はじめに
本報告書は、競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて、平成17年度に社団法人日本舶用工業会が実施した「船舶用生ゴミ真空乾燥減容器の開発研究」事業の成果をとりまとめたものである。
「MALPOL条約の付属書V」には船舶からの廃物による汚染の防止を定めており、生ゴミについても環境保全の高まりの中で、その船内処理が求められている。このため今回の事業は、真空乾燥方式によるゴミの減容を船舶搭載用として主機関の排熱を利用して行う生ゴミ真空乾燥減容器を開発し、環境保全に寄与するとことを目的として実施したものである。
今回、貴重な開発資金を助成いただいた日本財団にこの場を借りて感謝する。
平成18年3月
社団法人 日本舶用工業会
船舶用生ゴミ真空乾燥減容器の開発研究
「MALPOL条約の付属書V」には船舶からの廃物による汚染の防止を定めており、生ゴミについては一定条件の下で海洋投棄が可能ではあるが、環境保全の高まりの中で、船舶内に保管し陸へ持ち帰ることが通常行なわれている。
現在、船上での生ゴミ処理装置としては「バイオ式」のものがあるが、「バイオ式」は臭気により環境を悪化させ、菌のメンテナンスを随時行なわなければならないなどの問題が指摘されており普及が進んでいない。
このため今回の事業は、主機関の排熱を利用しメンテナンスやコストの改善をはかった船舶用の生ゴミ真空乾燥減容器を開発し、真空乾燥技術を利用した舶用機器の新規需要を開拓するとともに、環境保全に寄与することを目的とする。
1)真空乾燥方式で生ゴミを1/5の容積に減容する船舶用の装置を開発する。
2)船舶用とするため、冷却水及び作動水としては海水を使用し、熱源としては主機関の排熱を利用する方式で実用化する。
真空乾燥による生ゴミ処理は確立された技術であり、乾燥後の処理物は約1/5の容積に減容され、且つ腐敗することがない。陸上用では多数の実績があり、その性能は高く評価されている。
しかし、陸上用の生ゴミ真空乾燥減容器では、多量の冷却水(清水)を使用し、また熱源としては電気ヒータを採用しているが、このままでは船舶用には適さない。
そこで船舶用として、作動水(冷却水)に海水を使用すること、また水分蒸発のための加熱源を機関の冷却水から供給することで、イニシャル及びランニングコストの低減をはかりつつ、設置が容易な装置を開発するものとする。
(1)作動水に海水を用いた場合、配管その他の腐食の問題がある。これは、使用材料の見直しである程度解決するが、高級な材料を使用するとイニシャルコストを上げることになる。今回の開発は腐食対策とイニシャルコストの両立が課題である。
(2)陸上用では水分蒸発の為の熱源は乾燥室外側に電気ヒータを張り付けた構造としている。今回開発する船舶用では機関冷却水を熱源とするので乾燥室をジャケット構造とする必要がある。ジャケット構造の乾燥室で真空保持できる各部のシール方法を研究するのが課題である。
(3)船舶用で使用した場合、ピッチング、ローリングなどの動きが作動水の流れを阻害し、真空乾燥の過程でどのように影響するかが未知数である。
また船舶特有の振動により機器の寿命が早まらないように、振動に対して対策しておく。
(4)船舶用で使用される場合、塩害の心配がある。生ゴミ真空乾燥には制御機器として電気部品が多数使用されているので、この点について対策しておく。
(5)船舶用として使用される場合、荷役中や運行スケジュールの都合で一定の停止期間があると予想され、この間の保守整備は機器の性能を維持する上で重要な意味をもつ。
また、船舶上で機器にトラブルが起きても一時的には乗組員で対応して頂くことになり、つまり船舶用としては構造をシンプルにしておく。
5.1 実施経過
実施項目 |
H17
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
H17
12月 |
H18
1月 |
2月 |
H18
3月 |
計画・検討 |
**** |
**** |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
設計 |
|
**** |
**** |
**** |
**** |
**** |
|
|
|
|
|
|
製作手配 |
|
|
|
**** |
**** |
**** |
**** |
|
|
|
|
|
実機製作 |
|
|
|
|
|
**** |
**** |
**** |
**** |
|
|
|
実機運転 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
