2.46 A2;§3.3.8.2.17 通報21: 航路標識の報告
2.46.1 提案する明確化の文言
この通報は、航路標識のAIS局により使用されるべきである。この局は航路標識に取り付けられることができる、または、この通報は航路標識局の機能性が固定局に統合されている場合は当該固定局によって送信されることができる。この通報は、3分毎に一回という報告率、または、VHFデータ回線を経由して指定モード命令(通報16)により指定されることができる報告率、もしくは、外部からの命令による報告率において、自律的に送信されるべきである。この通報は、2スロットを超えるスロット数を占めるべきではない。
表34
パラメーター |
ビット数 |
解説 |
通報識別符号 |
6 |
この通報21の識別符号 |
反復表示記号 |
2 |
中継局によって使用され、通報が既に反復されている回数を示す。第4.6.1項参照、0-3、ディフォルト=0、3=これ以上反復しない。 |
識別符号 |
30 |
MMSI番号 |
航路標識の種別 |
5 |
0=データ入手不能=ディフォルト、IALAが定めている該当の定義を参照すること。表34bisを参照すること。 |
航路標識の名称 |
120 |
最大20文字の6ビットアスキー
「@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@」=データ入手不能=ディフォルト
航路標識の名称は、下記のパラメーター「航路標識の名称延長」により延長されることができる。 |
位置の精度 |
1 |
1=高精度(<10m;例えば、DGNSS受信機などのディファレンシャルモード)、0=低精度(>10m;例えば、GNSS受信機またはその他の電子測位装置などの自律的モード)、ディフォルト=0 |
経度 |
28 |
1/10000分単位における航路標識の経度(±180度、東経=正値、西経=負値、
181度(6791AC0hex)=データ入手不能=ディフォルト) |
緯度 |
27 |
1/10000分単位における航路標識の緯度(±90度、北緯=正値、南緯=負値、
91度(3412140hex)=データ入手不能=ディフォルト) |
寸法/位置の基準 |
30 |
報告される位置の基準点;また、関係がある場合は航路標識の寸法をメートル単位により表示する(図18及び第3.3.8.2.3.3項参照)(1) |
電子測位装置の種別 |
4 |
0=定義されていない(ディフォルト)
1=GPS
2=GLONASS
3=合成GPS/GLONASS
4=Loran-C
5=チャイカ
6=統合航行システム
7=測量済。固定標識及び仮想/擬似標識については、測量された位置が使用されるべきである、正確な位置は、標識の機能を高め、レーダーの基準目標となるようにする。
8-15=使用されていない |
時間刻印 |
6 |
EPFSにより報告が作成された時のUTC秒、(0-59、または、
60=時間刻印が使用できない場合、これはディフォルト値にもされるべきである。または、
61=測位システムが手動入力モードにある場合、または、
62=電子測位システムが推測(推測航法)モードで動作している場合、または、
63=測位システムが動作不能状態にある場合 |
位置ずれ表示記号 |
1 |
浮体標識についてのみ、0=位置上にある、1=位置がずれている、
記事:このフラグは、当該航路標識が浮体標識であり、時間刻印が59以下である場合にのみ、受信局によって有効と考えられるべきである。浮体標識については、保護帯(guard zone)のパラメーターが、設置時に設定されるべきである。 |
地域的または局地的な用途に予約済
|
8 |
地域または現地の担当機関によって定義 が行なわれるように予約されている。どのような地域的または局地的な用途にも使用されていない場合は、ゼロに設定されるべきである。地域的な用途である場合は、ゼロを使用すべきではない。 |
RAIMフラグ |
1 |
電子測位装置のRAIM(受信機の自律的なインテグリティ監視)フラグ、0=RAIMは使用されていない=ディフォルト、1=RAIM使用中。 |
仮想/疑似標識フラグ |
1 |
0=ディフォルト=表示されている位置にある実際の航路標識;1=仮想/擬似標識であり、物体的には存在していず、付近にあるAIS局から担当機関の指示の下においてのみ、送信されることができる。(2) |
指定モードフラグ |
1 |
0=自律的で連続的なモードにおいて運用している局=デイフォルト
1=指定モードにおいて運用している局 |
予備 |
1 |
使用されていない。ゼロに設定されるべきである。 |
航路標識の名称延長 |
0、6、12、18、24、30、36、…84 |
このパラメーターは、2スロット通報用の14文字までの追加6ビットアスキー文字であり、航路標識の名称に20文字を越える文字が必要とされる場合に、パラメーター「航路標識の名称」の最後に、当該パラメーターと結合されることができる。このパラメーターは、航路標識の名称に合計で20文字を越える文字を必要としない場合は、除外されるべきである。必要な文字数だけが送信されるべきである。即ち、@で構成される文字は、全然使用されるべきではない。 |
予備 |
0、2、4または6 |
