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筆者としては、さしあたり、当該Bolero B/Lでカバーされる運送契約自体の準拠法が日本法であれば、Bolero Rulebook 3.2.(4)の解釈として、国際海上物品運送法第9条により処理され得るものの、このような明文規定がない国の場合(例えば英法)、いわば何も規定がないことになり、船荷証券の場合における法(判例法等)を類推していくか、あるいは禁反言(estoppel・後になって従前自己のなした陳述や行為に反する主張をすることを禁ずる法理)等の一般法理に依拠することになるのだと考えております。

 

TEDIはどうでしょうか。Possessorは前Possessorの運送契約上の権利義務を承継するという単純な規定の仕方からすると、例えば上記の最後の例では、運送人が(最初のPossessorとなる)荷送人に未収運賃を請求できるのは明らかですから、それを無条件に承継してしまうということになるのでしょうか。

ただそれは明らかにおかしいと思われます。Boleroのような規定すらなく今一つ不明ですが、結局はBoleroと同様、船荷証券の場合における法(判例法等)を類推していくか、あるいは禁反言等の一般法理に依拠することになるのではないでしょうか。

 

3.3 船荷証券所持人の義務

 

問題状況として3.2と似ているのが、電子式船荷証券において、その「所持人」が船荷証券上の義務(未払運賃・保管料の支払義務、貨物に起因して船舶に損害を与えた場合の賠償義務等)を負担するのはどのような条件の下でかという問題です38

まず留意すべきは、3.2と同様、そもそも紙の船荷証券ですら、その所持人が一体どのような条件下で船荷証券上の義務(同前)を負担するのかについては、国際条約等で統一が図られている訳ではなく、各国法に委ねられているということです。例えば、英国のCarriage of Goods by Sea Act 1992 s.3(1)では、船荷証券所持人は、1]貨物の引渡を受けた場合、2]貨物の引渡を要求した場合、3]貨物につき運送人に対し運送契約上に基づく請求をした場合等には、船荷証券上の義務も負担する旨が規定39されています。他方、わが国では、商法に、貨物を受け取った荷受人(必ずしも船荷証券の発行されている必要はなく、とにかく事実として貨物を受け取った者)は、未収運賃・保管料等の支払義務を負う旨規定され(国際海上物品運送法第20条第1項、商法第753条第1項)、さらに、所持人が船荷証券に基づき貨物引渡を受けようとする場合には、それら義務につき運送人から留置権を以って対抗され、引渡を受けるにはそれらを弁済せざるを得ないということは明らかですが、それ以外の規定はないので、英国の上記法律における2]3]の場合に果たして義務を負うのか実は明確ではありません40。また、このように統一されていない場合、その準拠法をどう判断するかも問題となります。

 

38 念のために述べれば、元々の運送契約の当事者としてこれらの義務を負う荷送人=最初の「所持人」が、電子式船荷証券の譲渡により以後それら義務から免れるか、は別個の問題ですが、本稿では割愛します。

39 この旧法にあたるBill of Lading Act 1855 s.1は、船荷証券の裏書譲渡と同時にあるいはそれにより(upon or by reason of)貨物の所有権の移転を受けた者は、荷送人と同様の運送契約上の義務を有する旨規定していました。

40 註1で引用した論文では、この点消極となることが当然という前提で論じられています。(69頁参照)

 

 

 

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