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4・10 電子プロッティング装置、自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置の点検整備要領
 電子プロッティング装置、自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置(以下、「自動衝突予防援助装置等」という。)の整備方法について記述する。
(1)適用
 本標準は、平成14年6月25日に改正された現行の船舶設備規程に準拠しているが、平成14年7月1日より前に建造された船舶については、電子プロッティング装置および自動物標追跡装置に係る内容を適用しない。また、平成9年1月1日現在、すでに改正前の船舶設備規程に準拠した自動衝突予防援助装置を装備している船舶の整備の場合には、【 】内に読み替え、太字の部分は適用しないものとする。
 自動衝突予防援助装置には、一体型と別体型のものとがあるが、別体型の場合は以下の(a)から(d)項までによって、接続されている航海用レーダーと同様の表示が行えることを確認し、一体型の場合には、あらかじめ4・9 効力試験までによって航海用レーダーの全機能について確認しておくこと。また、これらの船舶設備規程による技術的条件については1・2・2項から1・2・4項に述べてあるので参照されたい。
(2)整備の方法
 自動衝突予防援助装置の整備は、これを備え付けている船舶の定期検査又は中間検査の時期に行い、次の事項について確認し、4・10・3項の整備記録を作成する。
(3)外観点検
(a)構成品の点検
 表示器の構成品及び予備品、操作説明書並びに保守のための資料が完全な状態で揃っているかを点検する。
(b)表示等の点検
 自動衝突予防援助装置の
(1)名称、型式、型式承認番号、製造年月、製造番号、製造者名、検定印又は証印
(2)操舵室に装備する機器にあっては磁気コンパスに対する最小安全距離の表示が適切なものであり、かつ、見やすい箇所になされ、かすれて見えにくくなっていないかを点検する。
 なお、磁気コンパスに対する最小安全距離が保たれていない場合、自動衝突予防援助装置の電源スイッチをオン又はオフすることにより、当該磁気コンパスに与える影響が軽微(航海用レーダー及び自動操舵装置の電源スイッチのオン又はオフのいずれの状況においても、これらのすべての装置の合計誤差が0.5度以内であること。)であることを確認する。
(c)ジャイロコンパス及び船速距離計との接続状態に異常がないことを確認すること。
イ. ジャイロコンパスからの方位信号を適当な方法によって毎分2回転以上の速さで回転させ、左右の回転とも遅れがなく円滑に追従することを確認する。
ロ. ジャイロコンパスの方位信号を、0度から360度まで15度おきに変化させ、レピーターコンパスの指示値と、そのときの自動衝突予防援助装置等上の表示とを比較する。1度以内の分解能で表示できることを確認する。
ハ. 船速距離計からの信号を0ノットから25ノットまで2.5ノットおきに変化させ、そのときの自動衝突予防援助装置等の速力表示が0.1ノットの分解能で表示できることを確認する。
ニ. 海上運転中に、それぞれの表示が適正な精度で、異常がないことを確認する。
(d)設置場所が適切で操作に支障がないことを確認すること。
 
4・10・1 自動衝突予防援助装置等の効力試験
(1)電源の切換試験
 主電源及び代替電源から受電可能であり、電源の切替えが素早くできること及び電源電圧が規定値以内であることを確認すること。
(2)レーダー機能の効力試験
(a)各レンジについて、固定及び可変電子距離環、船首輝線、電子カーソル、レーダーエコー並びに相対及び真方位が、接続された航海用レーダーと同様に表示され、かつ、相対及び真方位精度、距離精度が確保されていることを確認すること。
イ. 接続しているレーダー(親レーダー)と同等の映像が表示されることを確認する。
ロ. レンジスケールの切替えが円滑に行えること及び切替え後直ちに映像が安定することを確認する。
ハ. 固定マーカが操作説明書通りに表示されることを確認する。
ニ. 可変マーカを作動させ、これを固定マーカと重ね合せたとき、その指示値が固定マーカで示されている距離と一致していることを確認する。
ホ. 電子カーソルを備え付けている場合には、これが操作説明書通りに表示されることを確認する。
ヘ. 3海里、6海里及び12海里の距離レンジを有していることを確認する。
ト. ノースアップ、ヘッドアップ、コースアップのそれぞれの機能に異常がないことを確認する。
(1)数回これらの切替えを行い、親レーダーと同様に円滑に切替えの行えることを確認する。
(2)各モードに切り替えたとき、映像が直ちに安定することを確認する。
(3)それぞれのモードの映像が親レーダーと同じ方位で、同じ精度で指示されていることを確認する。
(b)オフセンター機能及びレーダー干渉除去機能に異常がないこと。
