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国際海事情報シリーズ79 欧州における航海機器のシステム化の現状と動向に関する調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2.4 船級協会のブリッジ・システム規格
 IMOのSOLAS条約で義務化されている舶用機器は、国際条約により各国が安全管理のために型式承認試験を実施しているが、現状では、IBSやINSは、SOLAS条約による装備義務品ではないため、これらのシステムの評価試験は、各船級協会の試験に委ねられている。
 
 各船級協会が独自のルールを作り、それに従って試験を実施、クラス分けしているが、国際的に統一されたのではなく、また船級協会の実力差もある。また、同じ協会規則でも、ランク分けにより、程度の高いシステムや低いシステムもあり、システムの重要な評価判断要素になる。
 
 現在、世界の主要船級協会で、ブリッジ・システムや一人当直用のワンマン・ノーテーションの規格を持ち、試験を実施しているものには、下記のようなクラスがある。
DNV(ノルウェー) NAUT-AW、NAUT-OC(旧W1、W1-OC)
GL(ドイツ) NAV-O、NAV-OC
BV(フランス) SYS-IBS、SYS-NEQ、SYS-COM(旧CNC-E、CNC-1、Option V)
RINA(イタリア) SYS-NEQ、SYS-NEQ-1(旧NAU)、SYS-IBS、SYS-COM
NK(日本) BRS、BRS-1、BRS-1A
LR(英国) NAV-1、IBS
ABS(米国) NIBS、NBLES、NBL(旧OMBO)
(出所:片山海事技研事務所資料、各船級協会資料より作成。)
 
 一人当直は、現在SOLAS条約、及びSTCW条約(船員の訓練及び資格証明並びに当直に関する国際条約)では、航行安全の面で時期尚早との判断であり、一人当直を前提とした配乗計画は認めらないが、技術的には可能である。基本的にdual watchを前提とし、夜間や視界制限状態、狭水路、船舶輻湊海域、離接岸時以外の大洋航行中等は、充実した安全設備と自動化の支援を得て一人当直を行い、余力を乗組員の休息や、他の作業に割り振ることもできる。この措置により、航行安全性を増すと同時に、全体のコストダウンを図るという船主メリットがあり、その裏づけで荷主も安心する効果がある。このニーズから、主要船級協会は一人当直も保証できる規則を開発している。
 
 次項の北欧船の実例を見てもわかる通り、航海機器のシステム化により船橋環境は変化しており、種々単独機器が多くなっている船橋の作業環境、ひいては航行安全上の問題の解決を、INS/IBS等の進化したシステムに委ねざるを得ない時期がくると予想される。将来的には、いずれ「環境が整った」との理由で、SOLAS/IMOで義務化される可能性も考えられよう。
 
2.5 船種別特徴と「システム化」の実例
 レーダー/ARPA、GPS/DGPS、電子海図、オートパイロット、エコーサウンダー等の基本的な電子航海機器の搭載状況は船種によって大差はない。しかし、これらの航海用電子機器の統合状況は各船舶や各船社の方針によって異なる。外見は統合されたように見えるコンソール型のブリッジ・レイアウトでも、実際はシステム化されていないモジュール機器の集合体である場合もある。
 
 またAIS、VDRのように船種によってIMOの搭載期限が異なる機器は、船社の方針により搭載期限直前まで設置されないことが多いようだ。
 
 以下に航海機器のシステム化が比較的進んでいる北欧の貨物船、客船の実例を紹介する。 
 
実例1: 外航RORO貨物船 DFDS Tor Line 「Tor Britannia」
 「Tor Britannia」は、英国中東部イミンガム・ドック(Immingham Dock)とスウェーデン南西部のヨーテボリ(Göteborg)を結ぶ外航定期貨物船。所用時間は27時間。
 
(出所:DFDS Tor Line)
 
船籍:デンマーク
建造:Fincantieri(イタリア)
竣工:2000年4月
船級:DNV(ノルウェー):1A1 General Cargo Carrier RO/RO MCDK PWDK E0(船橋設備は一人当直の基準を満たしているが、船社方針により「ワンマン・ノーテーション」は取得していない。)
総トン数:24,196GT
全長・全幅:197.50×26.00m
最大喫水:7.50m
主機出力:Wärtsilä New Sulzer Diesel engines 9ZA 50S、10,800kW×2
航海速力:21.5kn
 
 船橋の航海機器システムは、Atlasレーダー2基、Conningpilot Atlas 9300、Atlas Multipilot(ECDIS)を中心としたSTN Atlas(現SAM Electronics)のINS「NACOS 45」のコンフィギュレーション。使用している電子海図はC-MAP製で、CD-ROMによるアップデート。現時点で搭載義務のないAIS、VDRは搭載されていない。オートメーション・システムは、Lyngsø MarineのUniversal Control/Monitoring System UCS/UMS 2100。
 
 なお、2004年に同航路に就航し、同船をリプレースする予定のDFDS Tor Lineの新鋭「RO-RO 3900」シリーズ船には、STN AtlasのINS「NACOS 45」の新バージョンが搭載されており、船級はLloyd's RegisterのIBS及びワンマン・ノーテーション「NAV 1, IBS」を取得している。
 
「Tor Britannia」:広々とした船橋
 
航海士の意見
●同船の航海機器システムの選択、ブリッジ・レイアウトには我々ユーザーの意見は入っていない。機器の選択は価格優先である場合が多い。
●システムが故障した場合には、わざわざドイツからエンジニアを呼ばなければならないため時間がかかる。(何度かあった。)
●ECDISは、例えばTransas社製と比較した場合、メニューが複雑でユーザー・インターフェイスが使いにくい。
●電子海図の拡大、縮小に時間がかかる。
●光線の加減で電子海図の配色が見づらいことがある。
●レーダーのバックグラウンドは黒のみ。配色の変更は不可能。
●船速や深度の表示が何種類もあるが、これは不必要。
●AISは今後搭載予定で、あれば便利だと思うが、AIS搭載義務のない漁船の多い海域での有効性には疑問がある。
 
トレーニング
●新たに乗船する航海士は、実際に往復航海を体験してシステムに慣れる。それでも不安な場合は、もう一往復してもよい。
●一年間に一週間、航海士は自分で選んだトレーニングを受ける権利がある。







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