2.42.2 明確化の根拠
M.1371-1は、2種類の指定、つまりある値にある報告率の指定、を行っている。このことは、現在「指定モード」で運用している移動体に、自律的に割り当てられるスロットのための標準アクセス体系を用いることにより、必要なスロットを自律的に選択できるようにさせる。従って、AIS VDLへの影響は「軽い(soft)」と考えられるべきである。
M.1371-1は、また、スロットを指定する可能性を与えている。このことは、例えば、基地局が、スロット − 当該基地局がFATDMAにより前に割り当てていたものであり、他の移動局により使用されない可能性があるもの − を指定することにより、特定の移動体からの送信を保護したいと望む状況において、利点となり得る。従って、スロット指定は、「強い(hard)」指定メカニズムであると考えることができる。AISと二重チャンネル運用とのアクセス体系が洗練されていることの結果として、指定できる可能性がある値のみが存在している。これらの値は計算でき、スロット指定(強い)の場合については、上記の明確化において示されている。「軽い(soft)」指定では、ある値の報告率を直接指定する(等級A特別明確化事項2Kiel#0、第2.3項を参照)。他方、「強い」指定では、結果として得られる報告率を作り出すことになろう。移動体の実際に送信されスロットが割り当てられている位置報告の数は、時間間隔、例えば分間隔、によって分割されることができ、従って、一種の結果として得られる報告率に変換されることができるからである。
25というスロット指定値は、1秒当たり1回更新という率を超えている値の、結果として得られる指定更新率をもたらすことになると考えられる。これは、時間刻印の分解能がUTCの丸1秒だけしかないために、位置報告の受領者にあいまいさを生じさせることになると思われる。移動体が指定された運用における規定のモードへ復帰することを保証するために、上記に示してある数とは違っているスロットオフセット数を受信している場合でも規定の数へ復帰するための、一定のアルゴリズムが全ての移動体において使用されるべきである。この点は、スロットオフセットの規定値を増分パラメーター自体において符号化することにより、最も簡単に実施され得ると考えられる(上記を見ること)。記事:このことは、船舶に搭載される等級A移動体用AIS装置側についての追加試験を、過剰なものにすると思われる(事実、文書2Kiel-output#1(CDV-Comments)のリストには、そのような試験を要求する意見は、もはや含まれていない)。
運用上の見地からすると、船舶に搭載されている等級A移動体用AIS装置の報告率(スロット指定においては、結果として得られる報告率)は、指定モード運用に入っていない場合でも、M.1371・1の付属書1にある表1Aで述べてあるような、自律的に導き出される報告率より下に落ちるべきでない。この必要性は、船舶に搭載されている等級A移動体用AIS装置が指定命令を受ける時はいっでも、同時に2種類の処理過程を始めさせることになる(A1§4.2.1についての明確化の根拠を参照すること)。
2.42.3 修正の日付: 2001年10月
2.42.4 所見
この明確化は、移動局が影響を受けるという限りにおいて、船舶に搭載される等級A移動体用AIS局についての設計と試験とに、既に、取り込まれている。この明確化に対して今後変更を行う場合は、何れも、将来に遺る問題を作り出さないように配慮すべきである。
2.43 A2;§3.3.8.2.14 通報18: 等級B装置の標準位置報告
2.43.1 提案する明確化の文言
等級B装置の標準位置報告は、船舶に搭載されている等級B移動装置のみによって、通報1、2、3のに代わりに、定期的に及び自律的に出力されるべきである。報告間隔は、担当機関によって別途規定されている場合を除き、現在のSOG及び現在の航海状態フラグの設定状況に従って、表1Bで与えられている値をディフォルトとすべきである。
表31
パラメーター |
ビット数 |
解説 |
通報識別符号 |
6 |
通報18の識別符号。常に18。 |
反復表示記号 |
2 |
中継局によって使用され、通報が既に反復されている回数を示す。第4.6.1項参照;0-3、ディフォルト=0、3=これ以上反復しない。 |
ユーザー識別符号 |
30 |
MMSI番号 |
地域的または局地的な用途に予約済 |
8 |
