Column
コラム
人間は、さまざまな外界の刺激を受けたり、雑念が浮かんだりします。そこで、人間は脳のなかで、こうした情報をなんとか整理して、思考や行動を必要なひとつの方向に「統合」しています。このような「統合」の機能が何かの拍子に不調をきたすと、現実感覚が失われるということがおこります。「失調」という言葉には一時的な状態である、という意味があります。つまり、統合失調症は、一時的に調子をくずしたという意味で、回復の可能性を示している病名です。
2002年まで、「統合失調症」は、「精神分裂病」と呼ばれていました。しかし、分裂病という名称は、あたかも人格が分裂し、回復の見込みもない、不治の病であるかのような印象を人に与えます。この病名を告げられることで大きなショックを受けてしまい、絶望的な気持ちになってしまう人が多い病名でした。
そこで、全家連は、1993年に、日本精神神経学会に名称変更を要望しました。また、2001年には、全家連が学会によびかけ、新聞やインターネットを通じて、新しい病名についての意見を募集し、最終的に「統合失調症」という名称に落ち着きました。
統合失調症という新しい名称は、それまでの絶望的な名称ではなく、回復するという響きを込めた、と学会がいうように、将来への希望が感じられる名称になりました。
コラム2 情報あつめから始めましょう。
これまで述べたことはこの病気をとりまく医療や保健や福祉のほんの入り口の情報にすぎないのです。ただ、これを手始めにもう少し情報を得たい・学習してみたいと思われる方もおられるかもしれません。家族として知っておきたいこと、疑問に思うことは、ざっと項目をひろっても次のように多岐にわたります。
●統合失調症とはどんな病気なのか(他の病気とどこがどう違うのか?)
●治療はどんなことが、どのように行われるのか?
●精神科の薬にはどんなものがあるのか?
●副作用にはどんなものがあってどう対処したらいいのか?
●薬をのみたがらないときはどうしたらいいのか?
●入院や通院のさせかたは?
●精神障害の障害とは何なのか?
●医療費や生活費で困った時はどうしたらいいのか?
●すぐには働けないときどんなことをしたらいいのか?
●退院しても家に戻れないときはどんな方法があるのか?
●リハビリの場にはどんなところがあるのか?
●先行きの見通しはどうなるのか?
まだまだきりがないほど続きます。きわめて単純な言い方ですが、こんな家族の疑問や不安に少しでも応えることができればと、全国精神障害者家族会連合会(全家連)が出版し続けてきたのが、月刊『ぜんかれん』誌です( 月刊『ぜんかれん』参照)。文字通り小冊子ですが、30数年の長い間、具体的で実践的かつその折々の最新情報を提供し全国の家族や患者さんを支え、同時に支えられてきました。
家族として何かしたい、何ができるのだろうと思っておられるのであれば、まずは「病気を理解するための学習・情報集め」から始めてみませんか。
Advice
アドバイス
家族にできること
統合失調症は慢性化する場合が多い疾患です。そのため、周囲にいる人――特に家族の人が何をすればよいのか、というこころがまえをきちんと知っておくとよいでしょう。
★病気の知識を身につける
家族にできることの一番大切で基本的なことは、病気の知識を身につけることです。そうすることで、正しい対応方法がわかるようになるからです。
精神疾患はストレスが原因で再発をしてしまうことが多いことがわかっています。たとえば、ついつい「がんばりなさい」とはげましたりしがちですが、このことは大きなストレスになってしまいます。ご家族の方は、病気の特徴や再発の原因、どのように対応すればよいのか、などを知っておきましょう。
病気の知識を身につけるには、
(2)保健所の家族教室に参加する(多くの保健所で家族教室を開催してます)
などの方法が一般的です。
★あなたの味方だよ、という安心感をおくる
統合失調症の患者さんは、今までに体験したことのない不安な状態におかれています。「だれかが自分をつけ狙っている」と感じる妄想があったりすると、不安な気持ちはよけいに強くなり、閉じこもりがちになってしまいます。ですから、ご家族の方は「あなたの味方だよ」という安心感を送ってあげることが大切です。たとえば、患者さんがいろいろ話す内容を否定せずにじっくりと聞いてあげてください。いろいろと口をさしはさみたくなるようなことであっても、「うんうん」「へえ」「そうなの」とあいづちをうちながら話に聞き入ることが相手の気持ちを受け止める第一歩になります。
★だれかに相談する
統合失調症という病気はありふれた病気ではありますが、他人には知られたくない病気です。そうしたこともあり、ご家族の方はどうしても問題を自分だけで抱え込んでしまいます。そして、ご家族まで精神的に疲れ果ててしまう、という状態になってしまいがちです。そうした状態になると患者さんも「自分の病気のせいで家族が疲れている」と自分を責め、よけいに病状が悪くなってしまいかねません。
ですから、困っていることをだれかに相談することはとても大切なことです。 5頁に書いてあるところに勇気を持って相談されてはいかがでしょうか。また、家族会に行くと、同じ悩みをもったご家族がいますので、自分の苦しい気持ちを遠慮なく話すことができ、不安な気持ちが徐々に楽になってきます。
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