これまでも、損害保険会社は、契約者のニーズに応えるために、契約者毎に様々な仕組み作りをおこなってきたことはすでにご説明しましたが、今後も同じように、様々なニーズに応えることになります。しかしながら、その対応は従来とは異なり、標準化したEDIやWEBを使った二つの方法と在来の紙ベースとに集約すると考えます。
損害保険会社および損害査定代理店は、当分の間この三つの業務ラインを持つことになります。多分、同一契約者でも複数のラインが必要になる場合もあるかと思われますが、保険証券の問題に係わらず他の貿易書類においても似たような状況になるのではないでしょうか。
これは、マルチラインのシステムを構築するといった新たな課題でもあります。
3.2 EDI化に向けた社内事務処理の整備と標準化の対応
これは、本章の2.で説明しましたEDI化に向けて検討すべき課題に関係します。以下に主な二つを列挙します。
・特約書の整備・管理方法のシステム化
(本章2.1 申し込みにおける契約者の付保意思の確認の項を参照)
既に述べましたとおり、EDI化されても保険契約成立までのプロセスは従来通りとなり、事前に契約締結(特約書の締結)し、それに従った申し込みがなされなければなりません。この内容を詳細に決めておかないと、事前に取り決められた契約が電子データで送られてきたのか、そうでない新たな契約が送られてきたのかの判別が機械上できません。
保険料率もあまりに複雑に設定しておくと、機械上で自動的に計算させるのも簡単ではなくなります。従来のように、仕向地別、品目別、納め先別、輸送用具・梱包別、条件別と言ったような複雑な料率体系では対応が大変になりますので、できれば簡素化したいのですが、契約者のニーズ(商売上のコスト明確化)もあり、簡単にいくとも思えません。
いずれにしても、引き受け意図(締結した契約)のはっきりした内容が要求されます。特約書は、本来内容がはっきりしていなければならないのですが、大ざっぱに全ての輸出(輸入)を引き受けるといったケースや料率は都度協定といった曖昧なものもあります。EDI化を始めるに当たっては、再度見直し整備することが、契約者、損害保険会社の両社に必要となってきます。