予備。パラメーター「航路標識の名称延長」が使用される時にのみ使用される。ゼロに設定されるべきである。予備ビットの数は、バイトの限界を見て調整されるべきである。 |
ビット数 |
272-360 |
2スロットを占める。
|
脚注;
(1)第3.3.8.2.3.3項を航路標識に用いる場合は、以下の事項が注目されるべきである。
・固定標識、仮想及び擬似標識、沖合い構造物については、寸法Aで確立される方向が真北を指すべきである。
・2m×2mより大きな浮体標識については、航路標識の寸法は常に、ほぼ正方形として示されるべきである一つまり、各寸法は常にA=B=C=D≠Oとなっているべきである。(これは、浮体標識の方向は送信されないという事実に起因している。報告される基準点は、正方形の中心である。)
・A=B=C=D=1は、2m×2m以下の目標物(固定または浮体の)を表わすべきである(報告される基準点は、正方形の中心である)。
(2)仮想/擬似標識の情報を送信する時は、つまり仮想/擬似航路標識フラグが1に設定されている時は、寸法は、A=B=C=D=0(ディフォルト)に設定されているべきである。これは、また、基準点の「情報」を送信する時も同様とすべきである(表34bis)を見ること)。
この通報は、何れかのパラメーター値が変更された後、直ちに、送信されるべきである。
AISの範囲内における航路標識についての記事:
航路標識についての国際的な担当母体であるIALAは、航路標識を次のように定義している − 「船舶及び/もしくは船舶通航の安全かつ効率的な航行を強化するために製作され運用されている、船舶の外部にある装置またはシステム」、(IALAナブガイド、1997年版、第7章)。
IALAナブガイド(Navguide)は、次のように規定している − 「浮体標識は、位置がずれている・漂流している・夜間に点灯しない、という状況にある場合は、それ自体が航行に対する危険物になる。浮体標識が、位置ずれまたは動作不良状態にある場合は、航行警報が発動されなければならない。」従って、浮体標識が位置をずらしているまたは動作不良状態にあることを探知した上で、通報23を送信する局は、担当機関の裁量において、安全関連放送通知(通報14)も送信でき得ると考えられる。
表34bis 航路標識の種別
航路標識の性格と種別とは、以下に示されているように、32種類の符号で表示されることができる。
  |
符号
|
定義 |
  |
0 |
ディフォルト。規定されていない航路標識の種別。 |
  |
1 |
基準点 |
  |
2 |
レーコン |
  |
3 |
沖合い構造物 |
  |
4 |
予備 |
固定標識 |
5 |
灯火、無指向式 |
  |
6 |
灯火、指向式 |
  |
7 |
導灯、前灯 |
  |
8 |
導灯、後灯 |
  |
9 |
標識、北方位 |
  |
10 |
標識、東方位 |
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11 |
標識、南方位 |
  |
12 |
標識、西方位 |
  |
13 |
標識、左舷 |
  |
14 |
標識、右舷 |
  |
15 |
標識、左航路優先 |
  |
16 |
標識、右航路優先 |
  |
17 |
標識、孤立障害 |
  |
18 |
標識、安全水域 |
  |
19 |
標識、特殊 |
浮体標識 |
20 |
北方位標識 |
  |
21 |
東方位標識 |
  |
22 |
南方位標識 |
  |
23 |
西方位標識 |
  |
24 |
左舷標識 |
  |
25 |
右舷標識 |
  |
26 |
左航路優先標識 |
  |
27 |
右航路優先標識 |
  |
28 |
孤立障害 |
  |
29 |
安全水域 |
  |
30 |
特殊標識 |
  |
31 |
灯船/ランビー(LANBY) |
記事;
(1)上記に列挙されている標識の種別は、適用できるものは、IALA海上浮標式に基づいている。
(2)標識が灯火標識であるか無灯火標識であるかを決めるについては、混乱させる可能性がある。担当機関は、通報の中の地域/局地用の欄を利用してこの点を表示したいと望んでいることが考えられる。
2.46.2 明確化の根拠
1)パラメーター「航路標識の名称延長」を取り入れる根拠; IALAは、航路標識に長い名前を必要とされる事例が数多くあることを認識している(詳細については、IALA AISガイドラインを参照すること)。2スロットの通報については、追加文字の最大数は14である。2スロットを越えるものは許可されないという根拠は、VDLのロード(load)を最適化することにある。
2)パラメーター「仮想/擬似標識フラグ」を取り入れる根拠; 状況によっては、物体的に存在しない航路標識についての情報を送信することが役に立つ、と考えられる場合があり得る。この種の仮想/擬似標識と実際の航路標識体とを区別する方法が必要である。通報21の中の予備ビットの一個を「仮想/擬似標識フラグ」に使用することが提案される。
3)航路標識一覧表を取り入れる根拠; 勧告ITU-R M.1371-1がこれを求めている。
4)指定モードフラグを取り入れる根拠; 航路標識のAIS局は別の報告率を指定される可能性があるので、指定モードに入っていることが表示される必要がある。
