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4.2.4 需要動向分析
フロー図 ステップ4 参照
 
 高齢者・障害者の既存データ等から需要の全体像を推計する。既に高齢者・障害者向けの何らかのサービスがある場合は、移動の実績値を参考にする。
 
(1)検討手順
 高齢者・障害者の身体状況等(歩行能力)、外出行動(外出頻度等)をアンケート調査等で把握する。調査結果から対象者の外出頻度に基づいた外出交通量と必要な供給量を推計する。
 対象者、外出交通量の推計については以下の手順で行うことが望ましいが、需要動向調査の規模を縮小する、あるいは短期の計画を立てるために全人口の1〜2%を対象者と想定して外出交通量を推計する等の方法もある(図4-6)。
 
図4-6 調査手順
注) 一般的な交通の需要動向分析では、交通機関別分担率を求めて、需要を推計するが、地域福祉交通の需要動向分析では、バリアフリーの整備水準により実際に利用可能な交通機関の範囲が大きく変わる。後述のケーススタディでは外出総トリップ数に対して現実的には考えにくいが、ドア・ツー・ドアSTSで100%対応すると設定した上で供給量を算出した。
 
(2)調査の実施手順
 1)対象者の推計、2)外出交通量の推計をするための調査実施手順を図4-7に示した。
 
図4-7 調査の実施手順
 
(3)分析方法
1)対象者の推計
 アンケート回答者の歩行能力別分類により地域福祉交通サービスの対象者を検討する。例えば、高齢者・障害者を以下のような歩行能力別比率により分類する方法も考えられる。このうち、介助を必要とする者等、複数の質問の回答パターンを踏まえて、対象者を仮定することも一つの方法である。対象者の推計は、現状の利用実態を踏まえ、かつ潜在的な利用者も想定した調査が必要と考えられる。
 
<利用者の身体状況等からの推計(アンケート調査)>
 
<対象者の推計式>
Us = Pi × α × β
Us:対象者数
Pi:高齢者・障害者人口
α:対象者の範囲となる選択肢の回答比率(%)
β:高齢者・障害者以外の移動困難者を考慮した調整係数(1.0以上)
 
アンケート選択肢の例を示す。
例1:歩行能力
外出の際に1人では歩けない(対象者とするか検討)
・100〜200mまでなら自分だけで歩ける(対象者とするか検討)
・バス、鉄道を使って一人で自由に外出できる
 
例2:介助の必要性
外出の際に全面的な介助が必要(対象者とするか検討)
外出の際に一部介助が必要(対象者とするか検討)
・外出の際に全く介助を必要としない
 
例3:障害の内容と程度
肢体不自由者、視覚障害者、聴覚障害者、内部障害者
重度、中度、軽度
 
例4:補装具の使用状況
電動・手動車いす使用者、杖使用者(白杖、松葉杖、高齢者等が使う杖)等
 
例5:外出目的
通院、通所、通学、通勤、買物、趣味等
 
 STS対象者の推計、STS利用資格を判定するため、高齢者・障害者のより具体的な身体機能と移動の視点を考慮した判断材料として、ICFの障害分類を参考とすることが考えられる。
 
参考:ICF(国際生活機能分類)
 ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害の分類として、2001年5月世界保健機関(WHO)総会で採択された。
 ここでは、ICFの一部である「活動と参加」の領域における「移動」に関する分類項目を以下に示した。各分類項目(コード)の動作の際に、「どの程度問題(支障)があるか」によって、以下の5段階のレベルに分けて、数量的に判定する。 例えば、基本的な姿勢の変換(コード:d410)に重度の問題を抱えている場合、d410.3と表す。
 
.0 問題なし(なし) 0〜4%の問題あり .3 重度の問題(極度の・・・) 50〜95%の問題あり
.1 軽度の問題(わずかな) 5〜24%の問題あり .4 完全な問題(全くの・・・) 96〜100%の問題あり
.2 中等度の問題(中程度の)25〜49%の問題あり
 
「活動と参加」領域の「移動」Mobility
○姿勢の変換と保持 changing and maintaining body position(d410〜d429)
 d410 基本的な姿勢の変換 changing basic body position
 d415 姿勢の保持 maintaining a body position
 d420 乗り移り(移乗) transferring oneself
 d429 その他の特定の、および詳細不明の、姿勢の変換と保持 changing and maintaining body position, other specified and unspecified
 
○物の運搬・移動・操作 carrying, moving and handling objects(d430〜d449)
 d430 持ち上げることと運ぶこと lifting and carrying objects
 d435 下肢を使って物を動かすこと moving objects with lower extremities
 d440 細かな手の使用 fine hand use
 d445 手と腕の使用 hand and arm use
 d449 その他の特定の、および詳細不明の、物の運搬・移動・操作 carrying, moving and handling objects, other specified and unspecified
 
○歩行と移動 walking and moving(d450-d469)
 d450 歩行 walking
 d455 移動 moving around
 d460 さまざまな場所での移動 moving around in different locations
 d465 用具を用いての移動 moving around using equipment
 d469 その他の特定の、および詳細不明の、歩行と移動 walking and moving, other specified and unspecified
 
○交通機関や手段を利用しての移動 moving around using transportation(d470〜d489)
 d470 交通機関や手段の利用 using transportation
 d475 運転や操作 driving
 d480 交通手段として動物に乗ること riding animals for transportation
 d489 その他の特定の、および詳細不明の、交通機関や手段を利用しての移動 moving around using transportation, other specified and unspecified
 
○その他の運動・移動 mobility, other specified(d490〜d499)
 d498 その他の特定の運動・移動 mobility, other specified
 d499 詳細不明の運動・移動 mobility, unspecified
 
出典:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課のホームページより抜粋し、作成。







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