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1・2・3 自動物標追跡装置に関する船舶設備規程
(自動物標追跡装置)
第146条の15 航海用レーダー搭載船であって総トン数500トン以上3,000トン未満の船舶には、機能等について告示*で定める要件に適合する1の自動物標追跡装置を備えなければならない。
2 航海用レーダー搭載船であって総トン数3,000トン以上の船舶には、機能等について告示で定める要件に適合する2の(総トン数10,000トン以上の船舶にあっては1の)自動物標追跡装置を備えなければならない。
〔解説〕
○ 本条の1及び2項をまとめると、第1台目のATAは500GT以上の全船に必要で、第2台目のATAは3,000GT以上10,000GTまでの船舶に必要であることを示し、10,000GT以上の船舶については、本条では触れてないが、ARPAが搭載されなければならないことを示す。
○ 本条中に「1の自動物標追跡装置」「2の同装置」と記載されているのは台数を表す。
 なお、以上についてはAIS・VDR・GPS編第2章の図2・17(航海用レーダーとEPA・ATA・ARPAの関係)参照。
*: 告示
(自動物標追跡装置)
第10条 規程第146条の15第1項及び第2項の告示で定める要件は、次のとおりとする。
(1)連動する航海用レーダー、ジャイロコンパス又は船速距離計の機能に障害を与えないものであること。
(2)10以上の物標を捕捉することができ、かつ、捕捉した物標を自動的に追尾することができるものであること。
(3)連続する10回の走査において5回以上表示される物標を継続して追尾するものであること。
(4)追尾中の物標を、他の物標と識別することができる方法により表示することができるものであること。
(5)物標を捕捉した後、1分以内に当該物標の移動の概略の予測を、3分以内に当該物標の移動の予測を、ベクトル又は図形により表示することができるものであること。
(6)追尾中の物標を選択した場合には、選択した物標を他の物標と識別することができる方法により表示することができ、かつ、選択した物標に係る次に掲げるすべての事項を数字又は文字により見やすい位置に表示することができるものであること。ただし、複数の物標を選択した場合には、それぞれの物標に係るイ及びロ、ハ及びニ又はホ及びヘに掲げる事項を含む少なくとも2以上の事項を同時に表示することができるものであること。
イ 距離
ロ 真方位
ハ 最接近地点における距離
ニ 最接近地点に至る時間
ホ 真針路
ヘ 真速力
(7)ベクトルにより物標の移動の予測を表示するものにあっては、真ベクトル表示方式及び相対ベクトル表示方式により表示することができ、かつ、使用中の表示方式を表示することができるものであること。
(8)図形により物標の移動の予測を表示するものにあっては、真ベクトル表示方式又は相対ベクトル表示方式によっても表示することができるものであること。
(9)追尾中の物標の真針路及び真速力を表示する場合又は真ベクトル表示方式により物標の移動の予測を表示する場合にあっては、対水速力及び対地速力により表示することができ、かつ、使用中の速力の種類を表示することができるものであること。
(10)対地速力の基準として静止した物標を使用する場合にあっては、当該使用した物標を他の物標と識別することができる方法により表示することができ、かつ、必要に応じて当該使用した物標を相対ベクトル表示方式により表示することができるものであること。
(11)物標の移動の予測に用いる時間を調節することができ、かつ、当該時間を数字で表示することができるものであること。
(12)物標の追尾及び移動の予測の確度*3は、管海官庁が適当と認めるものであること。
(13)捕捉した物標の追尾を解除することができるものであること。
(14)追尾中の物標が消失した場合に、速やかに可視可聴の警報を発し、かつ、当該物標の消失した位置を他の物標と識別することができる方法により表示することができるものであること。
(15)表示面の大きさは、数字、文字及び記号を明りょうに読み取ることができるものであること。
(16)真方位及び進路方位(自船の進路を基準とした方位をいう。)により表示することができるものであること。
(17)3海里、6海里及び12海里の距離レンジを有するものであること。
(18)使用中の距離レンジの値を見やすい位置に表示することができるものであること。
(19)航海用レーダーにより得られた情報を、損なうことなく表示することができるものであること。
(20)自動物標追跡装置による情報及び前号の情報の表示の輝度は、それぞれ独立に調整することができるものであること。
(21)自動物標追跡装置による情報の表示の輝度は、管海官庁が適当と認めるものであること。
(22)自動物標追跡装置による情報の表示は、必要に応じて3秒以内に消去することができるものであること。
(23)距離レンジ、表示方式等の切替え後1回目の走査において、自動物標追跡装置による情報及び第(19)号の情報を表示することができるものであること。
(24)自船に対する物標の接近を警戒するためにあらかじめ接近警戒圏を設定することができるものであって、当該接近警戒圏に物標が進入した場合に、速やかに可視可聴の警報を発し、かつ、当該物標を他の物標と識別することができる方法により表示することができるものであること。
(25)物標の最接近地点における距離及び最接近地点に至る時間があらかじめ設定した値以内となることが予測された場合に、速やかに可視可聴の警報を発し、かつ、当該物標を他の物標と識別することができる方法により表示することができるものであること。
(26)表示された物標の距離及び方位を速やかに測定することができるものであること。
(27)自動的に機能を点検することができ、かつ、点検中であることを表示することができるものであること。
(28)連動する航海用レーダー、ジャイロコンパス又は船速距離計からの情報の伝達が行われていることを表示することができ、かつ、当該情報の伝達が停止した場合に、可視可聴の警報を発するものであること。
(29)第(14)号、第(24)号、第(25)号及び前号に掲げる警報を発するための装置は、次に掲げる要件(前号に掲げる警報を発するためのものにあっては、イに掲げる要件)に適合するものであること。
イ 作動の試験のための回路を備えたものであること。
ロ 可聴警報を一時的に停止することができ、かつ、停止中において他の警報を発することを妨げないものであること。
(30)表示面における表示は、管海官庁の指定する記号によるものであること。
(31)*1第6条第(6)号及び第(8)号から第(14)号まで並びに*2第8条第1項第(2)号から第(4)号までに掲げる要件
*1:第6条
(6)取扱い及び保守に関する説明書を備え付けたものであること。
(8)磁気コンパスに対する最小安全距離を表示したものであること。
(9)電磁的干渉により他の設備の機能に障害を与え、又は他の設備からの電磁的干渉によりその機能に障害が生じることを防止するための措置が講じられているものであること。
(10)機械的雑音は、船舶の安全性に係る可聴音の聴取を妨げない程度に小さいものであること。
(11)通常予想される電源の電圧又は周波数の変動によりその機能に障害を生じないものであること。
(12)渦電流、渦電圧及び電源極性の逆転から装置を保護するための措置が講じられているものであること。
(13)船舶の航行中における振動又は湿度若しくは温度の変化によりその性能に支障を生じないものであること。
(14)2以上の電源から給電されるものにあっては、電源の切替えを速やかに行うための措置が講じられているものであること。
*2:第8条第1項
(2)表示器は、他の設備によりその使用が妨げられるおそれのない船橋の適当な場所に設置されていること。
(3)電源の開閉器は、表示面に近接した位置に設けられていること。
(4)操作用のつまみ類は、使用しやすいものであること。
*3:予測の確度は、管海官庁の適当と認めるものであることとされるが、これは「形式承認試験基準」に示されるシナリオに基づいた確度であることが要求されるものである。ここに同基準のシナリオを次に示す。下表の試験シナリオに従って、方位、速力などを入力し、物標を捕捉、追尾させる。各シナリオにおいて、捕捉1分後及び3分後に物標のCPA、TCPA等を測定し、各測定結果が次のそれぞれの表に示してある値を超えないこと。ただし、これらは同試験基準の要約なので、詳しくは本協会発行の「船舶設備関係法令及び規則(レーダー等更新指導書)」に掲載してある同基準(全文)を参照されたい。
 
