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(2)プランクトン
 中禅寺湖、湯ノ湖では9月、他の湖沼群では10月に調査をおこなった。付表3-4-5付表3-4-6にそれぞれ中禅寺湖・湯ノ湖とその他の湖沼群の分析結果を示す。
 
植物プランクトン
 図3-4-5、3-4-6にそれぞれ中禅寺湖・湯ノ湖とその他の湖沼群の植物プランクトン類別組成を示す(付表3-4-93-4-10には中禅寺湖・湯ノ湖とその他の湖沼群の植物プランクトン類別組成を示す)。
 
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図3-4-5 中禅寺湖・湯ノ湖の主な植物プランクトン類別組成
 
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図3-4-6 その他の湖沼群の主な植物プランクトン類別組成
 
 今回の調査で確認された植物プランクトンは、河川・湖沼に普通に生息する種が多く、高山湖沼に特有の種は見られなかった。
 中禅寺湖と湯ノ湖についてみると、種類数は同じだったが、種組成と細胞数は大きく異なっており、中禅寺湖では珪藻類、湯ノ湖では黄色鞭毛藻類が多かった。湯ノ湖では、多量に発生した黄色鞭毛藻類のUroglena americana(ウログレナ アメリカーナ)が風によって北西岸に吹き寄せられ、水の華10を形成していた。
 五色沼では、貧栄養水域によく見られる種が細胞数の大部分を占めた。切込湖、刈込湖では、Chlorella(クロレラ)属が大量に出現し、表層の細胞数で見ると、湯ノ湖に次いで多かった。
 
10 池や沼で、ある種のプランクトンが異常に増えて水面の色が赤や青に着色すること。今回湯ノ湖で発生したUroglena americana(ウログレナ アメリカーナ)による水の華は赤色に見えるため淡水赤潮とも呼ばれる。
 
動物プランクトン
 図3-4-7、3-4-8にそれぞれ中禅寺湖・湯ノ湖とその他の湖沼群の動物プランクトン類別組成を示す(付表3-4-7付表3-4-8にそれぞれ中禅寺湖・湯ノ湖とその他の湖沼群の分析結果を、付表3-4-113-4-12には中禅寺湖・湯ノ湖及びその他の湖沼群の動物プランクトン類別組成を示す)。
 
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図3-4-7 中禅寺湖・湯ノ湖の主な動物プランクトン類別組成
 
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図3-4-8 その他の湖沼群の主な動物プランクトン類別組成
 
 中禅寺湖と湯ノ湖では、輪虫類と枝角類(ミジンコ)が個体数の大部分を占めた。中禅寺湖には少数ながら高山湖沼に特有の種が見られたが、湯ノ湖では高山性・北方性の種は見られず、様々な水域に普通に分布する種に加え、富栄養化の進行した水域を指標する種である原生動物のCarchesium sp.(カルケシウム属の一種)などが見られた。
 西ノ湖は、湯ノ湖に次いで個体数が多く、大部分が輪虫であった。また、五色沼では北方性とされる種が個体数の大部分を占めた。湯ノ湖を除く湖沼群では、富栄養を指標する種はほとんど見られなかった。
 
(3)湖沼の底生動物
 中禅寺湖、湯ノ湖では9月、他の湖沼群では10月に調査をおこなった。付表3-4-13に底生動物出現種一覧を示す。
 中禅寺湖では46種、湯ノ湖では40種、その他の湖沼群では28種が確認された。中禅寺湖と湯ノ湖では、湖心と水草帯において定量採集、水際でタモ網による定性採集、その他の湖沼群では水際でタモ網を用いた定性採集を行った。
 中禅寺湖、湯ノ湖の湖心部は泥が堆積し、ミミズ類とユスリカ類のみで構成される単調な生物相であった。水草帯では、水草に付着する巻貝類、エビ類、ユスリカ類、ミミズ類等が確認された。各湖沼の沿岸部では石礫底に河川にも生息する水生昆虫類が見られ、砂泥底ではユスリカ類、ミミズ類等が確認された。
 調査範囲は標高2,175mの五色沼をはじめ、いずれも1,200m以上の高地に位置するが、1,000m以下の平地と共通する生物が多く、高地のみに分布する種は確認されなかった。既往知見(岡田ら1936)と比較しても底生動物相は大きく変化していないが、湯ノ湖では、外来種であるコモチカワツボが多量に出現しており、湯川を介して下流に拡散する可能性もあることから今後の推移に注目すべきである。
 
注目種
コモチカワツボ (学名:Potamopyrgus jenkinsi
 コモチカワツボは1990年代に日本の各地で見つかるようになった外来種である。本種は、ヨーロッパから生きたまま輸入された養殖用のマスやウナギに混じって日本に侵入し、各地に広がったと考えられている。本種は、マスなどの淡水魚に食べられても、生きたまま消化管を通過できることが知られており、川の流れに抗して遡上する能力があり、乾燥にも強く、水鳥の体に付着して遠くへ運ばれる例も知られている。在来の生態系に与える影響は未知であるが、爆発的に増殖する種であるため、在来種と生息空間や餌料で競合する可能性がある。
 湯ノ湖の全域に高密度で分布しており、今後湯滝を経て下流に分布を拡大することが懸念される。
 
コモチカワツボ
 
マルタニシ (学名:Cipangopaludina chinensis laeta
 北海道南部から九州にかけて分布し、比較的海に近い平野部の水田、池沼、潟、用水路などに多く生息する。農薬等による水質汚濁や用水路の改修などで生息数が減少していることから、レッドリスト11に掲載されている。
 湯ノ湖・流入点のヨシ帯で2個体が確認された。
 
マルタニシ
 
11 日本の絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等を取りまとめたレッドデータブックを編集するために環境省が作成したリスト。生息状況や生息地周辺の環境によって8つのカテゴリーに区分される。
 
モノアラガイ (学名:Radix auricularia japonica
 北海道から九州までの日本の各地に分布する。小川、川の淀み、池沼、水田などの水草や礫に付着している。泥底に直接いることもある。食植性で微小な藻類をヤスリのような歯舌で削り取って食べる。藻類の他、動物の死骸や生み付けた卵塊を食べることもある。繁殖期には水生植物の葉や茎に卵を産み付けるため、生活史を通して、水生植物の存在を必要とする。用水路の改修や水質汚濁の影響で減少しているとされ、レッドリストに掲載されている。
 中禅寺湖と湯ノ湖の沿岸で多数確認された。
 
モノアラガイ
 
(4)水生植物
 水生植物は、植物プランクトンと同様に、湖沼生態系における基礎生産者として重要な役割を果たしている。また、大型の沈水植物は、魚類の産卵場、稚魚の生息場としても重要である。このように、水生植物は湖の生態系で重要な役割を果たしているが、一方で水生植物の繁茂は水流の停滞をひきおこし、枯死腐敗によって富栄養化を促すこともある。
 9月に中禅寺湖、湯ノ湖の沿岸域で、潜水観察と定量採集により水生植物の分布を調査した。図3-4-9に測点位置を、付表3-4-16に調査結果を示す。
 
図3-4-9 水生植物調査測点図
(承認番号 平14総使、第431号)







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