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国際海事情報シリーズ79 欧州における航海機器のシステム化の現状と動向に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2. 航海機器の搭載の実態
2.1 機器製品の種類
 IMOの規定する船舶の主要機能は、(1)推進、(2)航海(航法)、(3)操舵、操船、(3)船内管理、(4)荷役管理、(5)船体構造、ハル・ストレス、である。
 
 ワークステーションの考え方はいろいろあるが、ワークステーションに含まれる、本調査で対象としている航海に関連する機能と、船橋にある機器との関連が、米国船級協会(ABS)の「ABS Guide for Bridge Design and Navigational Equipment/Systems」に示されているので、一例として下表に挙げる。(注:複数機能を持つ機器も多く、表中の主な機能と機器名はそれぞれ一対一に対応するものではない。)
 
 航海、機関、通信を含むこれらの機能、機器の大半は統合航海システム(INS)及び統合船橋システム(IBS)の構成要素となる。IBSには、INSに加えて荷役管理、保安機能、船内管理機能が含まれる。
 
船橋における主な航海機能及び機器一覧
ワークステーションの機能 ワークステーションでの主な作業 機能が含まれる船橋機器名
航行・トラフィック監視・操船 ●全船舶、物体の監視
●危険の認識
●衝突回避方法の判断
●自船のシグナル確認
●自船の針路・速度確認
●自船の針路と速度の維持・変更
●(航路維持)
●自船の位置確認
●自船内会話の制御
●船舶間、船陸間会話の制御(VHF)
●警報発信
●判断援助機能付きグループ警報認識
●天候・海路の監視
●非常警報の監視
●デッキ・ログの維持
・ジャイロコンパス・ヘディング・インディケーター
・磁気コンパス・ヘディング・インディケーター
・針路確認インディケーター
・ラダー・ポンプ選択スイッチ
・ステアリング・モード選択スイッチ
・ステアリング・ポジション・インディケーター
・ラダー・アングル・インディケーター
・ピッチ・インディケーター(可変ピッチプロペラ)
・回頭角速度インディケーター及びコントローラー
・速度・距離インディケーター
・調節コントロール付き水深インディケーター
・9GHzレーダー
・ARPAを含む自動トラフィック監視システム
・自動ビジュアル・ポジション・インディケーターを含む
・測位機器・システム(GPS、Decca、Loran-C、GLONASS等)
・船橋航海当直警報装置
・警報中央管理パネル(IBSの場合)
・バックアップ航海士呼び出し警報装置
・チャート関連設備
・ECDIS
・AIS
・推進システム/スラスター制御、自動停止機能
・推進システム回転装置
・プロペラ回転インディケーター
・気温・水温計
・自動電話システム
・無線通信設備
・NAVTEX自動受信機、記録装置
・信号発信機(警笛、濃霧讐報、一般警報、モールス信号)
・サーチライト制御装置
・ウィンドウ・ワイパー、ウォッシャー、ヒーター制御装置
・暗視装置
・音響受信システム
・ワークステーション・ライティング制御装置
・冷暖房、空調設備
・時計
・グループ警報装置及び警報リセット・コントロール
コニング情報 ●コニング情報から自船運航状況を確認 ・コニング情報表示パネル
モニタリング ●全船舶、物体の監視
●危険の認識
●自船の針路・速度確認
●自船内会話の制御
●船舶間、船陸間会話の制御(VHF)
●判断援助機能付きグループ警報認識
●警報発信
●天候・海路の監視
●非常警報の監視
●デッキ・ログの記録
●航行、トラフィック監視、操舵への援助
●パイロット援助
・ジャイロコンパス・ヘディング・インディケーター
・ラダー・アングル・インディケーター
・ピッチ・インディケーター(可変ピッチプロペラ)
・回頭角速度インディケーター及びコントローラー
・速度・距離インディケーター
・水深インディケーター
・レーダー
・バックアップ航海士呼び出し警報装置
・推進システム/スラスター制御、非常時自動停止機能
・プロペラ回転インディケーター
・自動電話システム
・無線通信設備
・信号発信機(警笛)
・ウィンドウ・ワイパー、ウォッシャー、ヒーター制御装置
・ワークステーション・ライティング制御装置
・時計
・各種警報装置及び警報リセット・コントロール
手動操舵 ●ラダー・アングルに従った操舵
●針路表示に従った操舵
●陸・海上目標物に従った操舵
●警報の監視
・ジャイロコンパス・ヘディング・インディケーター
・磁気コンパス・ヘディング・インディケーター
・針路維持インディケーター
・舵、ステアリング・レバー手動切替スイッチ
・ラダー・アングル・インディケーター
・回頭角率速度計
・船橋航海当直警報装置
・自動電話システム
・ウィンドウ・ワイパー、ウォッシャー、ヒーター制御装置
ドッキング (船橋ウィング) ●針路転換の指示、実行、制御
●速度変更の指示、実行、制御
●スラスター変更の指示、実行、制御
●管理局との通信
●タグ、パイロット・ボートとの通信
●船舶側面の水面監視
●信号発信
●警報の監視
・ジャイロコンパス・ヘディング・インディケーター
・ステアリング・ポジション選択スイッチ
・ラダー制御装置
・回頭角率速度計
・推進システム/スラスター制御装置
・推進システム回転装置
・プロペラ回転インディケーター
・船舶の水平スラスト、進行インディケーター
・風向・風速計
・水深計
・船橋航海当直警報装置
・警笛制御装置
・サーチライト、モールスランプ制御装置
・自動電話システム
・無線通信設備
・ワークステーション・ライト制御装置
航路計画 ●天候、潮流等を考慮した最適航路、速度の決定
●航路、速度の指令
●潮流データの分析
●航海記録、書類等の参照
●天候情報の参照
●手動航行時に備えた位置情報記録
●クロノメーター、無線の異常制御と記録
●デッキ・ログの記録
●海図使用時の航路計画のための外部通信
・航路計画機能付きECDIS
・航路計画装置
・チャート・テーブル
・位置確認装置
・拡大鏡、コンパス、鉛筆等の文房具
・天候チャート・プロッター
・主時計
・時報受信機能付きクロノメーター
・無線方向探知機
・距離計、針路プロッター等のログ
・船橋航海当直警報装置
・気圧計
・プリンター
・自動電話システム
(出所:「ABS Guide for Bridge Design and Navigational Equipment/Systems」より作成)
 
