日本財団 図書館


3) 表3−5は、1)で述べた調査において、およそ200人のスケッチの中から、関東三県(千葉・神奈川・茨木)の海浜を実体験することによって心象風景が形成されたとした54人(35海浜)のスケッチを対象として、その描写内容と現地の景観構成との一致(表中●印)・乖離状況(表中○印)を示したものである。これより、スケッチの描写内容と現地の状況が一致した自然景観要素のうち、出現率5割と高かったものは「離れ岩」「汀線」「砂浜」「囲繞水域」「島」などであり、いずれも古来より愛でられた自然景観要素(表3−4)であることがわかった。さらにこれらにはスケッチに描写されやすい規模・形態があることが判明し、「汀線」「囲繞水域」においては汀線の曲率50度を超えること、「島」は水平見込角10度以上50度未満、垂直見込角2度以上を満たさねばならないことが明らかになった。
 また、現地に存在する要素でありながらもスケッチの出現率が2割にも満たない意識されにくい自然景観要素は、「松林」「日和山」「背山」「離れ松」「潮見坂」などであり、「背山」はその稜線が、「潮見坂」「日和山」はそこから海への眺望が、それぞれ建築物によって分断されていたり、「松林」「離れ松」においてはそれへの見通しが護岸や車道によって阻害されてしまったことが要因であることが捉えられた。
 これらより、自然海浜の心象風景を形成させやすい自然景観要素の規模・形状があり、また海浜の心象風景への阻害要因として海岸防護施設・防災関連施設の配置の悪さが明らかになったことから、海岸防護施設・防災関連施設の整備においては、上述したような自然海浜の景観要素の規模・形状を担保するような配置が望まれる。
表3−5 心象風景の出現要素と現地海浜との一致・乖離状況*3   【単位:%】
(拡大画面: 333 KB)
z0001_091.jpg
 
《参考文献》
*1 三溝裕之・横内憲久・桜井慎一・岡田智秀・喜多川智一、「海浜の原風景の変容に関する研究−古来より讃えられた海浜の原風景と大学生の原風景との比較を通じて−」、土木学会土木計画学研究・論文集No.15、pp.393〜401、1998
*2 青山俊之、「海岸行政の変遷と法改正による新たな方向」、沿岸域・第12巻1号、pp.28〜33、日本沿岸域学会、1999 
*3 三溝裕之・横内憲久・桜井慎一・岡田智秀「海浜空間の景観デザインに関する研究―古来より讃えられた海浜と大学生の心象風景を対象として」、土木学会土木計画研究・論文集No.15、1998
 








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION