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(技術側面に係る附属書:ロンドン条約ガイドラインにはなし)
OSPAR条約ガイドラインの記載内容
技術側面に係る附属書I
 浚渫物評価の特性分析要件
1. 本付録とOSPAR条約ガイドラインの関係
・ガイドライン5.4〜5.9項に示す要件に必要な分析上の配慮事項を記載
2. 浚渫物分析における階層的アプローチの必要性
・試験の階層的アプローチの奨励
・階層ごとに、更なる調査が必要かどうか意思決定を行うために十分な情報が提供されているか判定するべき。
3. 特性分析が免除される浚渫物、及び浚渫物を有効利用する場合
・階層的アプローチに先立ち、5.3項の適用除外の条件に照らし合わせることは可能。
・5.3項のいずれかに該当する浚渫物は詳細調査の適用外となる。
・浚渫物の全部あるいは一部を有効利用に用いる場合、通常は、その用途を決定するため、最低階層Iの物理的特性の把握は一部なりとも行うべき。
4. 特性分析の階層構造
・階層的評価は、物理的特性の評価→化学的特性の評価→生物学的特性及び影響の評価 の順に行う。
5. 各階層での試験に供する浚渫物及びその他のについて
・分析は2mm以下の堆積物(whole sediment)あるいは微粒子画分(区分)について行うべき。微粒子区分について行った場合は、後から適切な手段を用いて堆積物全体(whole sediment)に換算し、堆積物全体としての総負荷量を算定しておく。
・追加ガイドライン:「堆積物中の汚染物質に係るモニタリングガイドライン」(JAMP) サンプルの貯蔵・前処理、分析手法、分析品質保証等について記述
6. 試験結果の評価における留意点
・サンプリング地点の選択、サンプリング方法及びサンプル取扱いによるサンプルの物理的組成・化学的及び生物学的特性の変動が考えられる。データ評価の際はこれらの潜在的な影響に注意。
階層I:物理的特性
・ガイドライン5.3条(浚渫土量、投入率、目視での粒度判定)の追加情報として調査が奨励される項目は以下のとおり。
   粒度分布、固相の割合、密度/比重、有機成分(TOC)
・有効利用の場合は調査可能な範囲で工学的特性を把握しておくべし。(例:浸透率・沈降特性・可塑性、鉱物分等)
階層II:化学的特性
・全案件について分析が必要とされる金属、有機/有機金属化合物は以下のとおり
(1) 重金属…カドミウム、銅、水銀、亜鉛、クロム、鉛、ニッケル
(2) 有機/有機金属化合物…PCBコンジェナー(IUPAC No. 28, 52, 101, 118, 138, 153及び180)、多環芳香族炭化水素(PAH)類、TBT化合物及びその分解生成物
 *有機/有機金属化合物調査については適用除外あり。
 a) それ以前の調査において汚染物質が周辺に存在しないとの十分な情報がある場合、または
 b) 過去に周辺の(点・面の)著しい汚染源が知られていない場合、粒度組成が概ね粗い粒子で構成されていた場合、かつTOCが低い場合
 *PCB調査を実施する場合は結果をOSPAR事務局まで報告のこと。
(3) 地域の汚染源情報や過去の汚染の流入状況により、以下の項目について調査を要する場合もある…ヒ素、その他の塩化ビニル類、有機塩素系農薬、有機リン系農薬、その他の有機スズ化合物、石油炭化水素、PCDD類/PCDF類、その他の防汚剤(注:船底に塗布する塗料など)
・特性把握項目の選定にあたっては、OSPARやEUにより公表されている化学物質の優先リスト(優先的に対処すべき化学物質のリスト、緊急性の順に列挙)を参考にすべし。
・このほか、標準化についての短いコメントあり(技術的附属書II参照)。
・推奨される分析方法については「堆積物中の汚染物質に係るモニタリングガイドライン」(JAMP)の技術付録を参照のこと。
階層III:生物学的特性及び影響
・生物学的特性把握の必要性
 生物学的試験は、物理・化学的特性把握が不十分だった場合に行うべきというスタンスはロンドン条約議定書GLと同様だが、
 −物理的・化学的特性では生物への影響は直接的には判断できない
 −GL及び附属書に示した特性把握項目が全ての物理的・化学的特性をあらわしているわけではない
と、現在の基準項目設定の限界についても述べている。すなわち、生物学的特性把握は、未知の物質の生物への影響試験という捉え方がなされている。
・利用可能な生物試験のセット(この部分についてもロンドン条約議定書GLと同様):具体的な生物学的特性把握のための試験セットについては、以下の事項等に左右される
 −対象とする問題の内容
 −浚渫土砂の汚染の度合
 −生物試験手法の開発の度合
・生物試験のセットを決定するため、海洋投棄の許可発給と関連した評価戦略(assessment strategy)を作成すべし。
・個別の生物に関する調査結果のより高次の生物群集への適用・応用は依然として困難であり、対象とする(投棄)地点に通常出現する生物群集に関する深い知識を必要とする。
・個別の生物試験に関する短いコメント:
以下の生物試験について、個別に短い記述あり。
(1) 毒性試験(バイオアッセイ)
・港湾における維持しゅんせつに先立つ堆積物のランキング及び分類には、短期間のバイオアッセイがスクリーニング手法として満足することが多い。
・急性毒性試験は間隙水、溶出水または全堆積物を利用し、異なる供試生物を用いた2〜4種のバイオアッセイが奨励される(甲殻類、軟体動物、多毛類、棘皮動物等)
・エンドポイントとしては、通常「生残率」が用いられる。慢性毒性試験の場合は亜致死的なエンドポイント(成長率、再生産率)が用いられ、これは供試生物のライフサイクルの大部分を見ることから、浚渫土砂の潜在的影響のより詳細な予測に利用できる。ただし、標準的な方法についてはまだ研究中である。
*手引きとなる文献の記載あり−
 〔バイオアッセイの供試生物、バイオアッセイの利用、データ解釈に関する手引き〕
USEPA/ACE(1991/94), IADC・CEDA(1997)
 〔バイオアッセイ用の浚渫物のサンプリングに関する手引き〕ASTM(1994)
(2) バイオマーカー…研究段階
(3) マイクロコズム(微小生態系)における実験…研究段階
(4) メソコズムにおける実験…提案段階。底魚を用いた長期試験など
(5) 底生生物の現場観察…現場の状況把握の重要性、許可発給プロセスへのフィードバック機構の一因としての重要性、物理的撹乱及び化学的汚染関連の洞察の重要性等を強調。
 *手引きとなる文献の記載あり−OSPAR、ICES、HELCOM
(6) その他の手法についても、適切な場合には、生物学的特性把握のために(例:生物蓄積あるいは着臭など)用いることができる。
・追加的情報
 浚渫物の特性分析についての物理的特性把握項目、化学的特性把握項目、生物学的特性把握項目の個別の注意事項の後に、地域の状況に応じて、必要な場合には以下の情報も整理する
 −酸化還元電位、酸素要求量、全窒素、全リン、鉄、マンガン、その他の鉱物成分の情報、汚染物質のデータを標準するための指標元素(アルミニウム、リチウム、スカンジウム等)、投棄により起きたと考えられる化学的・物理的変化など。
(技術側面に係る附属書Iの参考文献一覧)
 
