(3)「底質の評価に関する手引き(GIPME報告書)」について
GIPME(GLOBAL INVESTIGATION OF POLLUTION IN THE MARINE ENVIRONMENT)のワークショップにおいて、1999年10月に検討された結果に基づき、2000年に「底質の評価に関する手引き」(Guidance on Assessment of Sediment Quality)が公表された。GIPMEは国連環境計画(United Nations Environment Programme:UNEP)、ユネスコの政府間海洋委員会(
Intergovernmental Oceanographic Commission:IOC)および国際海事機関(International Maritime Organization:IMO)の支援を受けている。
本報告書は、「しゅんせつ物の個別評価ガイドライン」においては、底質管理に関する参考資料として位置付けられている(4章「しゅんせつ物の特性分析」の注釈にて言及)。IOCが2000年5月の科学者会合(LC/SG23)で紹介し、会合において支持された。
本報告書では、海洋堆積物への人為的影響、またそれに伴う海洋生物や人の健康へのリスクについて評価する各種手段を検討しており、最終的には、底質に係る数値的な基準は広範囲での適用に向いていない、というのは、現時点では、底質の毒性を確実に予測できる化学的測定手法はないから、との結論に達している。また、本報告書は、底質の評価のために厳しい枠組みを提供するのではなく、自然状態の堆積物、人為的に撹乱された(例えば汚染された)堆積物及び海洋に悪影響を及ぼす(すなわち汚染源となる)堆積物などの区別に利用できる経験的手法を確認するものである、としている。
(出典:国土交通省港湾局資料)
(注:本項では前項にあわせて「浚渫土砂」を「しゅんせつ物」、「底質」を「堆積物」としている。)
(GIPME報告書の構成)
要約
1.序文
2.手引作成の目的及び対象範囲
3.管理の枠組み
4.科学的背景
4.1 はじめに
4.2 物理的評価
4.3 化学的評価
4.4 生物学的評価
5.科学的評価
6.底質の評価に関する望ましい管理の取り組み方
付録
付録1 化学物質ごとに設定された数値的な底質の指針の限界
付録2 汚染地域を特定する評価の事例
付録3 参照推薦文献
付録4 報告書の準備作業に関わった専門家の名簿
1)報告の要約及び整理
以下に要約の仮訳を示す。(注:全文の原文と仮訳は資料編に示す。)
「底質の評価に関する手引き」の位置付けは表2-1に、手引きを基に作成した底質の初期スクリーニング及び初期評価の手順をフローに整理して図2-2に、その背景となる記述部分を表2-2に示した。
2)リスク評価
本報告では、リスク評価についても言及している。その部分に関する記載を整理し、
表2-3に示した。
3)現行の分析方法や数値基準についての課題
現行の分析方法や数値基準についての課題を整理し、
表2-4に示した。課題(一部、一般認識としての注釈も含む)としては、以下の項目が掲げられた。
・毒性予測に対する化学分析方法の単独使用について
・数値基準について
・無影響濃度の解釈について
・急性毒性試験について
・室内試験について
・溶出試験方法について
・現場観測の適用の限界
・現行の生物生存試験について
・堆積物の毒性評価のためにデザインされた調査方法の限界について(注:現行の毒性評価手法に対する批判というよりは一般的認識を述べたもの)
・暴露試験の経路・供試生物の選択について(注:一般認識)
・試験における間隙水の利用について
・暴露試験の経路の選択について(注:一般認識)
・堆積物評価の複雑性について
・科学的配慮に基づいた最も予備的な教義(注:現行の試験方法を踏まえて)
・毒性の評価について(初期スクリーニング及び初期評価の後の段階)