し、一般的な海水と判断できた。(詳細は、添付資料による)
 データテストピース(3種類の材質:SUS316L・SGP・SGP白)を海水に572時間浸食放置し、腐食度合いの概観確認及び重量変化を確認した。
 
 テストピース各材質2個ずつ合計6個を50mm中25mm海水に浸漬し、25mmは、大気暴露状態で、浸食テストを実施した。
 海水浸漬部と大気暴露部の境界部の腐食が最も激しいと予想された為、上記浸漬方法を採用した。
 
腐食状況概観目視検査結果は、
SUS316L 腐食無し
SGP 著しい腐食有り
SGP(白) 腐食無し
重量測定結果は、
SUS316L 重量増減無し。
SGP 0.16g〜0.18g減量有り。
SGP(白) 0.02g〜0.03g増量有り。
詳細は、添付資料「海水による各種材料の腐食試験結果」にもとづく。
 
結論
 SUS316L: 概観目視検査及び重量測定結果より、腐食無き為、海水に対する耐食性は十分あると判断できた。
 SGP: 概観目視検査より著しい腐食が認められ、又、腐食による重量減もO.16g〜0.18g認められることから、海水接液面にSGPの使用は不可と判断した。
 SGP(白):概観目視検査より腐食無し。また、重量減もなく、海水に対する耐食性は、十分あると考えられる。
 若干ではあるが、重量が増加したのは、表面の亜鉛鍍金部の亜鉛がZn+O2→Zn02となり、防食層を形成した為と考えられる。
 海水浸食試験により、SUS316L及びSGP(白)の2種類の部材は、防食性よりかんがみて、船舶用減容器用作動水配管での材質として使用可能と判断した。また、当社舶用海水配管での使用実績上問題無きことからも、減容器作動水配管使用材質は、SGP(白)で良いと判断した。
 以上より、コスト面を考慮しSUS316Lまで使用しなくても、SGP(白)で良いと判断した。
 
 また、実機での作動水配管をSGP(白)で製作し、試験運転後の作動水配管の腐食状況確認もおこなったが、特に問題無かった。
 詳細は、添付資料「海水による各種材料の腐食試験結果」による。
 
6.2 性能試験
(1)作動水温度と平衡真空度確認試験
 船舶用生ゴミ真空乾燥減容器は、作動水として海水を使用する。海水温度は一定でなく、時間・場所によっても変化している。海水温度変化により、船舶用生ゴミ真空乾燥減容器の真空性能に悪影響を及ぼすことの無いことを確認する目的で、作動水温度の変化による平衡真空度の変化確認試験を実施した。
 若干の機械損失を考慮すると、ほぼ、理論値通りの性能を確認することができ、目標値・平衡真空度 -96kPa(海水温度30℃)を確保できた。
 詳細は、添付資料「作動水温度VS平衡真空度確認試験結果」による。
 
(2)真空引き試験
 水道水で、エジェクタにより真空性能確保されることは、実証すみであったが、海水により、真空性能確保可能か不明であった。
 海水により真空性能確保できるか否かを確認する為に、ジャケット式真空乾燥室で、作動水を海水及び水道水の2種類で試験確認を実施した。
 結果は、作動水が海水で、真空引き性能が確保できた。又、性能上の水道水との差異も認められなかった。
結果は下記
最高平衡真空度 -99.4kPa
最高平衡真空度到達時間 350秒
 陸上用開発機械と比較すると、最高平衡真空度は、同一値で、到達時間は、船舶用の方が短時間であった為、陸上用よりも優秀な性能であった。
 詳細は、添付資料「真空引き試験結果」による。
 
(3)真空保持試験
 ジャケット式真空乾燥室で、真空保持確保可能確認目的で、ジャケット式真空乾燥室での最高平衡真空度の状態で真空保持性能の確認試験を実施した。
 十分な性能が確保されていることを確認した。
 
結果は下記
最高平衡真空度 -99.4kPa
30分経過後の真空度 -98.6kPa
試験機リーク量 -0.027kPa/分
基準リーク量 -2kPa/分以下
 目標リーク量(-2kPa/分)と比較して、試験機リーク量(-0.027kPa/分)は、十分な気密保持性能が確保されている。
 詳細は、添付資料「真空保持試験結果」による。
 
(4)水蒸発(乾燥)試験
 実際の食品廃棄物による乾燥試験は、食品廃棄物の種類が千差万別で、基礎データとして採用しにくい為、水道水の蒸発(乾燥)による乾燥試験を実施した。試験方法としては、ジャケット式真空乾燥室内に水道水を充満することにより、水道水の蒸発(乾燥)試験を実施した。
 機関冷却水の温度は、通常80℃であるが、船舶用生ゴミ真空乾燥減容器までの配管道中での温度降下を見込んで、50℃・55℃・60℃の3種類の温水温度で試験を実施した。
 また、3種類の温度による試験を実施したことにより、全ての温度における値である、熱伝達速度を求めることができた。
結果は下記
熱伝達速度 76kcal/h・℃
蒸発(乾燥)能力
1.9kg/h at 50℃(温水温度)
2.3kg/h at 55℃(温水温度)
2.9kg/h at 60℃(温水温度)
 詳細は、添付資料「水蒸発(乾燥)試験結果」による。
 
(5)真空乾燥室伝熱速度確認試験
 前項の水蒸発試験は、基礎性能としては有用であるが、水の沸騰(蒸発・乾燥)時の性能の為、食品廃棄物乾燥時の状態とは、大幅に異なる。
 このため、基礎性能として有用で、且つ、沸騰効果による影響を無くす目的で乾燥室内に水道水を充満し、乾燥室内水道水の昇温傾向を確認することにより、真空乾燥室の伝熱速度を確認した。
結果は下記
 
熱伝達速度 40kcal/h・℃
(換算)乾燥能力 1.5kg/h at 60℃(温水温度)
 水の蒸発時の熱伝達速度(76kcal/h・℃)より水の昇温時の熱伝達速度(40kcal/h・℃)が低い値となったのは、沸騰による影響等がなくなったことによる。
 詳細は、添付資料「真空乾燥室伝熱速度確認試験結果」による。
 
(6)食品廃棄物乾燥試験結果
 先にも記載した通り、食品廃棄物の種類は千差万別で、その乾燥性能も一定の性能確保は困難ですが、目安としての性能確認目的で食品廃棄物の乾燥試験を実施した。
試験要領
食品廃棄物種類 社内給食残飯
処理量 15L
乾燥用温水温度 60℃
結果は下記
乾燥能力 0.4kg/h at 60℃(温水温度)
 水の沸騰時の乾燥能力(2.9kg/h)>水の昇温時の乾燥能力(1.5kg/h)>食品廃棄物の乾燥能力(0.4kg/h)となった。
 
 理由は、食品廃棄物の乾燥では、水の沸騰及び対流による伝熱効果は一切見込めない。また、食品廃物は状態が固体の為、真空乾燥室壁面への接触効率が悪いことによる。
 本システムの目標である0.3kg/hと比べると0.4kg/h>0.3kg/hとなり目標は満足された。
 また、乗組員20人の場合、食品廃棄物標準発生量は100g/1人・日として、1日の食品廃棄物発生量は2kg/日となる。
 
 食品廃棄物中の水分量は、通常66%であることから、1日の乾燥必要水分量は、1.32kg/日となり、0.4kg/hの乾燥能力の場合、3.3時間/日の運転で処理することができる。


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