イ. スイープの中心が移動し、オフセンター機能が正常なことを確認する。
ロ. レーダー干渉除去装置を備えているものでは、レーダー干渉像が除去できることを確認する。
ハ. 真運動装置を備え付けているものにあっては、前節4・9・4の(18)項と同様の方法によりその機能及び精度を確認すること。
注:船首方位を45度、135度、225度、315度に置き、そのそれぞれについて船速設定器又は航法装置の船速を低速と高速の適当な値に手動設定し、それぞれについて自船位置がそれに従って正しく移動することを確認する。
(c)無線機器、レーダーその他重要設備に障害を与えていないことを確認すること。
(3)捕捉及び追尾機能の効力試験
(a)電子プロッティング装置にあっては、手動で10以上の適当な物標をプロットすることができること。30秒以上経過後の2回目のプロットの後、当該物標の移動の予測をベクトル及び数値叉は文字データで表示することを確認すること。
(b)自動衝突予防援助装置にあっては20以上、自動物標追跡装置においては10以上の物標を捕捉でき、かつ、すべてが自動追尾できること(手動捕捉による場合は10以上の物標を捕捉でき、かつ、すべてが自動追尾できること。)を確認すること。
イ. 他船やブイなどの物標を、ジョイスティック(トラックボール)等を用いて手動で捕捉して追尾させる。捕捉された物標には顕著なシンボルマークが表示され、1分以内にベクトル表示に変わり、追尾が継続されていることを確認する。可能な限り多くの物標によって確認する。
ロ. 自動捕捉の場合には、自動捕捉の範囲を適宜設定し、かつ、変化させ、自動的に各目標が捕捉され、(a)と同様の表示と追尾がなされることを確認する。
(c)自動的に物標を捕捉するものにあっては、手動操作によっても捕捉できることを確認すること。
(d)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、連続した10回の走査において、5回以上表示される物標を継続して追尾できることを確認すること。
 手動操作により捕捉するものにあっては追尾準備操作完了後、自動的に物標の捕捉を行うものにあっては最初に捕捉範囲に進入又は出現したときから、5走査以内に追尾物標のそれぞれについて明確な識別マーク(追尾中の物標を他の物標と識別できるもの、又は追尾中の物標を選択した場合、他の物標と識別表示)が表示されることを確認すること。
(e)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、捕捉した物標に対する追尾機能が解除できること。電子プロッティング装置にあっては、物標のプロット解除できることを確認すること。
(f)自動的に物標の捕捉を行うものにあっては、捕捉範囲が限定でき、その範囲が表示できることを確認すること。
(g)自動捕捉機能を持つものについては、捕捉制限区域が設定でき、かつ、当該区域においては、物標が捕捉されないことを確認すること。
イ. 捕捉制限区域が、設定できることを確認する。
ロ. 捕捉制限区域にある物標が、自動捕捉の場合には捕捉されないことを確認する。
ハ. この制限区域の外側ですでに追尾されている物標は、これが区域内に入っても追尾が続行されることを確認する。
(4)表示器の機能試験
(a)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、距離レンジ、表示方式の切替え後、1回目【4回目】の走査で、航海用レーダーで得られるレーダーエコー及び衝突予防情報が表示されることを確認すること。
(b)真ベクトル表示方式及び相対ベクトル表示方式で表示することができ、かつ、使用中の表示方式が明示されていることを確認する。
(c)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、真針路及び真速力、又は真ベクトルを表示する場合には、対水速力又は対地速力のいずれであるかが表示されていることを確認すること。
イ. 真ベクトルを表示する場合は、対水、対地速力のいずれかが表示されていることを確認する。
ロ. 速力の種類が明示されていることを確認する。
(d)追尾叉はプロットされた物標の運動(又は移動)の予測がベクトル又は図形で表示され、その大きさは、時間調整機能付きのものについては、その大きさが時間に比例することを確認すること。
イ. 追尾物標を捕捉完了後、1分以内にそれぞれの物標の移動の概略の予測がベクトル又は図形で表示され、かつ、すべての追尾の状況が同時に数字及び文字で表示されること、並びにこれらの表示が連続的に更新されることを確認する。
(1)本船が定速で直進中に、ブイ等の小物標を自動及び手動で捕捉して追尾させベクトル等が表示されることを確認する。
(2)これらのベクトルが本船の移動に従って、自動的、かつ、連続的に更新されていくことを確認する。
ロ. 追尾物標を捕捉完了後、3分以内にそれぞれの物標の移動の予測がベクトル又は図形で表示されることを確認する。
