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・運輸部門全体にとって排出削減の重要な施策のひとつと考えられるモーダルシフトについて複数の視点から解析した。
・2種類の統計値からモーダルシフトの進展状況を推測した。両者の示すところは異なるものであったが、いずれにしろ今後ともモーダルシフトの推進に積極的に取り組むことが運輸部門からの温室効果ガスの削減にとって非常に重要であると考えられた。
 
 モーダルシフトとは、「主として、幹線貨物輸送をトラックから省エネ・低公害の大量輸送機関である鉄道または海運へ転換し、鉄道・海運とその末端のトラック輸送を機動的に組み合わせた輸送を推進すること」であり、1990年12月の運輸政策審議会答申において労働力不足問題への対応方策として提言され、広く認識されるようになった。
 最近では、1997年4月に閣議決定された「総合物流施策大綱」において、マルチモーダル施策を通じた複合一貫輸送の推進が提言されたほか、地球温暖化対策推進大綱(1998年6月、2002年3月改訂)や運輸省物流施策アクションプログラム(1998年9月)でも、鉄道・海運の利用促進が提言されている。さらに、2002年3月19日に改訂された「地球温暖化対策推進大綱」においても追加対策として「内航海運の輸送分担率の向上」が掲げられており、モーダルシフトの推進を地球温暖化防止のための重要な対策の一つにあげている。
 貨物輸送機関ごとのCO2排出量原単位は、図1.1-1に示すとおりである。同じ荷物を運搬する場合には、陸上の営業用普通トラックと比較した場合、バラ積み荷物が多く含まれる内航海運で約1/5、シャーシとコンテナ部分を同時に運ぶフェリーにおいても約1/4程度にCO2排出量が削減できることになる。もちろん実際の輸送形態の中では、船舶輸送の前後に戸口への陸上輸送があり、そのための積み替えのエネルギーが発生するが、CO2排出による環境負荷という観点から論じれば、船舶輸送に優位性があることには間違いがない。
 このように地球温暖化防止の観点から重要な施策の一つと考えられるモーダルシフトについて、以下に詳細な検討を行う。
図1.1-1 輸送量当たりの二酸化炭素排出量の貨物輸送機関ごとの比較2
平成11年版 日本海運の現況より作成
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2 日本海運の現況に記載のg-C/トンキロの数値をg-CO2/トンキロに換算した。
 
 
(1)モーダルシフトの定義
 前記に示すように、広い意味ではモーダルシフトはあらゆる貨物を対象にしているが、トラック輸送との乗り換えの利便性を考えて、内航貨物輸送のうちRORO船、内航コンテナ船又はフェリーによる輸送への転換を「モーダルシフト」と定義している例が多い。
 国土交通省が貨物流動地域調査等のデータを基にモーダルシフト化率を計算したものが平成12年度温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会報告書に公表されている(図1.1-2)。この公表値におけるモーダルシフトの定義は「500km以上の雑貨貨物の輸送量(トンベース)に占める鉄道、フェリー、内航海運の3部門が占める割合」とされている。
 また、内航海運暫定措置事業3では500kmを超える輸送距離をもつRORO船またはコンテナ船を「モーダルシフト船」として扱っている4
3 モーダルシフトおよび内航海運業界の活性化を推進する観点で、平成10年5月に従来の船腹調整事業に代わって導入された事業で、引当資格(船舶建造資格)の保有の有無に関わらず、一定の納付金(建造等納付金)を日本内航海運組合総連合会に支払うことにより船舶を建造できる制度。
4 [1]500kmを超えるモーダルシフトが可能な航路に就航する1万対象トン以上のランプウエイ設備を有するRORO船及び6千対象トン以上のセルガイド設備を有するコンテナ専用船で、コンテナ・車輌・シャーシーを輸送するもの。(原則として50%以上が陸上より海上へ転移するコンテナ・車輌・シャーシーを輸送するもの。)
[2]前項[1]以外のランプウエイ設備を有するRORO船又はセルガイド設備を有するコンテナ専用船であって、特にモーダルシフトを促進すると理事会が認めたもの。
[3]寄港地は起点・終点を含め4港までに限定。
 
 
(2)モーダルシフトの実態把握等における問題点
 モーダルシフトは地球温暖化防止のための重要な施策として位置づけられているが、具体的な目標の設定やアクションプランの策定の際に、[1]モーダルシフトはこれまでにどの程度進展し、今後どの程度の進展が見込めるのか、[2]モーダルシフトにより運輸分野及び海運分野の輸送エネルギー効率及び輸送エネルギー消費量はどう変わるのか、について的確に評価を行っておく必要がある。
 モーダルシフトの実態把握のために、まず鉄道、フェリーおよび内航海運でそれぞれ輸送されている貨物量を推定する必要がある。また、内航海運による貨物輸送量のうち、モーダルシフトの主たる担い手であるRORO船およびコンテナ船(以下、これら2種の船舶を「モーダルシフト船」と呼ぶ)の輸送量とそれ以外の輸送量を区分して把握することが必要になる。
 また、モーダルシフトで用いられる船舶はいわゆるバラ積み船に比較して高速で運航されるRORO船、コンテナ船及びフェリーが主体であり、かつ荷物はシャーシ単位で積載されることから、一般にバラ積み船と比べて輸送エネルギー効率が悪い。したがって、モーダルシフトの推進は海運分野のみでみれば輸送エネルギー効率の悪化を招くため、その悪化分をほかの要素と区分して評価することが的確な将来予測及びこれに基づく対策の検討のうえで重要になる。
 しかしながら、これらを評価するために必要な統計値5が十分整備されていないため、ここでは次記に示すように種々の仮定を置き、複数の方法によりモーダルシフトの進展の状況を推測した。
5 法令上「内航海運」と「フェリー(自動車航走)」は別の体系(前者は内航海運業法の、後者は海上運送法の適用を受ける)に属しており、輸送量などの統計値についても前者は内航船舶輸送統計年報、後者は自動車輸送統計年報のうち自動車航走扱いとして計上されているため、内航フェリーによる貨物輸送量とフェリー以外の船舶による貨物輸送量は別途の統計値から求める必要がある。同時に、内航フェリーの輸送量については、輸送台数をベースにカウントされているため、トンキロベースの輸送量に換算する過程が必要となる。
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 数字は1998年度を除いて図からの読み取り
注1:運輸省(現在は国土交通省)運輸政策局貨物流通企画課調べ
注2:モーダルシフト化率:輸送距離500km以上の雑貨輸送量(産業基礎物資(鉄道では車扱貨物)を除く、トン数べース)のうち、海運(フェリーを含む)または鉄道により運ばれている輸送量の割合
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出典:平成12年度温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会報告書(平成13年3月)








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