OSPAR条約ガイドラインの記載内容
技術側面に係る附属書II
汚染物質の空間的分布調査に係る標準化手法
1. 序文
2. サンプリング手法
3. 分析の手順
3.1 粒度の分別(粒度分析)
3.2 汚染物質の分析
4. 標準化手法
4.1 粒度分析の標準化
4.2 地球化学的組成分の標準化
4.3 データの解釈
5. 結論
(技術側面に係る附属書IIの参考文献)
表1 海底堆積物中の物理的・化学的調査項目に関する通常の分析手順
表2 標準化要素のまとめ
 
 
OSPAR条約ガイドラインの記載内容
技術側面に係る附属書III
BEP (Best Environmental Practice:最良環境指針(仮称))
序文
 
3.OSPAR条約の環境レポートの概要
 OSPAR条約では、「汚染の防止・減少のための全ての可能なステップを取ること、並びに、人間活動から生じる悪影響から海域を守るための必要策を講じることを義務付けており、これらの実施により、人の健康を守り、海洋生態系を保全し、さらに可能な場合には、悪影響の及んだ海域に環境修復を行う」ことを目的としている。この目的を達成するため、加盟国には海域の現状に関する(各国間の)ジョイント・アセスメント(影響評価)の定期的な実施・発表が要請されている。この影響評価には、これまでに実施された海洋汚染防止策の評価や、現状の問題、優先される防止策の検討等を含むべき、ともされている。
 1994年の閣議会議においては、条約の調印とともにアクションプランも発表され、北東大西洋地域全域の環境質に関する影響評価を2000年までに行う、との計画も含まれていた。これ以前には、このような広域にわたる環境レポートは作成されていなかった。このアクションプランを受け、北東大西洋地域は5分割され、環境影響評価・モニタリング委員会の調整により、各地域の環境レポートの作成が進められた。5地域の区分は以下のとおりである。
 地域I.北極海
 地域II.北海広域
 地域III.ケルト海(イギリス西部海域)
 地域IV.ビスケー湾及びイベリア半島沿岸
 地域V.大西洋広域
 