2.46.3 修正の日付: 2001年10月
2.46.4 所見
この通報は、他の何れの移動局または基地局の通報にもまたはAIS VDLの動きにも、影響を及ぼさない。この通報は、特に、船舶に搭載されている等級A移動局によって、呈示インターフェイス上に、そのまま出力される。しかし、この通報は、送信側と受信側との両方において、これを利用する用途には、確実に影響を与える。従って、今後行われる修正は、用途について将来に遺る問題を作り出さないような方法で、実施されるべきである。
2.47 A2;§4.1.1 使用周波数チャンネル
2.47.1 提案する明確化の文言
他の周波数が地域的であることを基本としてAISの目的のために指定されている場合を除き、公海及びその他全ての地域において、世界中でAISが使用することを期して、2種類の周波数チャンネルが、RR付則S18で指定されている。この2種類の指定周波数は、次の通りである。
AIS1(チャンネル87B、161.975MHz)、(2087)*、及び
AIS2(チャンネル88B、162.025MHz)、(2088)*
AISは、これらのチャンネルで運用するようにディフォルトされているべきである。
他のチャンネルにおける運用は、次の方法により達成されるべきである −AIS入力装置からの手動入力による命令(手動切り換え)、基地局からのTDMA命令(TDMAの遠隔命令による自動切り換え)、基地局からのDSC命令(DSCの遠隔命令による自動切り換え)、ECDISまたはENCなどの船舶に搭載されているシステムからのIEC 61162コマンドによる命令(船舶に搭載されているシステムの命令による自動切り換え)。当該地域自体を含めて、最後に受信にした8個の地域的な運用のための設定値は、移動局により保管されるべきである。保管された地域的運用設定値には、全てに、日付・時間が付記され、どの入力(TDMA通報20、DSC遠隔命令、手動入力、呈示インターフェイス経由による入力)がこの地域運用設定値が受信されたことを意味しているか、という情報が付記されているべきである。
通常運用中に位置情報が失われた時のチャンネル管理については、現在の周波数チャンネルを使用するという方法が、宛先指定チャンネル管理通報(宛先指定DSC命令または宛先指定通報22)により、または、手動入力により指示されるまで、維持されるべきである。
*勧告ITU・R M.1084付属書4を見ること。
2.47.2 明確化の根拠
この明確化は、地域運用設定値のメモリ毎に、時間/日付及び出所のタグ(tag)を取り入れるものである。時間/日付タグは、どの地域運用設定値が時間の経過により消去されるべきか、の決定が行えるようにさせてくれる(A2;§4.1.8項の明確化を参照のこと)。
出所タグは、チャンネル管理設定値入力のいろんな情報源に優先順位を割り当てることができるようにさせてくれる(A2;§4.1.8項の明確化を参照のこと)。
2.47.3 修正の日付: 2001年10月
2.47.4 所見
この明確化は、移動局が影響を受けるという限りにおいて、船舶に搭載される等級A移動体用AIS局についての設計と試験とに、既に、取り込まれている。この明確化に対して今後変更を行う場合は、何れも、将来に遺る問題を作り出さないように配慮すべきである。
2.48 A2§4.1.2 二重チャンネル運用の通常ディフォルトモード
2.48.1 提案する明確化の文言
運用における通常のディフォルトモードは、2チャンネル運用モードになっていて、AISは両方のチャンネルで、並行して、同時に受信するようになっているべきである。この動作を遂行するために、AISトランスポンダーは、2台のTDMA受信機を持っているべきである。
チャンネルヘのアクセスは、2種類の並行しているチャンネルの各々において、別々に、行なわれる。
定期的に反復される通報については、最初の回線へのアクセスを含めて、送信は、AIS1とAIS2との間で交互に行なわれるべきである。この交互動作は、時間フレームに関係なく、一回の送信毎、を基本として行なう。
自局のスロット割り当て告知の後に続く自局の送信・照会への自局の応答・要求に対する自局の応答・自局の受信証は、最初に受信した通報と伺じチャンネルで送信されるべきてある。
宛先指定通報については、送信は、宛先局からの通報が最後に受信されたチャンネルを使用すべきである。
上記に挙げてあるもの以外の不定期的な通報については、各々の通報の送信は、通報の種別に関わらず、AIS1とAIS2との間で交互に行なわれるべきである。
基地局は、以下の理由から、その送信をAIS1とAIS2との間で交互に行なうことができると考えられる。
− 回線の収容能力を増加させる。
− AIS1とAIS2との間でチャンネルのローディング(laoding)を均衡させる。
− RF干渉の有害な影響を軽減させる。
基地局は、チャンネル管理上の実施態勢に含まれている場合は、宛先局からの通報を最後に受信したチャンネルで、宛先指定通報を送信すべきである。
2.48.2 明確化の根拠
どの局が何をしているか(受信している局/送信している局)、についてのあいまいさを避ける。
2.48.3 修正の日付: 2001年10月
2.48.4 所見
なし