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参考-5:OSPAR 条約
GL技術的附属書I
GL10.6〜7項
(OSPAR 条約GLにおける物理的特性把握項目⇔ロンドン条約議定書WAG4.1項)
・粒度組成、固相の割合(乾燥%)、密度/比重、有機物量(TOC)
・有効利用の場合は調査可能な範囲で工学的特性を把握しておくべし。(例:浸透率、沈降特性、可塑性、鉱物分等)
(OSPAR 条約GL10.6〜7項⇔対応箇所なし)
・浚渫物の投棄による影響の性質の認識とその緩和方法に関する記述:「(いくら汚染物質の濃度が下限値以下でも)浚渫物の投棄は必ず何らかの影響を与えるものである」との認識を記述している。
 (10.6項)
 ・すべての浚渫物は、投棄の時点に、著しい物理的影響を与えることになる。
 ・この影響には、海底の覆土、局所的な懸濁物質の増加等も含まれる。
 ・物理的影響は、特に微細粒子などが波、潮汐活動、恒流等の作用により輸送された結果として間接的に及ぶ場合もある
 (10.7項)
 ・物理的影響の結果として引き起こされる生物学的帰結(影響)には、投棄地点における底生生物の窒息が含まれる。
 ・比較的特殊な環境下においては、物理的影響は、魚の回遊や甲殻類にも及ぶことがある(例:河口域における高レベル濁度によるサケ類への影響、沿岸域のカニ類の回遊路の閉塞)。
参考-6:OSPAR 条約
GL技術的附属書I
(OSPAR 条約GLにおける化学的特性把握項目⇔ロンドン条約議定書WAG4.3〜4.6項)
・全案件について分析が必要とされる金属、有機/有機金属化合物は以下のとおり。
 (1)重金属:カドミウム、銅、水銀、亜鉛、クロム、鉛、ニッケル
 (2)有機/有機金属化合物:PCBコンジェナー(IUPAC No. 28, 52, 101, 118, 138, 153及び180)、多環芳香族炭化水素(PAH)類、TBT化合物及びその分解生成物
*有機/有機金属化合物調査については適用除外あり。
 a)それ以前の調査において汚染物質が周辺に存在しないとの十分な情報がある場合、または
 b)過去に周辺の(点・面の)著しい汚染源が知られていない場合、粒度組成が概ね粗い粒子で構成されていた場合、かつTOCが低い場合
*PCB調査を実施する場合は結果をOSPAR事務局まで報告のこと。
 (3)地域の汚染源情報や過去の汚染の流入状況により、以下の項目について調査を要する場合もある:ヒ素、その他の塩化ビニル類、有機塩素系農薬、有機リン系農薬、その他の有機スズ化合物、石油炭化水素、PCDD類/PCDF類、その他の防汚剤(注:船底に塗布する塗料など)
・特性把握項目の選定にあたっては、OSPARやEUにより公表されている化学物質の優先リスト(優先的に対処すべき化学物質のリスト、緊急性の順に列挙)を参考にすべし。
参考-7:ECの「水管理枠組みの指令」に係る優先化学物質  ECでは、2000年7月において「水管理枠組みの指令(Water Framework Directive, 2000/60/EC)」(仮称)に基づき32の化学物質を優先的に除去すべきものとして指定。現在指定物質に関して2003年を目安として見直し中。水環境に関する指令であるが海底堆積物(浚渫土砂)にも関係してくる。
指定物質は以下のとおり:
(1)Alachlor[除草剤] (17)ヘキサクロロシクロヘキサン*
(2)アントラセン** (18)イソプロツロン[殺虫剤]
(3)アトラジン[除草剤]** (19)鉛及びその化合物**
(4)ベンゼン (20)水銀及びその化合物*
(5)臭化ジフェニルエーテル* (21)ナフタレン**
(6)カドミウム及びその化合物* (22)ニッケル及びその化合物
(7)C10-13-クロロアルカン類* (23)ノニルフェノール類*
(8)Chlorofenvinphos[殺虫剤] (24)オクチルフェノール類**
(9)Chlorpyriphos[殺虫剤]** (25)ペンタクロロベンゼン*
(10)1,2-ジクロロエタン (26)ペンタクロロフェノール**
(11)ジクロロメタン (27)PAH類*
(12)ジフタレート(DEHP)** (28)シマジン[除草剤]
(13)ジウロン[除草剤] (29)TBT化合物*
(14)エンドサルファン[殺虫剤]** (30)トリクロロベンゼン類**
(15)ヘキサクロロベンゼン* (31)トリクロロメタン(クロロホルム)
