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基礎講座 授業「ザ・表現教育」
講師 青木淑子(福島県立福島西高等学校)
庄崎隆志(デフ・パペットシアターひとみ代表)
河合依子(岐阜ろう劇団「いぶき代表」)
司会 大谷充浩(福島県立聾学校)
レポート (1)「舞台に送った感動−“走れメロス”への取組み―」
  富山美津江(福島県立聾学校)
(2)「聾学校における国語表現 〜内から外へ〜」
  小野美花(福島県立聾学校)
【内容】
8月2日
1、福島県立聾学校の表現教育(演劇活動)の流れと現状について発表。
2、『出会い』から「発見」集団ワークショップ
3、模擬授業−3.3声明に学ぶ−
 (1)3.3声明の資料配布
 (2)「あしたを拓く」(ビデオ)を観る。
 (3)4コママンガ(4場構成の劇)の4場を考える。発表。

8月3日
ワークショップ 「笑い」「かゆみ」などの表現
          「火」の表現
 
【成果と今後の課題】
1、10数年にわたり積み重ねてきた表現教育の実践について理解を深めることができた。
2、表現を実際に体験することで、身体を動すことの楽しさ喜びを実感できた。
3、参加者同士の共感的な受容と、積極的な活動が展開できた。

(課題) このような表現活動(表現教育)への取りくみを今後の大会でもぜひ実践して欲しい。
 
 
 
基礎講座
授業「ザ・表現教育」
【1日目】 司会 大谷充浩(福島県立襲学校)
 
1 講師紹介
 
2 実践報告
(1)「福島県立聾学校の現教育の歴史」 青木淑子(福島県立福島西高等学校)
(1)基礎講座の内容と進め方の確認
(2)全国討論集会福島大会における基礎講座の意味について
 福島と言えば「福島県立聾学校の表現教育」「福島の演劇活動」と考えるくらいその活動は定着している。今回福島で大会を開くにあたり、ぜひその活動の実態を明らかにして欲しい・・という要望にこたえての企画である。
 
(3)内容・・・資料参照
要点
○教育活動は教師一人の手によるものではない。改革といえども1年や2年で変えられるものではなく、長い年月をかけて継承しながら検証し、よりよいものに積み重ねていくものである。私も15年間、先輩達の苦しみ悩んで積み重ねていったものを大切に継承しながら、よりよいものに変えてきた。(『前の者は後の者に、後の者は前の者を』の意味もここにある。)福島県立聾学校も後5年で100年の歴史を重ねたことになる。80周年・90周年とその節目に聾学校にいた私も100年の節目には退職してしまっている。歴史の流れの中で「今」を大切にして自分にできることを見極めていきたいと考えている。
○手話を禁止されていた時代は「手話を使う先生」はそれだけで聾のこどもと心が寄り添ったかもしれないが、今や「手話を使う」ことは当たり前、手話で何を語るか・・・が問題になっている。
○演劇は「人間に生まれたなら誰でも出来る」(民族・性別・年齢・形態・能力など一切関係ない。)そして「決して一人では出来ない」という特色に教育活動としての大きな意味がある。
○自己を他に伝える力を人との関わりの中で育てる「演劇活動」は、福島において検証しながら実践され、全国的に評価されてきた。その中で子どもが変わり、親が変わり、教師が変わっていった。ここに、これを継続していくことが、聾学校の教育活動の使命だと考えている。
 
(2)レポート報告
 
3 ワークショップ
  テーマ「自己発見」
(青木淑子)
 次のようなグループに分かれ、自分についての理解を自他に示す。
(1)「聾者」か「聴者」か
(2)コミュニケーション手段について
(3)基礎講座に参加した理由
※分かれたところでインタビュー
 
4 模擬授業(青木淑子)
(1)授業の進め方について・・・参加者全員が生徒になって授業を受けていただく。
(2)授業で大切にしたい事
○聾学校の授業で一番大切でありながら、見落とされている学習
「聾者の文化」「聾者の歴史」を学ぶ事・・・聴者の教師には、教える事が困難
 聾学校では、「聾のこども」と「成人聾者」の出会いの場を作り聾者の文化や歴史を教える努力と工夫が必要。
○全ての子どもがわかる授業・・・できないことを「子ども」のせいにしないこと
(3)聾者の歴史を学ぶ―「3・3声明」について学ぶ―
 資料を配付。文章を読んでも理解できない事を「演劇」の力を借りてみよう。
 「3・3声明」を題材にした演劇、京都聴覚障害者協会制作の「あしたを拓く」のビデオを見る。
(4)ビデオを見てから、それをもとにした寸劇を作り発表する。
 10グループに分かれ、4場面の中の3場面のモデル上演をみて、残りの最終場面を話し合い表現する。
 
 
【2日目】
1 グループごとの発表
 
2 ワークショップ―「聾者の文化」との出会い―
 庄崎隆志先生河合依子先生のワークショップ
(1)歩く (2)笑う (3)縄跳び (4)手の遊び等
 
3 参加者の感想
(1)2日間、聾者の表現の豊かさにふれ印象に残った。
 表現は人とつながる大切なものだと思った。僕も豊かな表現力を磨きたい。(大宮 男性 聴)
(2)「ことば」になる前の「気持ち」「考え」がまずわき上がって、それが体を動かし表現になるのだと、それを目の当たりにした思いだ。「教育の本質」を感じた。(宮城県 男性 聴)
(3)福島聾学校で演劇活動をした。幼稚部の時、高等部の兄の劇を見てあこがれた。高等部になったらできると楽しみだった。高等部では劇を作るのに友人と夜中まで討論したり、道具をつくったりした。何度も意見を戦わせる中で心が開放され一つになっていくのを感じた。舞台に立って沢山の人に感動を伝えられた。親や後輩にも感動するのを見て、見ている人にも力を与えていると思った。劇の中だけでなく普通の生活にも「生きる力」を磨いていけると思った。(石川県 男性 大学生 聾)
 
 
4 まとめ
 2日間にわたり福島県立聾学校の表現教育についてその素晴らしい教育的効果を話してきたが、ここで現実を話さなければならないと思う。今年度、福島県立聾学校高等部では演劇部がなくなり、高校の演劇活動としての発表の場がなくなった。表現教育そのものにも疑念の声が挙がっていると聞く。これは「非難」でも「批判」でもない。現実である。この現実をどうとらえるか、私にはまだ整理がつかない。今回、基礎講座に参加して表現教育の意義に少しでも理解を示された皆さん、今後、福島県立聾学校を静かに見守っていきましょう。ある意味、教育活動のありかたについて大きな問題提起をしたのだと思いますから。
※まとめについては「提言」として別紙を参照していただきたい。







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