(1)自船の針路と速力を一定に保持し、この状態において固定物標を捕捉して追尾させる。
(2)自船とこの目標のARPA情報を記録する。
(3)これらのデータから計算によってCPAを算出する。
(4)計算値と先の記録とを比較し、操作説明書どおりの精度であることを確認する。
ハ. 自船のベクトルの長さを計測し、自船の速力に対してこれが適正な長さであることを確認する。
ニ. 真ベクトルと相対ベクトルの切替えを行ったとき、使用中のベクトルの種類が表示され、同時に物標のベクトルの方向が変化することを確認する。
注:追尾物標の移動の予測が図形で表示されるものについては、真ベクトルと相対ベクトルが表示されることを確認する。
ホ. ベクトル長さの時間調整を、最大、最小及びその中間に設置し、それぞれについてそのときのベクトルの長さを計測し、これが時間のスケールに比例して変化することを確認する。
ヘ. ベクトルの長さが一定時間のものではベクトルの長さを計測し、その長さの時間単位が操作説明書どおりであることを確認する。
ト. 静止した物標を対地安定に使うものにあってはその区別があること及び相対ベクトル表示ができることを確認する。
(e)追尾中叉はプロットされた物標を他の物標と識別表示されること。また、追尾中叉はプロットされた物標を選択した場合、他の物標と識別できることを確認すること。
(f)自動衝突予防援助装置にあっては、3海里レンジでは2分、6海里レンジでは4分、12海里レンジでは8分以上【いずれのレンジにおいても8分以上】追尾中の物標に、4以上の等時間ごとの過去の位置が表示されることを確認すること。
イ. 航跡表示のスイッチを操作して、4点以上の等時間間隔の航跡が表示されることを確認する。
ロ. 航跡を表示させた状態でレンジスケールを変化させ、そのときの4点以上の間隔が操作説明書どおりに変化することを確認する。
ハ. 航跡を表示させた状態でベクトルのモードを真と相対に切り替え、このとき4点以上の航跡の方向がそれに従って変化することを確認する。
(g)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、追尾中の物標を選択した場合、ARPA情報が同時に数字又は文字で表示されること。なお、複数の物標を選択した場合は、それぞれについて、距離と真方位、CPAとTCPA、あるいは真針路と真速力の組み合わせのいずれかが表示されることを確認すること。
 複数の移動する目標を選定し、
(1)物標までの距離と真方位
(2)CPAとTCPA
(3)物標の真針路と真速力
の組合せを含む2以上の情報が、数字又は文字で、明りょうに同時に表示されることを確認する。
(h)追尾中叉はプロット中の物標の移動予測に用いる時間が調整でき、かつ、その時間が数字で表示されることを確認すること。【時間調整ができるものについては、その時間が数字で表示されること】
 ベクトル長さの時間調整を最大、最小及びその中間に設置し、それぞれについて時間の表示が変わることを確認する。
(i)衝突予防情報とレーダーエコーの輝度はそれぞれ独立に調整でき、かつ、衝突予防情報の表示は、3秒以内に消去【一時消去】することができること。
(j)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、追尾中の物標が消失した場合に、その消失物標の消失位置が明示されることを確認すること。
(k)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、自船叉は追尾中の物標が操船を完了してからベクトル及びARPA情報の表示の更新静定が3分以内であることを確認すること。
(l)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、真方位及び進路方位(ノースアップ及びコースアップ)による表示ができ、かつ、それぞれの機能に異常がないことを確認すること。
(m)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、ガードリングが設定でき、かつ、その設定範囲が表示されることを確認すること。
イ. 固定ガードリングが設定できるものでは、スイッチ等を操作してガードリングが操作説明書どおりの範囲に設定され、かつ、固定ガードリングを使用中であることの表示がなされることを確認する。
ロ. 可変のものでは、適当な位置にガードリングを設定し、これが操作説明書の範囲で設定でき、かつ、使用中の表示がなされることを確認する。
(n)昼間において直射日光が当たらない状態で衝突予防情報の表示が明確に観察できることを確認すること。
注:直接日光が当たる場合に適当に遮へいを設けてもよいが、普通の明るさの昼間、2人以上の観測者によって明りょうに観察できることを確認する。
(o)操作中に不必要な情報の表示がある場合には、その表示が消去できることを確認すること。







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