(16)ヘキサクロロブタジエン* (32)トリフルラリン[農薬]**
(*…有害物質の優先度が高い物質、**…検討中)
[出典5]
参考-8:オランダの基準項目 (オランダの基準項目:過去のデータ見直しと新基準(提案中))
 オランダの現行及び提案中の汚染浚渫土砂判定基準は別表-1のとおり。
 バイオアッセイについては、試験の結果、4種のバイオアッセイがルーチンワークに適するとされた(参考-1も参照)。
(1)Microtox 固相テスト…30分間のバイオアッセイ、供試生物はバクテリア Vibrio fischeri
(2)堆積物を用いたバイオアッセイ…10日間、供試生物は端脚類の一種 Corophium volutator
(3)堆積物を用いたバイオアッセイ…14日間、供試生物はウニ Echinocardium cordatum
(4)DRE Calux テスト…ダイオキシン検出用の培養細胞を用いたバイオアッセイ
別表−1 オランダの沿岸域における海洋投棄を前提とした浚渫物の判定基準
No 項目 単位 グループ 現行基準 1) 提案中の
基準値 2)
化学試験
1 アルドリン μg/kg dw OCP 30  
2 リンデン μg/kg dw OCP 20  
3 ディルドリン μg/kg dw OCP 30  
4 エンドリン μg/kg dw OCP 30  
5 ヘキサクロロベンゼン μg/kg dw OCP 20 20
6 DDT 合計 μg/kg dw OCP 20 20
7 鉱油 C10-40(GC) mg/kg dw 1250 1250
8 TBT μg/kg dw 有機金属   100
9 アセナフテン mg/kg dw PAH    
10 アセナフチレン mg/kg dw PAH    
11 アントラセン mg/kg dw PAH 0.8  
12 ベンゾ(a)アントラセン mg/kg dw PAH 0.8  
13 ベンゾ(a)ピレン mg/kg dw PAH 0.8  
14 ベンゾ(b)フルオランセン mg/kg dw PAH    
15 ベンゾ(ghi)ペリエン mg/kg dw PAH 0.8  
16 ベンゾ(k)フルオランセン mg/kg dw PAH 0.8  
17 クリセン mg/kg dw PAH 0.8  
18 ジベンゾ(a,h)アントラセン mg/kg dw PAH    
19 フェナントレン mg/kg dw PAH 0.8  
20 フルオレン mg/kg dw PAH    
21 フルオランテン mg/kg dw PAH 2  
22 インデノ(1,2,3cd)ピレン mg/kg dw PAH 0.8  
23 ナフタレン mg/kg dw PAH 0.8  
24 ピレン mg/kg dw PAH    
25 PAH 類 13種 mg/kg OC PAH    
26 PCB 101 μg/kg dw PCB 30 290
27 PCB 118 μg/kg dw PCB 30  
28 PCB 138 μg/kg dw PCB 30  
29 PCB 153 μg/kg dw PCB 30  
30 PCB 180 μg/kg dw PCB 30  
31 PCB 28 μg/kg dw PCB 30  
32 PCB 52 μg/kg dw PCB 30  
33 PCB 類7種 μg/kg dw PCB   100
34 ヒ素 mg/kg dw 重金属 29 29
35 カドミウム mg/kg dw 重金属 4 4
36 クロム mg/kg dw 重金属 120 120
37 mg/kg dw 重金属 60 60
38 水銀 mg/kg dw 重金属 1.2 1.2
39 ニッケル mg/kg dw 重金属 45 45
40 mg/kg dw 重金属 110 110
41 亜鉛 mg/kg dw 重金属 365 365
        32 14
生物試験
A 端脚類 - C.volutator 3) 致死率(%) バイオアッセイ   35
B バクテリア − V.fisheri 4) 1/EC50(%) バイオアッセイ   100
C ダイオキシン様反応(Dioxinlike respons) − DR-CALUX 5) ng TEQ/kg dw バイオアッセイ   50
D ウニ − E.cordatum 6) 致死率(%) バイオアッセイ   Pm