2.2 航海機器の歴史的変遷と進化
 レーダー、エコーサウンダー等の近代的な航海機器の発明と実用化は、20世紀初頭〜半ばに遡る。まず、船舶に搭載されるジャイロコンパスが1900年代初頭に米国、ドイツでほぼ同時期に実用化され、レーダーは1935年頃に英国で開発された。
 
 第二次世界大戦中から戦後にかけて、地上基地局からの電波を利用した電波航法システムであるDecca、Omega、Loran等が開発され、普及した。さらに、現在の測位装置の主流である衛星システムGPSは、米国が軍事目的で開発し、1973年に最初の衛星が打ち上げられた。
 
 現在使用されている主要航海機器、特に航海用電子機器の開発、普及を知るためには、IMOの性能標準制定時期が目安となる。以下にIMOのSOLAS条約で規定されている航海機器の性能標準導入時期を示す。航海用電子機器の開発、普及は、1990年代半ば以降が圧倒的に多いことがわかる。
 
主要航海機器のIMO性能標準導入年代
導入年代 機器・機能名
1970年代 レーダー(1996年改正)
レーダー表示シンボル
ARPA(1995年改正)
オートパイロット
エコーサウンダー(1998年改正)
磁気コンパス
レーダー反射器
回頭角速度計
ジャイロコンパス
ジャイロコンパス・ヘディング・リピーター
ジャイロ・ベアリング・リピーター
1980年代 船速距離計(1995年、2000年改正)
ディファレンシャルOMEGA
レーダー・ビーコン、トランスポンダー
1990年代 DECCA
LORAN-C/CHAYKA
ECDIS
ECDISバックアップ
RCDSモード
GPS(2000年改正)
GLONASS(2000年改正)
DGPS/GLONASS(2000年改正)
高速船用レーダー
高速船用オートパイロット
SARTS
音響受信装置
電子プロッター
磁気船首方位伝達装置
IBS
ヘディング・コントロール・システム(オートパイロット)
VDR
トラック・コントロール・システム
INS
AIS
高速船用ジャイロコンパス
ATA
2000年代 昼間シグナリング・ランプ
暗視装置
船首方位伝達装置(THD)
(出所:European Maritime Pilots' Association資料より作成)
 
2.3 現在搭載されている航海機器の特徴・傾向
 INS、IBS開発につながる航海用電子機器の進化と低価格化は、1970年代のコンピューター技術の発展なしには実現不可能であった。インテルのプロセッサー、IBMのPC技術、マイクロソフトのソフトウェアが、現在の航海用電子機器及びシステム全ての基礎となっているといっても過言ではない。
 
 メーカーの目的は最新技術を競争力のある低価格で提供することである。例えば、1940年代後半に普及し始めた頃には、レーダー1基の価格は500,000ポンド相当であったものが、現在では20,000〜25,000ポンドである。自社開発すれば何千万ポンドもかかるプロセッサーが、200ポンドで買える時代である。
 
 機器の基本構成要素であるセンサー、プロセッサー、ディスプレイは低価格化しており、その組み合わせにより、追加コストなしで多機能機器を造ることができることが、システム化を促しているといえよう。
 
 同時に、現在航海機器に使用されているコンピューター技術や液晶技術等を見ると、他の電子機器に比べた場合の航海機器、システムの技術的特殊性は少なくなっていることがわかる。電子機器の外見や操作性も似ており、一般のコンピューター機器との違いはあまりない。今後もコンピューター技術の共有化が進むことが予想される。
 
 また、信頼性の傾向としては、センサー、プロセッサーの共有化により、安全性を考慮した機器のリダンダンシー(冗長性)を実現することも容易になった。安全性確保には、MTBF(Mean Time between Failure)の手法の導入により、故障率の推測を数値的に行うことができ、設計段階でも故障率発生確率を考慮することができるようになった。
 
 また、センサー、プロセッサーの重化により、万一、ある部分が故障した場合でも、冗長性は十分に確保されるように配慮されている。(英国人技術者談)
 
 INS規格では、企画・設計段階で、システムで推測される故障の分析を「Failure Analysis」として規定化することとしているが、実施及びルール化はまだ検討段階である。
 
 また、センサーの互換性のために、一つのシステムの中で、2つの同種センサーから異なったセンサー情報が供給され、システムがそれぞれの判断をして事故を起こした例もあり、最近では、システム物では特にCCRS(Consistent common reference system)を強調するようにしている。(後述のINS(A)参照)







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