**** |
** |
|
性能評価 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
** |
|
まとめ |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
**** |
|
|
5.2 実施場所
阪神内燃機工業株式会社 明石工場
5.3 実施内容
船舶用生ゴミ真空乾燥減容器の処理容量は、内航船での使用を考慮した場合、既存陸上用として販売されている生ゴミ真空乾燥減容器の処理容量(50L/1回)と比較すると30%の処理容量で良い。既存の技術を応用し、15L/1回の処理容量の生ゴミ真空乾燥減容器を計画した。
計画した生ゴミ真空乾燥減容器では船舶用としての対応を考慮し、実機を設計・製作した。又、製作された実機による実証実験をし、性能評価をするとともに本システムが成立することを確認した。
以下に検討及び実施内容を記載する。
(1)海水による作動水配管材料の腐食性等の検討及び試験確認の実施
海水に対する腐食性対策とイニシャルコストの両立を図るため、作動水配管使用材料の腐食性・コスト面等について検討及び試験確認を実施した。
対象の作動水配管とは下図の配管を言う。
材質は6種類について検討した。結果は下表の通り。
以下により、SUS316Lで製作すれば、問題無いが、イニシャルコスト低減目的で、SGP(白)にて海水による腐食試験を実施し、海水にて使用可能か否かを、確認した。結果は、SGP(白)で使用「可」と判断した。また主機での海水配管も、SGP(白)の使用実績があり、特に問題無きことが確認されている。試験結果詳細は、後述する。
|
HIVP |
SGP(白) |
SGP溶融
Znメッキ |
SUS304 |
SUS316L |
塩ビライニング鋼管 |
耐食性 |
優 |
良
一部不可 |
良 |
不可 |
優 |
優
一部不可 |
材料費 |
優 |
優 |
優 |
良 |
可 |
良 |
製作費 |
優 |
優 |
優 |
優 |
優 |
可 |
機械強度 |
可 |
優 |
優 |
優 |
優 |
良 |
耐紫外線 |
可 |
優 |
優 |
優 |
優 |
優 |
耐振性 |
可 |
優 |
優 |
優 |
優 |
可 |
|
(2)ジャケット構造の真空乾燥室の検討・実機製作及び性能確認試験の実施
機関の冷却水を熱源とするため、真空保持できるジャケット構造の真空乾燥室とする必要がある。
検討の結果、機関冷却水利用で、必要熱量を十分確保可能な真空乾燥室を計画することができた。
このことから、軸シール部近辺をジャケット構造としなくてすむ構造で、必要伝熱面積の確保も可能となった。
また、乾燥熱量的寄与の期待はできないが、真空乾燥室内の結露防止目的で上部に遠赤外線ヒータを設置した。
検討に基づき設計のうえ実機製作し、真空性能が所定の性能を満たしていることを確認した。試験結果は、後述する。
(3)振動対策の検討・実機製作及び振動の作動水流れに及ぼす影響確認
船舶特有の振動により機器の耐久性能が低下しないように、振動対策を検討し、実機製作の上性能確認を実施した。
振動対策として、作動水ポンプ・攪拌軸駆動用減速モータ取付部には、緩み防止目的でバネ座金組込の考慮をし実機製作の上、運転確認した。運転完了後、作動水ポンプ・攪拌軸駆動用減速モータ組付けボルトに緩み無きことが確認できた。バネ座金方式は、弊社の他の船舶用製品と同等仕様である。
また、ピッチング・ローリングなどの船体の動きが作動水に及ぼす影響は、作動水用の水槽を設置した場合に検討を必要とする。作動水槽での水位変更確認運転により、ピッチング・ローリングの影響をうけない必要水位を確認できた。
(4)電気部品の塩害対策の検討
船舶用生ゴミ真空乾燥減容器にて使用している電気部品について、塩害対策を検討した。検討の結果、外板設置の通風口位置(機内温度上昇防止目的)を操作盤設置場所から離すことで、塩害の減少をはかった。
また、真空乾燥減容器のシンプル化(コンパクト化)目的で、電気品(操作盤)の外箱削除を検討したが、塩害対策を重視し陸上用と同様に外箱付操作盤とし製作した。
(5)構造シンプル化の検討
各機器のトラブル減少目的及び作動水に海水を使用することを考慮し、構造をシンプルにする検討をし、実機製作の上不都合無きことを確認した。
構造のシンプル化検討の結果により、貯水槽無しでも問題無きことが確認されたため、貯水槽及び貯水槽用温度計・液面レベル計を既存陸上用より削除できることが可能となった。実機製作の上運転確認の結果、問題無きことが確認された。
|