注:1)現行基準。濃度は標準堆積物(有機炭素5%及び粘土25%を含む土質)に標準化してある。
 2)提案中の新基準。濃度は標準化していない。
 3)10日間の堆積物そのもの(whole sediment)に対するバイオアッセイ、供試生物は端脚類 Corophium volutator
 4)MICROTOX固相、20分間の生物発光バイオアッセイ、供試生物はバクテリアVibrio fisheri。 EC50S(半数影響濃度S(固相))はサンプル中の微粒子堆積物区分に合わせて補正される。
 5)特定の培養細胞系を使用したアッセイ。ダイオキシン様の反応を起こす物質を検出。
 6)14日間の堆積物そのものに対して行うバイオアッセイ、供試生物はウニEchinocardium cordatum。
[出典1]
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参考-9:POPs に関するストックホルム条約 「POPs(残留性有機汚染物質)に関するストックホルム条約」の概要と規制物質は以下のとおり。
1.目的:リオ宣言第15原則に掲げられた予防的アプローチに留意し、残留性有機汚染物質に対して、人の健康の保護及び環境の保全を図る。
2.主な対策手法:
(1)製造・使用の原則禁止…アルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、トキサフェン、PCB
(2)製造・使用の制限…DDT(マラリア対策用のみ対象外)
(3)非意図的生成物質の排出削減…ダイオキシン・ジベンゾフラン、ヘキサクロロベンゼン、PCB
(4)POPsを含む廃棄物・ストックパイルの適性処理(各国が実施計画を策定)
3.その他の措置:
(1)新規POPsの製造を予防するための措置を既存の規制・評価スキームに導入
(2)POPsの製造・使用の廃絶や排出の削減、代替物質に関する締約国間の情報交換
(3)POPsに関する情報の公開、教育等の実施、PRTR等による排出量・排気量の把握・公表等
(4)POPsによる影響の評価・排出抑制技術等の調査研究、モニタリングの推進等
(5)途上国に対する技術・資金援助の実施
4.条約の採択:平成13年5月22日採択
5.今後の予定:50カ国が締結した時点で条約発効。2004年までの発効を目指している。日本は未締結(準備中)。
 規制物質の追加提案を提出する締約国は、以下の選定基準に関連してその化学物質に関する情報、及び、関連する場合は変換製品を提供することとしている。
 a.残留性
  (i)化学物質の水中での半減期が2ヶ月以上である、あるいは土壌での半減期が6ヶ月以上である、あるいは底質での半減期が6ヶ月以上であるという証拠、または
  (ii)本条約の範囲において、十分に残留性が高いという証拠
 b.生物濃縮性
  (i)水生生物の生物濃縮係数(BCF)または生物蓄積係数(BAF)が5,000よりも大きい、またはそのようなデータがない場合はlog Kowが5よりも大きいという証拠(注:log Kow…オクタノール/水分配係数。その物質が油に溶けやすいか、水に溶けやすいかを表す。この値が高いほど油脂に親和性がある。水生生物における生物蓄積性当環境中での挙動を予測する上で有用。)
  (ii)化学物質が高い生物濃縮があるか、高い毒性や生態毒性があるか、など他に懸念される理由があるという証拠、または
  (iii)本条約の範囲において、生物相でのモニタリングデータにより、懸念されるに足る十分な生物濃縮性を有することが証明されること
 c.環境中での長距離移動の可能性
  (i)排出源から遠く離れた地点で測定された化学物質が懸念されるべき検出レベルにあること
  (ii)大気、水、渡り鳥などの渡り生物を通して、対象の環境中を移動する可能性を含めて、化学物質の長距離移動が認められることを示すモニタリングデータ、または
  (iii)化学物質が、排出源から遠く離れた時点で対象の環境へ移動する可能性を含めて、大気、水、渡り鳥などの渡り生物を通じて環境中を長距離移動した可能性があることを示す環境運命の特性、及び/またはモデル計算の結果。大気を中心に大きく移動する化学物質については、大気中での半減期が2日を超えるものとする。及び
 d.悪影響
  (i)本条約の範囲において、化学物質の検討を正当化する人の健康または環境への悪影響を示す証拠、または
  (ii)人の健康または環境への被害の可能性を示す毒性あるいは生態毒性のデータ。
