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4.2.2 地域及び公共交通の現況分析
フロー図 ステップ2 参照
 
 供給者の現況と利用者の現況を捉え、供給者と利用者ニーズのミスマッチや問題点を明らかにする。地域の特性及び公共交通の現況分析のために必要な調査について以下の視点から整理した。
・地域の地形・地理的な特性を整理する。
・高齢者・障害者の数と総人口に占める比率を把握する。
・公共交通と地域福祉交通のサービスの現状を把握する。
・生活に必要な施設分布を交通網と照らして整理する。
・福祉行政の視点から高齢者・障害者の外出と移動に関する現状の施策を整理する。
 
(1)調査の概要
 地域の現況把握のために行う調査項目を表4-1に整理した。
 
表4-1 地域及び公共交通の現況に関する調査内容
項目 調査内容
(1)需要・供給の大枠を決めるためのデータ 1)地勢 位置、面積 等
2)人口 基本データ 総人口、地区別、年齢階層別人口 等
高齢者・障害者(児)に特化したデータ 高齢者数・要介護認定者数、障害の種類・程度別障害者数 等 ※利用者ニーズを把握するためのグループインタビュー調査の実施
3)施設分布 住宅団地、公共施設、医療施設、商業施設、福祉施設 等
(2)供給の前提条件を決めるためのデータ 4)交通 道路 道路ネットワーク、道路幅員 等
公共交通 鉄軌道、バス、タクシー等 ※事業者へのヒアリング調査実施
STS 移送サービス 等 ※事業者、NPO等へのヒアリング調査実施
(3)供給の規模・水準を決めるためのデータ 5)既存の施策 高齢者・障害者の移動支援を目的とした助成制度、既存の都市計画マスタープラン、上位計画 等
6)財源 利用可能な財源、横断的な予算、福祉部門の予算 等
 
(2)調査内容、分析
 地域及び公共交通の現況分析に活用できる既存調査と分析例を表4-2に示す。
 
表4-2 既存調査データ
注)異なる種類の障害のある重複障害者数、障害者かつ65歳以上の高齢者数も把握する。
 
※参考:交通機関の特徴
 
 輸送力が乗合バス以下の交通機関別の運行形態、予約の必要性について表4-3に整理した。表頭の運行形態別分類については、次のように定義した。
 
・完全自由ルート型とは、タクシーのような完全に自由な運行形態(相乗りも含む)。
・半固定ルート型とは、固定ルートあるいは固定地点を持ちながらも予約ごとにルートや通過地点が変わるフレキシブルな運行形態。スウェーデンのフレックスルート等が該当する。
・固定ルート型とは、乗合バスのように固定地点・固定ルートを持つ運行形態。
 
 表の中で、○は「該当する」、△は「一部該当する事例がある」、×は「該当しない」を意味する。
 
表4-3 交通機関別運行形態の特徴
利用者 交通機関 運行形態(ルートの自由度) 予約の必要有無
完全自由
ルート型
半固定
ルート型
Semi-Fixed
固定
ルート型
Fixed
限定 患者送迎、介護送迎サービス注1) × × あり
移送サービス × × あり
福祉タクシー × × あり
介護タクシー × × あり
パラトランジット(北米) × あり
施設送迎サービス注2) なし
スクールバス × なし
非限定 一般のタクシー × ×
乗合タクシー × × あり
フレキシブルな運行をするバス注3) × あり
コミュニティバス × なし
その他乗合バス × × なし
 
<交通機関のサービス内容>
注1)患者送迎サービスとは、民間の救急車。
介護送迎サービスとは、介護指定事業者による送迎サービス。
注2)施設送迎サービスとは、通所介護センターや福祉センター施設を巡回する交通サービス。
注3)フレキシブルな運行をするバスとは、ルートやダイヤが需要に応じて柔軟に変わる交通システム。移動制約者、交通不便地域を対象に運行した事例として海外ではスウェーデンのフレックス・ルート(フレックスライン)、わが国では中村まちバス(高知県中村市)、お出迎えバス(秋田県鷹巣町)がある。
 
 地域福祉交通サービスを利用者の限定有無と輸送力を軸に類型化した。
 
 図4-2の横軸では、利用者を高齢者・障害者等に限定しているか否かによって2分し、縦軸では、乗合輸送で使用される場合が多い交通サービスを上に、個別輸送で使用される場合が多い交通サービスを下にし、輸送人数の規模の目安を凡例のように大きさで示した。
 
図4-2 地域福祉交通サービスの類型化
注:ゴシック体は国内の交通サービス、明朝体は海外の交通サービスを示す。
 
注1)フレックス・ルートは、経済的な負担の多い高齢者・障害者専用のSTSの需要を下げることと、一般のバスに乗れない高齢者の利用を目的として、1996年スウェーデンのイェーテボリ市で開発されたタクシーとバスの中間的な交通システムである。15分前までの予約を基に、予約のあるMP(ミーティングポイント)だけを起点から終点まで自由なルートで結ぶ運行形態である。
注2)高知県中村市の2〜3キロ四方の地域を対象に、従来からあったバス停に加え新たにバス停を設置し、電話や施設内の端末機器で予約すると、バスの到着予定時刻を電話及び端末で知ることのできるバス運行システムである。予約のあるバス停間を運行経路上に限り自由なルートで運行する。ITSの実験として実施されたが、利用者の評価も高く現在も運行を継続している。
注3)スウェーデンのフレックス・ルートの運行目的、方法に準じて設計され、鷹巣町、国土交通省東北整備局、東京都立大学、東京大学により、平成14年(2002年)10月、平成15年(2003年)2月に2週間ずつ実験運行されたバスである。運行特徴は、起終点がありミーティングポイント間を自由に結び運行する。利用者は1時間前まで予約センターへ電話、ファックス、メールで予約し、利用できる。利用モニターは主に高齢者が中心であり、秋田県鷹巣町で行われた。
注4)最新のITを活用したデマンド型乗合タクシーで、福島県小高町の商工会連合会がタクシー事業者から車両を借り上げて運行している。利用者は電話で「まち情報センター」へ利用の30分前までに乗車申込をすると、自宅から目的地までのドア・ツー・ドアの送迎サービスを100円(町中心部のまちなか循環線)または300円(郊外部の東部、西部線)の均一料金で利用できる。
注5)車いすを使用したまま乗車できるタクシー。
 
地域福祉交通サービスの分類
 
図4-3 地域福祉交通サービスの分類
(拡大画面:33KB)
注1) デイサービスバス、障害者福祉バス、老人福祉バス等。
注2) NPOは、ボランティアが法人格を取得したととらえ、同様サービス形態・内容である。
注3) 需要が少ない地域では、バス車両ではなくセダン型やジャンボタクシーのような車両で運行する例もある。







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