1. 調査目的
船舶関係工業標準化に関し、今後の船舶関係工業標準(国際規格並びにJIS等)作成の方向性や規格の適正化及び維持管理に反映させるため、その市場ニーズ及び社会的ニーズ、市場適合性、技術進歩の実情等の標準化ニーズを調査することした。
調査は次の方法により実施した。
(1)調査分野の検討
資料調査、ヒアリング調査等により具体的な調査分野を検討するとともに、アンケート方法・内容等を検討した。
(2)ヒアリング調査
調査分野を検討するため、また、アンケート調査結果を補完するため、関係団体等を訪問した。((財)日本舶用品検定協会、(社)日本海難防止協会、運輸施設整備事業団、海上技術安全研究所、海上災害防止センター、(社)日本船舶品質管理協会、(社)船舶整備共有船主協会、国土交通省海事局)
(3)アンケート調査
日本船舶標準協会会員会社、標準委員会傘下の各部会・専門分科会委員等、合計285箇所に 別紙アンケート調査表により、アンケート調査を実施した。
(4)新規標準化項目の抽出
アンケート調査、ヒアリング調査、資料調査等の結果を検討し、標準化が予期される分野・項目をとりまとめた。
(1)標準化をめぐる最近の動向
技術革新の進展、経済のグローバル化等に伴い、マーケット戦略における標準の重要性が飛躍的に高まっている。
国際標準をめぐる最近の動向として、次の事項が挙げられる。
(1) 1995年のWTO/TBT協定(貿易上の技術障壁を排除するため、各国の強制規則・任意規格を制定する際には、国際標準を基礎とすることを定めた協定)の発効以来、欧州を中心に、市場の創造・獲得のため、戦略的に国際標準を活用する動きが強まっている。
(2) 規格の内容についても、当初の製品規格を主としたものから、最近では性能要件、判定基準、試験基準、システム全般にわたる規格を定めたもの、あるいは、ガイドラインといったものに変わっている。
(3) IMOと国際標準機関の連携強化により、IMOの各条約が性能規定化される中、規則に国際規格が引用され強制化されるようになってきている。
これらの標準をめぐる動向に的確に対応するため、我が国船舶関係産業界の標準化ニーズを踏まえて、国際標準の場に積極的に国際規格を提案すると共に、JIS化が必要なものを積極的に取り上げることが重要となってきている。
(2)近年策定された指針・計画等における重点分野
船舶関係における工業標準化の方向を定めている指針、計画等で、近年策定されたものには、「船舶技術分野における標準化戦略」「船舶関係工業標準化第7次長期計画」「船舶分野における環境配慮規格策定ガイド」がある。これらにおいて、標準化の重点分野を次のように設定している。
1)「船舶技術分野」における標準化戦略(日本工業標準調査会標準部会船舶技術専門委員会 平成13年8月)
JIS・国際規格の制定状況、標準化・国際標準化活動の問題点、課題及び対応策等船舶技術分野における標準化戦略を示している。標準化を推進すべき重点分野として、次のような分野及び例示を挙げている。その例示を 別紙3に参考までに添付する。選定にあたっては、国際標準化動向や国内ニーズの調査を進めつつ、適宜見直すること等が示されている。なお、本標準化戦略は平成16年2月を目標に改訂される予定であると聞いている。
重点分野
(1)安全・環境など強制法規の解釈基準例として活用が可能な分野
(2)社会的ニーズに密接に関連した分野
(3)IT等先端技術の活用に対応した分野
(4)産業基盤の強化に対応した分野
2)船舶関係工業標準化第7次長期計画(平成13年度から平成17年度の5カ年(財)日本船舶標準協会)
本長期計画は、平成13年度から平成17年度の5カ年間における、新規標準化項目及び基礎調査項目の選定、既存規格の見直し並びにこれに伴う規格作成等の作業を計画的・効率的に推進することを目的に作成されているもので、重点事項として、次のとおり設定している。
重点事項
(1)国際化の進展に対応した標準化
(2)情報、通信等技術革新の著しい進展に対応した標準化
(3)環境保護・資源循環(資源のリサイクル)に対応した標準化
(4)船舶の安全に関する法令、規則などに関連した標準化
(5)マリンレジャーに関連した標準化
(6)産業基盤の強化に対応した標準化
(7)製造物責任法(PL法)に対応した標準化
(8)高齢者を念頭においた標準化
3)船舶分野における環境配慮規格策定ガイド(平成15年1月30日、日本工業標準調査会標準部会船舶技術専門委員会)
