日本財団図書館（電子図書館）　「高齢者・障害者向け地域福祉交通サービスの整備方策に関する調査」報告書

4.2.3 計画・分析の基本方針の策定

フロー図　ステップ3　参照

　現況で捉えた問題点を克服するための計画の大方針を示す。計画の範囲として、対象とする地域の特定、実施する地域福祉交通サービスの内容を計画する。

　基本方針策定の意義は、高齢者・障害者が暮らしやすい交通サービスを把握することだけでなく、行政機関、利用者、サービス供給者が一体となり、地域福祉交通サービスを総合的に提供できる体制づくりを確保することにある。基本方針の主な役割は以下のとおりである。

・地域別の公共交通とSTSの役割分担を検討する。

・利用可能な財源と効率的な活用、対象者、サービス供給範囲等を検討する。

・計画手順と目標期間、計画推進関係者と役割分担を整理し、検討体制をつくる。

（1）検討手順

　4.2.2地域及び公共交通の現況分析に基づき、基本方針を策定する（図4-4）。

図4-4 検討手順

（2）策定内容

（1）計画の方針づくり（データ分析、方針設定）

a. 地域別の公共交通とSTSの役割分担の検討

　公共交通とSTSの整備、拡張の方向性を検討する（表4-4）。

表4-4 検討項目と施策例

検討項目	施策の例
高齢者・障害者の利用できる公共交通の整備促進	・ノンステップバスの増車・昼間の病院送迎の強化・高齢者向け巡回バスの運行
公共交通を利用できない高齢者・障害者向けのSTSの計画・運行	・介護タクシーを含むタクシー車両の活用・施設送迎等の把握を含めたSTSの計画

b. 利用者モビリティの最低保障の検討

　地域に居住する高齢者・障害者の身体機能、地形等地域条件からみた移動の不便さから、利用者モビリティの最低保障を検討する（表4-5）。

表4-5 指標と基準例

指標	基準の例
高齢者・障害者の身体機能	・歩行能力・介助の必要度・使用している補装具の種類・交通手段を利用しての移動能力
地域条件からみた移動の不便さ	・公共交通の運行頻度・バス停までの距離・地形（傾斜地等）・過疎地域かどうか・積雪地域かどうか

（2）対象者、対象地区の検討

　対象者は、次の2つの方法で概算を推計することが考えられる（表4-6）。

・方法1. 全人口に対する比率で推計

・方法2. 高齢者・障害者人口の層別分布から推計（障害の程度別）

表4-6 検討項目と検討内容

検討項目	検討内容
対象者、対象地区（地域福祉交通計画の基本方針策定）	・利用者資格・地区別の交通システム、運行範囲　等

（3）財源確保

　財源として、利用者負担金、寄付金、既存財源の横断的活用等が考えられる。車両購入、運営に対する既存の補助制度の例を表4-7-1、4-7-2に示す。

表4-7-1 既存の補助制度の例（バス）

	補助対象事業者	補助対象	補助率
生活交通路線維持費補助	乗合バス事業者	・路線維持費補助・車両購入費補助	国：1/2、地方公共団体：1/2
交通システム対策事業	地方公共団体、自動車運送事業者、バス協会、トラック協会、国土交通大臣が認定した者	パークアンドバスライド、サイクルアンドバスライド、レールアンドバスライド、トランジットモール（バス路線導入型）、コミュニティバス、シャトルバス、共同輸配送システム、ITS等先駆的システムの整備に対して補助	国：1/4　地方公共団体：1/4
調査事業、実証実験・実証運行事業	同上	パークアンドバスライド、サイクルアンドバスライド、レールアンドバスライド、トランジットモール（バス路線導入型）、コミュニティバス、シャトルバス、共同輸配送システムについての計画策定のための調査、実証実験又は実証運行（2年間以内）を行うことにより、当該施策の円滑な推進を図る事業に対して補助	国：1/2（実証運行については、赤字かつ年間補助限度額1000万円が条件）　地方公共団体：1/2（調査事業を除く）

表4-7-2 既存の補助制度の例（タクシー）

	補助対象事業者	補助対象	補助率
リフト付タクシー車両等整備事業	東京都（民間タクシー事業者）	リフト付タクシー車両を導入するための経費の一部を補助　（リフト付タクシーを導入する事業者に限り、セダン型でシート回転の介護タクシーについて経費の一部を補助）	・車両標準価格を超える額の1/2 ・補助限度額：リフト付タクシー1台当り1,000千円（セダン型タクシー1台当り200千円）

（4）計画手順と計画目標期間、計画推進関係者と役割分担の検討

　計画推進関係者と役割分担の検討のイメージを図4-5に示した。必要に応じて高齢者・障害者の参加と活動の場を提供するためにも利用者を含む地域協議会を設置することも考えられる。

図4-5 関係者イメージ