地域または現地の担当機関によって定義が行なわれるように予約されている。どのような地域的または局地的な用途にも使用されていない場合は、ゼロに設定されるべきである。地域的な用途である場合は、ゼロを使用すべきではない。 |
SOG |
10 |
対地速度、1/10ノット刻み、(0-102.2ノット)
1023=データ入手不能。1022=102.2ノット以上 |
位置の精度 |
1 |
1=高精度(<10m;例えば、DGNSS受信機などのディファレンシャルモード)、0=低精度(>10m;例えば、GNSS受信機またはその他の電子測位装置などの自律的モード)、ディフォルト=0 |
経度 |
28 |
1/10000分単位における経度(±180度、東経=正値(2の補集合による)、西経=負値(2の補集合による)、181度(6791AC0hex)=データ入手不能=ディフォルト) |
緯度 |
27 |
1/10000分単位における緯度(±90度、北緯=正値(2の補集合による)、南緯=負値(2の補集合による)、91度(3412140hex)=データ入手不能=ディフォルト) |
COG |
12 |
対地針路、1/10度刻み(0-3599)、
3600(E10hex)=データ入手不能=ディフォルト、
3601-4095は使用されるべきではない。 |
真の船首方向 |
9 |
度(0-359)(511はデータが入手できないことを示す=ディフォルト) |
時間刻印 |
6 |
EPFSにより報告が作成された時のUTC秒、(0-59、または、
60=時間刻印が使用できない場合、これはディフォルト値にもされるべきである。または、
61=測位システムが 手動入力モードにある場合、または、
62=電子測位システムが推測(推測航法)モードで動作している場合、または、
63=測位システムが動作不能状態にある場合 |
地域的な用途のために予約済 |
4 |
地域の担当機関によって定義 が行なわれるように予約されている。地域的な用途に全然使用されていない場合は、ゼロに設定されるべきである。地域的な用途である場合は、ゼロを使用すべきではない。 |
予備 |
3 |
使用されていない。ゼロに設定されるべきである。 |
指定モードフラグ |
1 |
0=自立的で連続的なモードにおいて運用している局=デイフォルト
1=指定モードにおいて運用している局 |
RAIMフラグ |
1 |
電子測位装置のRAIM(受信機の自律的なインテグリティ監視)フラグ、0=RAIMは使用されていない=ディフォルト、1=RAIM使用中。 |
通信状態選択フラグ |
1 |
0=SOTDMAの通信状態が後に続く。
1=ITDMAの通信状態が後に続く。 |
通信状態 |
19 |
通信状態選択フラグが0に設定されている場合は、SOTDMAの通信状態(第3.3.7.2.2項参照)、または、通信状態選択フラグが1に設定されている場合は、ITDMAの通信状態(第3.3.7.2.3項参照) |
合計ビット数 |
168 |
1スロットを占有する。 |
2.43.2 明確化の根拠
1)MSBを、北/南フラグまたは西/東フラグと間違って解釈するという、誤解の可能性があった。
2)指定モードフラグは、局が指定モードに入ってしまっていることを表示するために必要とされた。
2.43.3 修正の日付: 2001年10月
2.43.4 所見
なし
2.44 A2;§3.3.8.2.15 通報19: 等級B装置の拡張位置報告
2.44.1提案する明確化の文言
この通報は、船舶に搭載されている等級B移動装置によって使用されるべきである。この通報は、ITDMA通信状態で通報18を使用することにより割り当てられるスロット2個において、6分毎に一回送信されるべきである。この通報は、以下のパラメーター − 船舶の寸法/位置の基準または電子測位装置の種別 − の値が変化した後、直ちに、送信されるべきである。
表32
パラメーター |
ビット数 |
解説 |
通報識別符号 |
6 |
通報19の識別符号。常に19。 |
反復表示記号 |
2 |
中継局によって使用され、通報が既に反復されている回数を示す。第4.6.1項参照、0-3、ディフォルト=0、3=これ以上反復しない。 |
ユーザー識別符号 |
30 |
MMSI番号 |
地域的または局地的な用途に予約済 |
8 |