平成15年度環境JISの策定促進のアクションプログラム(改訂)(平成15年4月、日本工業標準調査会標準部会環境・資源循環専門委員会)の分野別環境配慮規格整備方針の中で、船舶分野における環境配慮規格作成のための基本事項、一般的留意事項、今後の取り組み等が示されている。今後の取り組みの一つとして、従来から行ってきた地球環境保全の対策だけでなく、長期的視野に立った地球環境浄化の技術や環境負荷を生じない船舶又は舶用製品の開発など新たな指向を目指した標準化が望まれるとしている。
具体的な標準化項目は示されていないが、中期計画の中に次の標準化対象テーマが明記されている。
・舟艇の騒音評価法
・船舶に用いる代替フロンの使用基準
・船用アルミニウム合金押出形材
(3)重点調査分野
今回の標準化ニーズ調査にあたり、最近の標準化動向を勘案し、標準化が予期される次の3つの分野を重点的に調査することとした。
1. 国際競争力強化分野
2. 環境・資源循環分野
3. 安全等に係わる強制規則分野
4. その他
(4)重点調査分野の選定理由・ねらい
1)国際競争力強化分野
現在、経済産業省において、日本の産業競争力強化のため、最先端の技術―いわゆるトップランナー技術―を標準化して(JIS化或いはISO/IEC化)新たな市場の創造・獲得を目指す動きを積極的に進めている。
船舶関係の分野においても、標準化により新たな市場の創造・獲得を目指すことできるトップランナー技術があるのではないかと考えられ、トップランナー技術と標準化ニーズを調査することとした。
また、最近の調査・研究開発の中で、標準化して市場の創造・獲得を目指すに適したものがないか調査することとした。
2)環境・資源循環分野
国内外において、環境・資源循環分野の標準化は今後の重点項目となっている。
現在、検討候補となっている項目には次のようなものがあるが、IMOで審議中でその方向が必ずしも明確でないが、近い将来標準化が必要と考えられるものがないか調査することとした。
(検討候補例):
バラスト水交換、処理方法/船舶のリサイクリング/船舶からの大気汚染の防止/船底防汚塗料の有害影響/油汚染防止/船舶からの廃棄物/アスベスト/環境配慮型舶用機器の設計指針
3)安全等に係わる強制規則分野
IMOにおける各条約の技術基準が性能規定化される中、その技術基準に係わる解釈基準例として国際規格が引用され強制化されるようになってきている。
強制法規化に伴い標準化が必要と考えられるものはないか調査することとした。
4)その他
前記の3分野以外の分野で、新規に標準化が必要な項目、既存の国内基準を国際化することが望ましい項目、既存の国際規格で早急に見直しが必要なものも併せて調査することとした。
(1)アンケート内容
(2)アンケート先等
平成15年7月1日から7月31日
日本船舶標準協会会員会社、標準委員会傘下の各部会・専門分科会委員等、合計285箇所に郵送
(3)アンケート結果
新規標準化・見直しその他を含めての標準化希望項目は、現在既に規格原案作成等に着手している項目を除いて、環境・資源循環分野3項目、安全等に係わる強制規則分野11項目、高齢者・障害者への配慮関係1項目、その他3項目、合計18項目であった。
重点調査分野に対する回答はあまり多くなかった。これはアンケートの内容、様式等が回答しにくい等適切でなかったこともあるが、将来は別とした、現状では差し迫って必要性を感じていないのではないかと思われる。
(1)新規標準化候補項目
アンケート調査において要望のあった新規標準化希望項目、規格見直し希望項目から、現在既に規格原案作成等に着手している項目を除いたもの、及び、国際競争力強化分野、環境・資源循環分野、強制規則分野で新規に標準化の可能性が予期される項目を整理し、新規標準化候補項目として、 別紙1にとりまとめた。
なお、アンケート調査において要望のあった項目のうち、候補項目として取り上げなかった項目は参考として付記した。
(2)標準化が予期される分野・項目の補足
新規標準化項目のうち、主なものについて、IMO等の審議状況、技術開発の状況等の現況、標準化の可能性等を調査し、 別紙2に整理した。
別紙3 船舶技術分野における標準化戦略(H13.8)個別分野における重点事項
以上
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