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市の事業の受託をきっかけに飛躍
 こうしてスタートした同会だったが、設立後3年間は試行錯誤の連続だったという。
 「発足時は、事務所もスタッフも、さらには資金の用意もなしの、ナイナイ尽くし。幸い、市議時代の同僚の好意で事務所の一角を使わせてもらって活動を開始することができましたが、自立のメドが立ち、現在の事務所に拠点を構えることができるまでには、1年半近くかかりました。また、この間にはシステムの抜本的見直しもした。当初は、市場経済原理で、時間外・日曜日及び休日の割増料金をいただいていたのですが、ボランティア活動には馴染まないということで利用料金を一本化。サービスチケット制を導入したりもしました」
 これらの改革によって、会の運営は徐々にスムーズにいくようになってきたが、肝心の会員数は、発足から4年経った時点でも、ようやく100名を超えた程度。
 「特にPRもしませんでしたし、私自身、儲けるためにやっているわけではないので、マイペースでいい。そう思っていました。しかし今振り返ってみれば、マイペースというのは所詮は自己満足。それでは会の活動は成り立たないものだという反省もあります」
 そんな停滞気味の活動に変化が訪れたのは、98年秋。北九州市より、ホームヘルプモデル事業への参加呼びかけがあり、それに応じたことがきっかけとなった。
 「この事業を受託したことによって、資格を持ったヘルパーなど、口コミでいい人材が集まるようになってきましたし、収益も大幅にアップ。それとともに会の信用も高まり、それがいい形で介護保険事業参入に向けての準備につながっていったことは、この上なく幸運でした」
 その結果、介護保険制度が始まるとともに仕事が一気に押し寄せ、当初40名が採算べースと考えていたところが、倍以上の84名ものニーズを獲得。また、それに比例して会員数も伸びていき、現在は320名強となった。
 「堀田理事長は、介護保険のサービスと助け合い活動は車の両輪といわれましたが、まさしくその通り。介護保険サービスを通じて当会の存在を知った人たちが、逆に介護保険の枠外サービスの重要性を認識し、助け合い活動の輪を広げるための新たな担い手となってくれました。また、介護保険事業にかかわることによって得られた収益を助け合い活動の運営資金に回すことで、マネジメントを充実して、活動のさらなる展開を図ることも可能に。これまでに入会金の引き下げや送迎サービス車両の新たな購入(2台)などを実施しましたが、いまや計4台の送迎車はフル回転。リタイア組の男性ドライバーが大いに活躍してくれています」
 
2000年に行った映画「ホーム・スイートホーム」の集い
 
「地域の皆さんに温かい笑顔と真心をお届けします・・・」
人材の育成と介護予防対策が今後の課題
 介護保険制度が実施されて早2年半。「これまでは介護保険事業を軌道に乗せることで手一杯だった」という永田さんだが、ようやく体制も整ったことから、今後は原点に戻り、NPOの使命を積極的に啓発していきたいとの抱負を語る。
 「今、当会には常勤スタッフが8名いますが、ほとんどが介護保険事業参入後に入ってきた人たちで、助け合い活動の経験がありません。また、介護保険サービスの担い手であるヘルパーの多くも同様です。そういう人たちに対して、会の理念を浸透させることで“車の両輪”といえるサービスを推進し、サービスの全体の質を上げていきたいと考えています」
 そのために、自己評価・第三者評価を実施して組織や活動の見直し・改善を図るとともに、研修体制を強化して人材を育てていく方針とのこと。
 「また現在、65歳以上の高齢者の2割の人が、1か月以上も家から出ない“引きこもり”の状態にあるといわれています。そのため、食事の水準が悪くなる、運動不足のために体調を崩すといった人たちが多くみられます。従って、こうした現状を改善するためにも今後は家事や介護だけにとらわれず、心の交流や趣味などを通じて、人間的なふれあいを共有できるようなサービスを提供するなど、介護予防対策にも力を入れていきたい。こうした枠外の活動はまさしく、NPO団体が果たすべき役割の分野でしょうからね。いずれにしても、本当の意味での力量と真価を問われるのはこれからでしょうから、この地域で選ばれ、かつ期待される団体になりたいと思っています」
 新しいふれあい社会づくりに向けて努力を続ける同会の今後がますます楽しみだ。
 
会の車での送り迎えにも手と手をつなぐぬくもりが・・・
 
 福岡県北九州市に本拠地を置く「ふれあい福祉北九州」は、高齢者と障害者のための市民互助による草の根団体として、新しい「ふれあい社会」をつくることを目指して設立。介護保険制度開始以降は、従来の活動に加えてNPO団体として介護サービス事業にもかかわり、助け合い活動と介護保険サービスを車の両輪として、高齢者と障害者を「安心」と「楽しみ」で支えていくことを目的に活動を行っている。活動エリアは小倉南区・小倉北区・門司区。主な事業内容は、(1)在宅福祉サービス、(2)送迎・移送サービス。(3)介護保険の訪問介護事業、(4)受託事業など。助け合い活動のサービスを利用するには会員になることが必要で、会費は、正会員(法人上の社員で活動に参加する個人。総会議決権を持つ)入会金5000円、年会費3000円。本会員(活動に参加する個人又は利用する個人)入会金5000円(協力)または3000円(利用)。需給会員(正会員または本会員の家族などで利用する個人)は年会費3000円。サービスの決済はチケット制(1冊100点セット・1点150円)で、1時間に付き6点(900円)を支払うシステム(交通費は別途)。活動に対する謝礼金は受け取ったチケットの8割で、1時間に付き720円(180円は事務手数料)。(→連絡先は最終頁
 
1994年
2月
準備委員会を発足
 
8月
会員募集を開始
 
10月
在宅福祉サービス市民互助型団体「ふれあい福祉北九州」設立総会
1999年
4月
北九州住民参加型ホームヘルプサービスモデル事業の業務を受託
 
5月
NPO法人ふれあい福祉北九州設立
 
10月
介護保険の指定居宅サービス事業者、指定居宅介護支援事業者の指定を受ける
 
11月
北九州市ホームヘルプサービス事業の業務を受託
2000年
4月
北九州市在宅高齢者生活援助事業を受託
2001年
11月
設立7周年記念総会開催
 
 







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