地域または現地の担当機関によって定義が行なわれるように予約されている。どのような地域的または局地的な用途にも使用されていない場合は、ゼロに設定されるべきである。地域的な用途である場合は、ゼロを使用すべきではない。 |
SOG |
10 |
対地速度、1/10ノット刻み、(0-102.2ノット)
1023=データ入手不能。1022=102.2ノット以上 |
位置の精度 |
1 |
1=高精度(<10m;例えば、DGNSS受信機などのディファレンシャルモード)、0=低精度(>10m;例えば、GNSS受信機またはその他の電子測位装置などの自律的モード)、ディフォルト=0 |
経度 |
28 |
1/10000分単位における経度(±180度、東経=正値(2の補集合による)、西経=負値(2の補集合による)、181度(6791AC0hex)=データ入手不能=ディフォルト) |
緯度 |
27 |
1/10000分単位における緯度(±90度、北緯=正値(2の補集合による)、南緯=負値(2の補集合による)、91度(3412140hex)=データ入手不能=ディフォルト) |
COG |
12 |
対地針路、1/10度刻み(0-3599)、
3600(E10hex)=データ入手不能=ディフォルト、
3601-4095は使用されるべきでない。 |
真の船首方向 |
9 |
度(0-359)(511はデータが入手できないことを示す=ディフォルト) |
時間刻印 |
6 |
EPFSにより報告が作成された時のUTC秒、(0-59、または、
60=時間刻印が使用できない場合、これはディフォルト値にもされるべきである。または、
61=測位システムが手動入力モードにある場合、または、
62=電子測位システムが推測(推測航法)モードで動作している場合、または、
63=測位システムが動作不能状態にある場合 |
地域的な用途のために予約済 |
4 |
地域の担当機関によって定義が行なわれるように予約されている。地域的な用途に全然使用されていない場合は、ゼロに設定されるべきである。地域的な用途である場合は、ゼロを使用すべきではない。 |
名称 |
120 |
最大20文字の6ビットアスキー
「@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@」=データ入手不能=ディフォルト |
船舶の種別及び積荷の種類 |
8 |
0=データ入手不能または船舶ではない=ディフォルト
1-99=第3.3.8.2.3.2項に定義してあるとおり。
100-199=地域的な用法のために予約されている。
200-255=将来の使用のために予約されている。 |
船舶の寸法/位置の基準 |
30 |
メートル単位による船舶の寸法及び報告される位置の基準点(図3.3.8.2.3.3.及び第3.3.8.2.3.3項を見ること) |
電子測位装置の種別 |
4 |
0=定義されていない(ディフォルト)
1=GPS
2=GLONASS
3=合成GPS/GLONASS
4=Loran-C
5=チャイカ
6=統合航行システム
7=測量済
8-15=使用されていない |
RAIMフラグ |
1 |
電子測位装置のRAIM(受信機の自律的なインテグリティ監視)フラグ、0=RAIMは使用されていない=ディフォルト、1=RAIMを使用中。 |
DTE |
1 |
データ端末準備状況(1=利用可能、1=利用不能=ディフォルト)(第3.3.8.2.3.1項参照) |
指定モードフラグ |
1 |
0=自律的で連続的なモードにおいて運用している局=デイフォルト
1=指定モードにおいて運用している局 |
予備 |
4 |
使用されていない。ゼロに設定されるべきである。 |
合計ビット数 |
312 |
2スロットを占有する
|
2.43.2 明確化の根拠
1)MSBを、北/南フラグまたは西/東フラグと間違って解釈するという、誤解の可能性があった。
2)指定モードフラグは、局が指定モードに入ってしまっていることを表示するために必要とされた。
2.43.3 修正の日付: 2001年10月
2.43.4 所見
なし
2.45
A2;§3.3.8.2.16 通報20: データ回線管理通報
2.45.1 提案する明確化の文言
この通報は、基地局により、1局以上の基地局について固定されている割り当て計画(FATDMA)を予告するために使用されるべきであり、必要なだけ頻繁に反復されるべきである。この方法により、システムは、基地局について高度のインテグリティを保つことができる。この点は、特に、基地局数局が互いに隣接して配置されており、移動局がこれらのいろんな基地局の管轄区域の間を移動しているところにおいて、重要である。これらの予約されている各スロットは、移動局によって自律的に割り当てられることはできない。
