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[I]内航船の整備・修理作業と貨物倉のクリーニング作業中の災害
1.(1) 対象作業中の災害
災害の3割は整備・修理と貨物倉クリーニング中に発生
 旅客船を含む内航の船員が、3日以上休業する乗船中の死傷災害(以下、災害といいます。)は、平成11年度で乗組員数干人につき年間14人です。外航船の4.6人や、官公庁船、曳船などの10.9人に比べると、著しく高い発生率です。
 
 この小冊子で取り上げている「整備・修理作業及び貨物倉のクリーニング作業」(整備・管理作業)中の災害を、内航と外航の汽船に乗り組む船員でみますと、毎年、全災害の3割前後占めています。
 対象作業は、平成12年度の小冊子で取り上げた「出入港作業」及び「荷役作業」と並んで、汽船の3大災害多発作業の一つとなっているのです。
作業別災害発生構成比 (平成11年度)
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ことば「整備・管理作業」
 機械、器具、用具等の整備・修理及びカーゴー・タンク等の清掃片付け、または錆落とし、塗装及びこれらに関連する一連の作業をいう。
1.(2) 船種別と総トン数別の災害発生構成比
貨物船やケミカル・タンカーなどが多い300〜699型の災害が4割に
 平成8年度から10年度の3年間における内航船の「整備・修理作業及び貨物倉のクリーニング作業」中に発生した災害1,392件について、項目別に主なものを取り上げてみます。
 
 船種別にみた対象作業の災害発生構成比は、貨物船が32.8%、タンカーが23.4%、ついでフェリーが17.4%と高くなっています。
 
 総トン数別の災害発生構成比では、貨物船やケミカル・タンカーなどが多い300〜699型が42.3%と群を抜いており、災害が多発している船型であることが分かります。
総トン数別災害発生構成比(平成8〜10年度平均)
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1.(3) 年齢別災害発生状況
55歳以上の被災率は20〜30代の2倍に
 年齢別にみた対象作業の災害発生構成比では、45歳以上になると急激に高くなっていますが、内航船員の年齢別人数構成からみた災害発生状況対比では、55歳以上が突出しており、20〜30代の約2倍となっています。
 
 一般的には、50歳以上になると、体力や機能の衰えが著しく、体力・技能ともに充実している30代に比べて、被災率が2倍になります。「自分は大文夫だ。」と考えず、災害防止の対策を一つひとつ確実に守って下さい。
A:年齢別災害発生構成比(平成8〜10年度平均)
B:年齢別災害発生状況対比
(年齢別災害発生構成比÷年齢別人数構成比)
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1.(4) 休業日数別と起因物別の災害発生状況
被災者6人に1人が休業3か月以上甲板と用具・工具が二大起因物
 内航船員が対象作業中の災害で1か月以上仕事を休むのは、63.4%で、休業が3か月以上となる重傷者は、16.9%(被災者の6人に1人)となっています。
休業日数別災害発生構成比
(平成8〜10年度平均)
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 起因物では、転倒、転落・墜落及びはさまれの主因の一つとなっている甲板(通路、階段、ドア、ハッチを含む)と、はさまれ、転倒及び飛来・落下を生じやすい用具・工具が2大起因物として、それぞれ20%強を占めています。
起因物別災害発生構成比(平成8〜10年度平均)
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1.(5) 態様別の災害発生状況
「転落・墜落」、「はさまれ」と「転倒」が多発
 態様別では、重傷となりがちな「転落・墜落」が最も多く発生しており、全体で21.1%、とくに被災率が急激に高くなっている55歳以上では、30.2%となっていることに留意が必要です。
 
 「転落・墜落」と「反復動作」についで発生率の高い「転倒」と「はさまれ」は、船内作業全般でも、災害が多発している二大態様です。平成13年度の船員災害防止実施計画でも、とくにその防止に重点を置いて、具体的な災害防止対策を明示しています。(42頁資料5:汽船における死傷災害防止対策参照)
態様別災害発生構成比(平成8〜10年度平均)
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ことば「反復動作」
 重い物を持ち上げて腰をぎっくりさせたというように、身体の動き、不自然な姿勢・動作などが起因して、筋をちがえる、ひねる、くじく等これに類似した状態になる場合をいう。
1.(6) 対象作業中の死亡災害
対象作業中に3年間で5件の死亡災害
転落・墜落 海中転落
 
貨物船(1,311総トン)47歳 甲板長
 船尾マストの塗装中、ボースン・チェアから8M下の甲板に転落した。
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貨物船(749総トン)56歳 甲板員
 通風筒を塗装中、甲板上に転落した。(詳細不明)
 
ケミカル・タンカー(291総トン)58歳 機関長
 ボート・ダビット点検中、ダビットのアームが動き、つられて海中に転落した。
1.(7) 対象作業中の死亡災害(2)
「転落」3件「はさまれ」1件「酸欠」1件 類似死亡災害の絶無を
はさまれ
 
貨物船(192総トン)54歳 船長
 旋回しているクレーンと船体の間にはさまれた。
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酸欠
 
旅客船(375総トン)43歳 機関長
 空調機室の中で、フロンガスにより酸欠死。(詳細不明)








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