〔試験シナリオ〕
シナリオ1 シナリオ2 シナリオ3 シナリオ4
自船の針路 000度 000度 000度 000度
自船の速力 10ノット 10ノット 5ノット 25ノット
物標の距離 8海里 1海里 8海里 8海里
物標の方位 000度 000度 045度 045度
物標の相対針路 180度 090度 225度 225度
物標の相対速力 20ノット 10ノット 20ノット 20ノット
 
〔捕捉1分後の値〕
 
〔捕捉3分後の値〕
 
(関連規則)
告示 検査心得3-1-6
(自動物標追跡装置)
10.0
(a)第(2)号の「捕捉」については、自船に対する相対速度が100ノットを超える船舶を捕捉できなくてもよい。
(b)第(6)号の「見やすい位置」とは、レーダーの映像の外側をいう。
(c)第(6)号への「真速力」では、対地によるものか対水によるものかの別も表示すること。
(d)第(16)号の「表示」は、自船と捕捉された船舶の相対運動による表示であること。
(e)第(17)号に定める距離レンジ以外の距離レンジにおいても、当該装置の機能を有してもよいが、その場合は、その距離レンジにおいても、この条において規定する全ての基準を満足すること。
(f)第(19)号の「表示」については航海用レーダーの性能基準の要件に適合すること。
(g)第(21)号の「管海官庁が適当と認める」輝度とは、昼間(直射日光が当たる場合を除く)及び夜間において視認できる輝度とする。このため、覆いを設けてもよいが、当該覆いは、装置の使用者が行う、通常の見張りを維持する能力を妨げるものではないこと。
(h)第(27)号の点検により、機能劣化が判断された場合には、警報を発すること。
(i)第(30)号の「管海官庁の指定する記号」とは、表10.0(1)に示す記号をいう。
(j)第(31)号において準用する第6条第6号の「説明書」には、海面反射、雨、雪、低層にある雲及び非同期エミッションによる、信号対クラッター比及び信号対雑音比の低下など、自動追尾の誤りの原因の詳細及び対応する誤りにてついて記載されていること。
 
表10〈1〉
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