 環境レポートは、科学的に適切で、かつ環境影響評価計画及び科学的プログラム(モニタリング、調査及び影響評価ツールを用いたプログラム)に従って作成されるべきであり、また検討の結果は適切な品質保証を伴うべきであるともされた。これに続き、1995年には、影響評価・モニタリング合併プログラムが編成された(本プログラムの前身もあり、「モニタリングプログラム及びモニタリングマスタープランに係るジョイント北海タスクフォース委員会」と称される)。
 レポートは、2000年において、地域版(各1部:Regional Quality Status Report) に加えて総合版(1部:Quality Status Report 2000) が公表された。これらのレポートは、すなわち、2000年における北東大西洋の総合的環境影響評価の一部となっている。1998年のOSPAR閣僚会議においては、次期閣僚会議(2003年開催予定)において、本レポートが北東大西洋における問題を検出し、優先事項を決定するための基盤となるであろうとして、本レポートの果たす役割の重要性を強調していた。
 
 環境レポートの目次及び地域区分を以下に示す。各冊ほぼ100〜150ページ程度の量であり、目次は同構成となっている。
目次 概要
- (目次、執筆者名簿、要約) (詳細項目)
・目次
・執筆者名簿
・要約
1 序文 各レポートの説明
(詳細項目)
・目的及び対象範囲
・影響評価の手順
・読者への手引き
2 地形地質、水文条件、気候  地形地質・水文条件・気候の簡単な説明。これ以降の章における物理的、化学的、及び生物学的な詳細記述の前段部として位置付けられている。
(詳細項目)
・序文
・OSPAR地域の定義
・海底地形
・地質及び堆積物
・沿岸域、フィヨルド、リアス、湿地
・水文条件
・水塊
・循環及び輸送
・波及び潮汐
・固形物の輸送
・重点地域
・気象
・気候変動
3 人間活動  各地域において最も影響を及ぼしていると考えられている人間活動についての記載。
(詳細項目)
・序文
・人口
・環境保全
・観光及びレクリエーション
・漁業
・養殖業
・沿岸域保全及び土地造成
・土砂採取
・浚渫、投棄及び排出(排水)
・石油及びガス産業
・海運業及びその他の商業
・沿岸産業
・軍事活動
・陸起源の活動
・農業
・法規制及び将来的展開
4 化学的特性  北東大西洋の化学的特性に関する記載。汚染物質及び栄養分の流入、及び異なる媒体(大気・水・堆積物等)中のこれらの物質の濃度に焦点を当てている。
(詳細項目)
・序文
・汚染物質の流入
・評価基準
・バックグラウンド値/参照値及びフラックス
・重金属
・有機化合物
・複合的な化学物質の流
・炭化水素
・放射性物質
・栄養分及び酸素
・二酸化炭素
5 生物学的特性  北東大西洋の生物学的特性(各地域の生態系)に関する記載。自然特性に変化をもたらす要因、影響に焦点を当てている。
(詳細項目)
・序文
・生態系の概要
・人間活動の影響
6 全体評価  2〜5章の総合検証。現状の傾向、保全策の有効性、各地域の主要な環境悪化要因、及びこれらの問題に対処するための管理・科学的方策について記載。
(詳細項目)
・序文
・地域レベルでの人間活動の影響評価
・流域及び世界レベルでの人間活動の影響評価
・他のOSPAR地域との関連
・既存知見及び理解の限界(不足)
・地域Vの環境
・結論及び提言
付録 (記録種リスト、略語集、用語集、参考文献) (詳細項目)
・記載種リスト
・略語集
・用語集
・参考文献
注)詳細項目は地域ごとに若干異なることがある。
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出典:Quality Status Report 2000(OSPARインタ一ネットサイトより)
図2 OSPAR条約における環境レポートの地域区分








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