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(5)警報機能の効力試験
 自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、警報装置には、作動試験のための回路があること、及び、次の場合に可視可聴の警報が速やかに発せられることを確認すること。
(a)追尾中の物標が消失した場合、物標が消失した時点から10走査以内に可視可聴の物標消失警報を発し、かつ、その物標の最後の追尾位置が表示面上にマークにより表示されること及びこの警報が、一時的に停止できることを確認すること。
イ. 実際に島の陰等に入って消失するような物標がある場合には、それによるが、適当な消失物標が得られないときには、レーダーの映像のゲインを下げるなどして人工的に消失物標を作って確認する。
ロ. 物標が消失してから警報が発生するまでのスイープの回転数を計測する。
ハ. 消失物標の最後の追尾位置のマークが表示面の正しい位置に現れていることを確認する。
ニ. 可視可聴の警報が一時的に停止できることを確認する。
(b)物標が設定されたガードリングに到達した場合、1分以内に可視可聴の警報を発し、かつ、当該物標が固有のマークで表示されることを確認すること。
イ. 接近する物標に対しガードリングを約10海里付近に設定し、物標がガードリングに到達したときから警報を発するまでの時間及びガードリングに到達した物標の位置のマークを確認する。
ロ. 次にガードリングを2.5海里付近に設定し、同様の確認を行う。
ハ. 複数のガードリングを持っている場合には、そのすべてのガードリングについて同様の確認を行う。
ニ. ガードリングに到達した物標による可聴警報を一時停止したとき、次の接近物標による警報を発することができることを確認する。
(c)CPAを1海里又はこれに近い値及びTCPAを15分又はこれに近い値に設定し、それぞれについて次に掲げる事項を確認すること。
イ. 接近して警報を発した物標のTCPA値が、設定値の±10%以内であること。
ロ. 可聴警報を一時停止しても、次の物標によるTCPA警報を発することが可能であり、かつ、可視警報が保持されたままであること。
(d)CPAを1海里又はこれに近い値及びTCPAを15分以上のできる限り大きな値に設定し、接近して警報を発した物標のCPA値が、設定値の±10%以内であることを確認すること。
注:(c)及び(d)項の確認は、本船が航海中か、若しくは海岸から1海里以上沖に停泊中でないと困難である。接岸中や海岸、防波堤、桟橋等から1海里以内に停泊しているかどうかは、CPAを1海里に設定すると直ちに警報を発することで確認できる。
(e)連動する航海用レーダー、ジャイロコンパス又は船速距離計からの信号が停止したときに可視可聴の警報を発することを確認すること。
イ. 表示器の入力ケーブルを外すなどして確認する。
ロ. 確認後は、各ケーブルを間違いなく確実に元どおりに接続する。
(f)前項(a)、(b)、(c)及び(d)の警報を一時的に停止したときでも他の警報の発生が妨げられないことを確認すること。
(6)その他機能の効力試験
(a)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、連動する航海用レーダー、ジャイロコンパス又は船速距離計からの信号が伝達されていることが表示されていることを確認すること。
(b)自動衝突予防援助装置にあっては、模擬操船の機能が適正であり、かつ、模擬操船中であることが明確に表示されること及び模擬操船中であっても物標の捕捉及び追尾が中断されないこと並びに随時表示が中止できることを確認すること。
 確認に当たっては、操作説明書の指示に従うこと。
(c)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、自動機能試験装置の試験プログラム等による機能試験及びシステムの故障に対する警報等の試験を行い、異常がないことを確認すること。
イ. まず、操作説明書等によって事前に十分そのシナリオ等を理解する。
ロ. そのすべての試験項目について試験を行い、異常がないことを確認する。
(e)自動物標追跡装置及び自動衝突予防援助装置にあっては、自動機能試験装置で点検中であることが表示されることを確認する。
(f)その他の付加装置について、機能に異常がないことを確認すること。
イ. 機種によって各種のオプションが用意されているが、事前にこれらに関する操作説明書によって、内容をよく理解してから試験を行うようにする。
ロ. 付加装置の動作と本体の機能との関連を試験すると同時に、この付加装置によって本体の機能が損なわれることがないことも、併せて確認する。
 
4・10・2 自動衝突予防援助装置の表示の例
 図4・7は自動衝突予防援助装置(ARPA)表示の実例である。
 
4・10・3 整備記録の作成等
 装備者又は整備者は、自動衝突予防援助装置等(ARPA等)点検整備記録表/レーダー設備試験成績表(2)(様式:ARPA等)(「GMDSS設備等整備記録総括表(様式GM-1)」を含む。)を各3部作成し、管海官庁あるいは日本海事協会の支部及び船舶所有者に各1部提出し、残り1部は事業場の記録として保管する。
 なお、平成8年11月19日運輸省令第59号による設備規程の改正前の規定による自動衝突予防援助装置にあっては、昭和60年6月19日付け海検第56号による「自動衝突予防援助装置(ARPA)点検整備記録表/レーダー設備試験成績表(2)(様式:R-2)」の旧様式を使用してもよい。
 
図4・7
衝突予防援助装置関連表示実例
(拡大画面:46KB)
 
練習問題
(問1)故障修理の場合に、特に注意すべき事項について述べよ。
(問2)レーダーの映像障害のうち、下記のものについて簡単に説明せよ。
(1)二次反射によるもの
(2)陰によるもの
(3)相互干渉によるもの
(問3)自動衝突予防援助装置の動作確認で、ARPA情報については距離レンジ又は表示方法を変更した後、何走査以内に完全に表示されなければならないか。また、そのときベクトルはどうあるべきか。







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