日本財団 図書館


・ 海運が目標とされている44%の分担率を達成した場合には約4%のエネルギー消貴量が削減可能と推測される。
・ しかし、1990年以降内航海運の分担率は減少しており、今後、モーダルシフトの推進により分担率向上を行う必要がある。
・ また、海運分野においても輸送エネルギー効率の改善が必要である。
 
 前章でまず示したように、モーダルシフトの推進は運輸部門全体としてのCO2排出量の削減に大きく寄与することは間違いがない。内航海運が貨物輸送全体に占める分担率は41%(1999年)であるのに対し、エネルギー消費量は8.4%と計算されており、環境にやさしい輸送機関であることは明らかである。つまり、海運分野のみで温暖化防止の対策を講じるよりも運輸部門全体で最適化を図ることが最も効果的である。例えば、先に示したように、海運分担率44%(3ポイント上昇)が達成できた場合には、運輸部門全体で約4%のエネルギー消費量が削減可能と推測される。
 しかしながら、モーダルシフトが順調に進んでいるか、という点については疑問もある。1.1.2章で検討したように、分担率で44%を目標としているものの、実際には1990年以降の海運の分担率は減少してきており、1999年では41%に陥っている。また、雑貨貨物の輸送量自体もそれほど増加していないようである。
 したがって、運輸部門における温暖化防止対策としてまず重要な方策はモーダルシフトのより積極的な推進を図ることであり、そのための政策的な誘導策を積極的に推進することであると考えられる。
 なお、モーダルシフトが進展しない原因の分析及びこれを解決するための方策については1.2章において検討を行うこととする。
 
 一方、海運分野自体においても、輸送エネルギー効率の改善に向けた努力が必要である。最近の傾向として、内航海運全体の輸送エネルギー効率は悪化傾向(1999年/1990年比で約8%の悪化)にある(表1.1-13)。その原因として、1.1.2での検討のように[1]モーダルシフト貨物が在来貨物と比較して高速で運航されるRORO船やフェリーで輸送されることと、[2]在来貨物船についても運航速力の上昇に伴い輸送エネルギー効率が悪化していることが考えられる。
 そこで、内航海運における今後の輸送エネルギー効率の推移がCO2排出量に与える影響について、先に示した環境省予測値をベースに検討した。
 表1.1-13は、輸送エネルギー効率が過去10年間のトレンドに従って悪化すると想定したケースである。この場合、速力増加傾向が一段落し、現在の輸送エネルギー効率の悪化傾向に、将来歯どめがかかる可能性も充分考えられるが、最悪のシナリオとして、2020年における輸送エネルギー効率は、過去10年の直線近似から1990年比で16%程度悪化すると想定した。なお、輸送量の変化は環境省予測値の「固定ケース」(総輸送量はGNPに比例して増加し、モーダルシフトは従来ペースのまま)を用いた。このケースでは、2010年のCO2排出量は1990年比で9%増加、2020年においては13%増加すると推測された。
 一方、表1.1-14は内航海運総連合会の自主目標(2010年までに輸送エネルギー効率を1990年比で3%減とする)が達成できると想定した場合のCO2排出量を示したものである。2010年の時点で内航海運からのCO2発生量は1990年比で6%減となり、この方策のみでCO2の排出削減目標が達成できるものとされた。
 
 これらの数字から認められるように、モーダルシフトの推進とともに、スーパーエコシップの導入や経済速力による運航等の方策により、内航海運の輸送エネルギー効率をさらに向上するための努力を怠らないことも、運輸部門における温室効果ガス削減のための重要な方策であると考えられる。
表1.1-13 輸送エネルギー効率の悪化(2010年で9%:1990年比)を想定した場合の内航海運貨物輸送に伴う温室効果ガス排出量の予測
(拡大画面: 86 KB)
z1030_01b.jpg
(輸送量は環境省予測値「固定ケース」(表1.1-2)に準じた)
表1.1-14 輸送エネルギー効率の向上(2010年で3%:1990年比)を想定した場合の内航海運貨物輸送に伴う温室効果ガス排出量の予測
(拡大画面: 84 KB)
z1030_02b.jpg
(輸送量は環境省予測値「固定ケース」(表1.1-2)に準じた)








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION