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5 市民団体の支援施策のあり方
 市民団体の支援内容として、アンケート調査のうち活動上の課題(図表3‐42参照)及び藤枝市に望む支援内容(図表3‐53)とヒアリング調査から、下記のようなものが必要である。市民団体の活動が多くなされている分野は、次の(1)を中心に、活動があまり多くない分野は(2)を中心に支援施策を展開する。なお、ここでは、支援施策の具体的な中身は検討せず、支援の方向性にとどめるものとする。
(1) 市民団体が活動しやすいようにする
ア 市民活動推進条例の整備
<現状>
・ 市民団体は社会的認知度が十分になく「市民権」を持たない団体が多い。そのため、必要な支援が得られないことがある。
 
<支援の方向性>
・ 協働社会の重要な担い手として、市民団体に「市民権」を与えるため、市民活動推進に関する条例を整備する。
 
イ 活動や団体運営などに関するアドバイス
<現状>
・ 藤枝市の市民団体は、比較的活動歴が短い団体が多い。このため活動の進め方や団体の運営(会計、組織運営、法務、事業ノウハウ等)に関するアドバイスを必要としている団体が多い。
 
<支援の方向性>
・ 市民団体の求めに応じて、行政が必要な事項をアドバイスする。その際に、活動の誘導や干渉にならないように注意する。
・ 市民団体の発展段階や活動内容などにより課題や問題は千差万別となるため、すべて行政でアドバイスできるとは限らない。そのため、市内外の先進的な団体の活動や運営方法などの紹介や、市民活動を支援する団体に委託も考えられる。
・ 事務的な支援、事務局代わりは、市民団体の自主性・自立性(不干渉)の尊重・原則から、基本的に行わない。藤枝市からの呼びかけで市民団体などを設立するような特別な場合は、市民団体の立ち上がり期に期間を限定した事務的な支援を検討する。
 
ウ 活動場所の整備・提供
<現状>
・ 福祉関連分野の市民団体の多くはボランティア・ビューローを活動拠点としているが、それ以外の分野の市民団体には特定の活動拠点はない。また、活用可能な公的施設の利用時間と市民団体の活動時間が必ずしも合致していない。
 
<支援の方向性>
・ 単なる「ハコ」ではなく各種情報が集まり、また発信できるような活動拠点を必要に応じて整備・提供を検討する。
 公共施設の積極的な開放、利用時間の延長などを図る。現在、調理施設の整っている公共施設は限られており、公立の学校の家庭科教室を開放することが考えられる。また、夜間や土曜日・日曜日に市民活動が集中する傾向があるため、平日の開放時間の延長や土曜日・日曜日の開放を検討する。
 
エ 人材の育成
<現状>
・ 活発に活動している市民団体も見られるが、活動会員が限られている団体が大半であり、人材の育成が求められている(特に専門知識を有し、地域に密着した活動を展開・リードできる人材や、地域でのネットワークを広げられる人材、コーディネートできる人材等)。
 
<支援の方向性>
・ 主に、市民団体で中心的に活動している人を対象として、組織運営、活動推進に必要な知識・技術などの研修を行う。活動推進に必要な知識として、行政のしくみ、自治会・町内会や社会福祉協議会・青年会議所などの活動内容も含まれる。
 
オ 市民団体が情報発信を行う場の提供
<現状>
・ 団体に関する情報を公開していない団体が約半数ある。原因の一つに情報発信の場がない、あるいは不足していることが考えられる。
 
<支援の方向性>
・ イベントの案内や会員募集などに関する市民団体の情報を市のホームページに掲載するなどが考えられる。
 
カ 地域運営や各種市民団体などに関する情報の提供
<現状>
・ 行政情報を得にくいとする市民団体があるとともに、他の市民団体やボランティアなどの情報を入手して活動を充実させたい団体がある。
 
<支援の方向性>
・ 行政の関連情報を提供することにより、市民活動がスムーズに行えるようにする。
・ 各種市民団体の情報を提供することにより、団体間の交流、協力を図る。
 
キ 市民団体同士、あるいは市民団体と行政との交流の場の設定・提供
<現状>
・ 市民団体のネットワーク化により活動が充実したとともに、藤枝市との関係が強まった団体が見られる。
 
<支援の方向性>
・ 今後とも市民団体同士のネットワークづくりを支援する。
・ 市民団体と行政の交流、情報交換の機会を設ける。
・ ネットワークづくりや市民団体と行政の交流など、異なる団体間の調整を図るコーディネーターを育成する。
 
ク NPO法人化への支援
<現状>
・ 藤枝市では現在、NPO法人の認証を受けたのは3団体のみで、NPO法人に関する情報が不足している。
 
<支援の方向性>
・ NPO法人化することのメリットとして、社会的認知が高まること、事業の委託が受けやすくなること、一定の条件での税の減免措置などがあり、これらのことを市民団体に広く伝える。
 
ケ 設備の整備・提供
<現状>
・ コピーやファクシミリなどの事務機器を所有している団体は少ない。また、調理施設の整っている公共施設は限られている。
 
<支援の方向性>
・ 市民活動に必要であって、市民団体が自ら整備しにくい設備や用意しにくい機材などを行政が整備・提供する。
 
コ 補助金の提供
<現状>
・ 活動資金が不足し、十分な活動ができない団体が約4分の1ある。
 
<支援の方向性>
・ 自主性・自立性(不干渉)の尊重・原則に基づき、市民団体の運営に要する費用は基本的に補助金の対象とせず、活動費用を対象とする。
・ 公平性を保つため、毎年審査したり、定期的に見直しを行ったりすることにより、補助金提供の硬直化を防ぐ。
・ 公正性を確保するため、統一した基準に沿って補助金を交付するとともに、補助金の交付を受ける市民団体は、補助金の対象となる活動など事前に公表するとともに、事後に該当する活動の報告を行う。
 
サ 市民活動全般を対象とした保険の提供
<現状>
・ 約2割の市民団体が、活動に伴う事故への責任・保険に不安を持っている。
 
<支援の方向性>
・ 活動の際の事故などに対するボランティア保険への加入をまとめて行う。
(2)市民活動や市民団体に対する理解を深める
ア 一般市民に対する市民活動の啓発と市民団体の情報提供
・ ボランティア講座などを開設し、市民活動の啓発を行う。
・ 市民団体の活動内容を広く市民に伝え、活動への参加を促す。
 
イ 行政内部における市民活動と市民団体に対する研修
・ 市民活動や市民団体の特徴などについて、行政内部で研修を行う。
 
 上記の施策を財源措置の必要性の有無について整理すると図表5‐9のようになる。
図表5−9 主な支援施策
  財源措置
必要なし 必要あり



・活動や団体運営などに関するアドバイス
・人材の育成
・地域運営や各種市民団体などに関する情報の提供
・市民団体同士、あるいは市民団体と行政との交流の場の設定・提供
・一般市民に対する市民活動の啓発と市民団体の情報提供
・行政内部における市民活動と市民団体に対する研修
・市民活動推進の条例の整備
・市民団体が情報発信を行う場の提供
・NPO法人化への支援
・活動場所・設備の整備・提供
・補助金の提供
・市民活動全般を対象とした保険の提供








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