参考-10:OSPAR 条約 GL技術的附属書I (OSPAR 条約GLにおける生物学的特性把握項目⇔ロンドン条約議定書WAG4.7〜4.9項)
・生物試験の意義:
 生物学的試験は、物理・化学的特性把握が不十分だった場合に行うべきというスタンスはロンドン条約議定書GLと同様だが、
 −物理的・化学的特性では生物への影響は直接的には判断できない」
 −GL及び附属書に示した特性把握項目が全ての物理的・化学的特性をあらわしているわけではない
と、現在の基準項目設定の限界について述べた記述もある。すなわち、生物学的特性把握は、未知の物質の生物への影響試験という捉え方がなされている。
・利用可能な生物試験のセット:
 具体的な生物学的特性把握のための試験セットについては、
 −対象とする問題の内容
 −浚渫土砂の汚染の度合
 −生物試験手法の開発の度合
等に左右されるとしている部分はロンドン条約議定書GLと同様。生物試験のセットを決定するため、海洋投棄の許可発給と関連した評価戦略(assessment strategy)を作成すべしとしている。
個別の生物試験に関する短いコメント…
以下の生物試験について、個別に短い記述あり。
 (1)毒性試験(バイオアッセイ)
  ・港湾における維持しゅんせつに先立つ堆積物のランキング及び分類には、短期間のバイオアッセイがスクリーニング手法として満足することが多いとしている。
  ・急性毒性試験は間隙水、溶出水または全堆積物を利用し、異なる供試生物を用いた2〜4種のバイオアッセイが奨励される(甲殻類、軟体動物、多毛類、棘皮動物等)。
  ・エンドポイントとしては、通常「生残率」が用いられる。慢性毒性試験の場合は亜致死的なエンドポイント(成長率、再生産率)が用いられ、これは供試生物のライフサイクルの大部分を見ることから、浚渫土砂の潜在的影響のより詳細な予測に利用できる。ただし、標準的な方法についてはまだ研究中である。
  *手引きとなる文献の記載あり−
  [バイオアッセイの供試生物、バイオアッセイの利用、データ解釈に関する手引き]
  USEPA/ACE (1991/94) , IADC・CEDA(1997)
  [バイオアッセイ用の浚渫物のサンプリングに関する手引き] ASTM(1994)
 (2)バイオマーカー…研究段階
 (3)マイクロコズム(微小生態系)における実験…研究段階
 (4)メソコズムにおける実験…提案段階。底魚を用いた長期試験など。
 (5)底生生物の現場観察…現場の状況把握の重要性、許可発給プロセスへのフィードバック機構の一因としての重要性、物理的撹乱及び化学的汚染関連の洞察の重要性等を強調。
  *手引きとなる文献の記載あり−OSPAR資料、ICES資料、HELCOM資料
  (注:ICES…[International Council for the Exploration of the Sea] 国際海洋探査委員会, HELCOM…[Helsinki Commission / Baltic Marine Environment Protection Commission] バルト海洋環境保護委員会(ヘルシンキ委員会))
 (6)その他の手法についても、適切な場合には、生物学的特性把握のために(例:生物蓄積あるいは着臭など)用いることができるとしている
参考-11:OSPAR 環境レポート ・OSPAR 条約加盟国間では生態毒性評価基準(Ecotoxicological Assessment Criteria, EAC)を作成し採択した(別表-2に示すとおり)。利用にあたっては、以下の注意点がある。
 −主に急性毒性に関する値である。
 −これらの値は、ある地域において生態毒性が懸念されるかどうか判定するのに用いられ、またどの物質を優先的にターゲットとすべきかを示すものである。現時点で入手可能なものとしては最適の値ではあるが、使用において限界があることは認識しておく必要がある。
 −様々な事項がまだ研究段階にあり、EAC以下の濃度が安全とは言い切れないが、一方で、EACを超える濃度では何らかの生物学的影響が起きるとは言える。
参考-12:OSPAR 条約加盟国の例 オランダ、ドイツ、ベルギー、ノルウェー、スペインについては含有量試験で実施。判定基準は別表-3のとおり。








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