日本財団 図書館


1. 水産資源の総合管理と漁業制度の関係
 水産資源は自己増殖する資源である。それ故、各資源の再生産力を上回らない範囲での利用を継続すれば、永続的にその利用が可能な資源であり、そのような持続的利用を可能にする資源管理の全体像を「水産資源の総合管理」と呼ぶこととする1
 このような総合管理を行うためには、一方で、各資源の生物的特性についての科学的な知見の蓄積によって、資源ごとの最大持続生産量(MSY)を把握することが必要となり、他方で、資源の種類ごとに、個別的に、独立した事業主体である漁民によって行われる漁獲行為を、総量として当該資源のMSYの範囲内に収める制度が必要となる。また、他方で、消費者の嗜好の変化や漁業資源の自然的要因による漁獲高の変化等により、市場の需要が変化することにより、魚価が変化し、それが漁業経営主体の経営に影響を与える。漁業経営を事業として継続させなければ、漁業資源の安定的供給は行われない。さまざまな漁業資源の人為的な増養殖は、漁業経営の安定や資源の安定的供給に大きな役割を果たすが、生態系の変化を含めた海洋環境等に大きな負荷を与える。このような活動は、他の漁業活動に対しても影響を与える可能性を持つために、その調整が必要となる。このための制度も総合管理の重要な一環をなすといえる。
 このような総合管理を可能にするためには、[1]漁具・漁法の制限、[2]漁獲努力量の削減2、[3]漁獲サイズの規制、[4]漁期、漁場の規制、[5]漁獲量の規制が必要となる。これらの規制制度がいわゆる漁業制度である。
 今日に至るまでのわが国の漁業制度の構築は、江戸時代以来の慣習法的な権利を近代国家の法制度として合理的に再編制することの試みと失敗の歴史であった。そのような過去の経緯は、今日の制度にも大きな影響を与えている。現行制度の理解を助け、その問題点を分析するのに必要な限度で、まず、歴史的な制度の展開を簡単に整理しておく。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION