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7. まとめ
7.1 成果
 今回は、陸用の乾燥減容器を基にして船舶用を開発するものであるが、当初の目論見通りに開発を完了することができた。
 下記写真に試作機の全体を示す。
 今後は、実用化をはかるとともに、顧客の意見も取り入れつつさらなる改良を行いたい。
 
実機・完成写真(立面)
 
実機・完成写真(上面)
 
 開発課題に対する成果を要約すると以下のとおりである。
(1)船舶用生ゴミ真空乾燥減容器ではエジェクタ作動水に海水を用いる。
 エジェクタ作動水に海水を用いた場合、作動水配管の腐食の問題が発生する。作動水配管材質は、耐塩害性能・機械的強度等を考慮するとSUS316Lが適切であるが、イニシャルコスト面を考慮すると、他の安価な材料を使用したい。
 今回の試験にて、SGP(白)での製作も可能であることが確認されコストダウンに貢献できた。
 
(2)既存の陸上用生ゴミ真空乾燥減容器では、水分蒸発のための熱源は乾燥室外側に電気ヒータを張り付けた構造としている。今回開発した船舶用では機関冷却水を熱源としているので、乾燥室をジャケット構造にする必要があった。
 ジャケット構造の真空乾燥室の検討・設計・製作・運転を実施し、十分な真空性能が確保されていることが確認された。船舶用生ゴミ真空乾燥減容器開発上、最重要課題のひとつであるジャケット構造の真空乾燥室が完成したことは、大きな成果といえる。
 
(3)船舶特有のピッチング・ローリングなどの動きが作動水の流れを阻害し、真空乾燥の過程で、どの様な影響がでるか未知数であったが、一番影響を受け易い作動水用水槽を無くすことにより、この問題を解決した。
 また、船体側設置配管抵抗が大きく、作動水用水槽が必要となった場合も、作動水槽は、船体の傾斜角度が本装置の性能に影響を及ぼさない形状とした。
 
 船舶特有の振動による機器の寿命低下は、振動により内部機器取り付けボルトが緩み、振動過多になることが一番の原因です。他の舶用機器でも実績のあるボルト緩み防止方法の、バネ座金組付け方式を採用し、実機検証の結果対応できることがわかった。
 
(4)船舶用で使用される場合、塩害の心配がある。電気部品の塩害対策としては、機内電気部品が直接潮風にさらされることの無い様、機内温度上昇抑制目的で設置した通風口の位置を検討することにより対応した。
 
(5)船舶上では、万一トラブルがおこると一時的には乗組員で対応して頂くことになる。この意味からも、既存陸上用に比べて、よりトラブル対応が容易であるシンプルな構造にする必要があった。
 今回の試験により、既存陸上用から、貯水槽及び貯水槽に付随する温度計・液面レベル計を削除して正常機能を確保することができ、トラブル要素を減少することができた。
 
7.2 既存陸上用と船舶用開発機との比較表
 陸上用減容器は既に確立されて、多くの実績がある技術である。今回開発した船舶用生ゴミ真空乾燥減容器と仕様比較することにより差異を明確にする為に比較表を下記に示す。
 
 食品廃棄物乾燥性能として、電気ヒータ式よりも、機関冷却水方式の方が、良いことが確認された。
 これは、熱源が温水の為、電気ヒータ式に比べて、伝熱面(全面)に均一に加熱されたことによると考えられる。
 
番号 項目 既存陸上用 今回船舶用 備考
1 処理方式 真空低温乾燥方式 真空低温乾燥方式 同一方式
2 型式 EF-50A EFS-15
3 寸法(W×D×H)(mm) 1002×772×1220 685×700×999 小形化
容積比で51%
4 投入口高さ(mm) 980 910
5 投入口寸法(mm) Φ380 Φ220
6 運転方法 マイコン制御による自動運転 マイコン制御による自動運転 同一方式
7 最大処理能力(L/回) 50 15 陸上用の30%
8 真空度(kPa) -96kPa以上 -96kPa以上 同一
9 排出方法 手動 手動 同一
10 脱水能力(kg/h) 3.0 2.9 *1
11 蒸発温度(℃) 30〜40 30〜40 同一
12 排出物ストッカ容積(L) 20 7 陸上用の35%
13 外板材質 SUS304 SUS304 同一
14 電源 AC220V×Φ3 AC220V×Φ3 同一
15 遠赤外線ヒータ(kw) 0.6 0.35
16 乾燥熱源種類 電気ヒータ(3kw) 機関冷却水(80℃)
17 冷却水量(L/h) 50 不要 海水循環の為
18 伝熱面積(m2) 0.251 0.113
19 乾燥熱源温度(℃) 150(設定) 60(温度低下見込む)
*1. 脱水能力は水単独のデータです。


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