移動局は、タイムアウトが発生するまで、当該スロットを基地局による送信用に予約すべきである。基地局は、通報20を送信する度にそのタイムアウト値を一新し、移動局に、基地局によるスロットの使用のために行なっていた予約を終了できるようにさせるべきである(
第3.3.1.2項参照)。
パラメーター「オフセット番号(Offset Number)」・「スロット数(Number of Slots)」・「タイムアウト(Time Out)」・「増分(Increment)」は、一組として取り扱われるべきである。このことは、この一組の中で、一つのパラメーターが定義される場合は、他の全てのパラメーターも定義されるべきであることを意味している。パラメーター「オフセット番号」は、通報20が受信されたスロットから、予約されるべきである最初のスロットまでのオフセットを表わしているべきである。パラメーター「スロット数」は、最初に予約されるスロットに始まり連続している、予約されるべきであるスロットの数を表わしているべきである。これは、予約区画を規定する。この予約区画は5スロットを超えるべきでない。パラメーター「増分」は、各々の予約区画にある開始スロット間のスロットの数を表わしているべきである。「増分」がゼロに設定されている場合は、他に予約区画は無い、とすべきである。この通報は、同通報が送信された周波数のチャンネルのみを使用する。
照会を受けたがデータ回線管理情報が入手できない場合は、オフセット番号1・スロットオフセット数1・タイムアウト1・増分1、だけが送り出されるべきである。また、これらのフィールドは、全て、ゼロに設定されるべきである。
表33
パラメーター |
ビット数 |
解説 |
通報識別符号 |
6 |
通報20の識別符号。常に20。 |
反復表示記号 |
2 |
中継局によって使用され、通報が既に反復されている回数を示す。第4.6.1項参照、0-3、ディフォルト=0、3=これ以上反復しない。 |
通報元識別符号 |
30 |
基地局のMMSI番号 |
予備 |
2 |
使用されていない。ゼロに設定されるべきである。 |
オフセット番号1 |
12 |
予約されているオフセット番号
0=データ入手不能。 |
スロット数1 |
4 |
予約されている連続スロットの数、1-15
0=データ入手不能。 |
タイムアウト1 |
3 |
分単位におけるタイムアウト値
0=データ入手不能。 |
増分1 |
11 |
予約区画1を反復するための増分
0=データ入手不能。 |
オフセット番号2 |
12 |
予約されているオフセット番号(オプション) |
スロット数2 |
4 |
予約されている連続スロットの数、
1-15、(オプション) |
タイムアウト2 |
3 |
分単位におけるタイムアウト値(オプション) |
増分2 |
11 |
予約区画2を反復するための増分(オプション) |
オフセット番号3 |
12 |
予約されているオフセット番号(オプション) |
スロット数3 |
4 |
予約されている連続スロットの数、1-15、(オプション) |
タイムアウト3 |
3 |
分単位におけるタイムアウト値(オプション) |
増分3 |
11 |
予約区画3を反復するための増分(オプション) |
オフセット番号4 |
12 |
予約されているオフセット番号(オプション) |
スロット数4 |
4 |
予約されている連続スロットの数、1-15、(オプション) |
タイムアウト4 |
3 |
分単位におけるタイムアウト値(オプション) |
増分4 |
11 |
予約区画4を反復するための増分(オプション) |
予備 |
最大6 |
使用されていない。ゼロに設定されるべきである。。予備ビットの数は、0、2、4または6となり得るが、バイトの境界を観察するために、調整されるべきである。 |
合計ビット数 |
72-160 |
|
2.45.2 明確化の根拠
60報告/分という報告率で送信する移動局のSIは7であるので、この変更は、少なくとも入手できるスロット2個が見出せるであろうことを、確実にすることになる。この明確化は、基地局の構成に責任を置いている。
2.45.3 修正の日付: 2001年10月
2.45.4 所見
なし