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英法の場合、国際条約たるHague-Visby Rules(を国内法化した立法34)でカバーされない範囲は、基本的には判例法の問題35です。また、このように統一されていない場合、その準拠法をどう判断するかも問題となります。

そこで次に、上記の契約中に、適宜検討のうえ、電子式船荷証券のこれこれの記載は、その所持人(権利者)との間でこれこれの効力を有するといった何らかの具体的規定をおくことが考えられます。しかし、このような具体的規定をおけば、本来統一されていないものをはっきりさせすぎるという点で、それは電子式船荷証券の本来的目的(紙の船荷証券の代替)を超えるものであるという批判があり得るでしょう。むしろ正しいのは、むしろ法制の差があることを前提に、「電子式船荷証券の記載事項の、その現権利者に対する効力は、当該記載が紙の船荷証券になされていた場合における当該船荷証券の所持人に対する効力と同様とする」といった趣旨(文言はなお推敲の余地大ですが)の規定を入れることかも知れません。勿論、こう規定すると、はっきりしていない場合もでてきますが。

 

Bolero Rulebook 3.2.(4)では、「Bolero B/Lの対象となる運送契約は、それについて紙の船荷証券が出ていた場合に強行的に適用があったであろう国際条約36ないし当該国際条約に効力を付与する国内法37に従うものとし、当該国際条約ないし国内法は、Bolero B/Lに摂取されたものとみなされる」旨も規定されており、さらに3.1 (3)では、Hague Rules及びHague-Visby Rulesの上記条項と範囲を合わせる形で「主たる記号、数量・重量、貨物の外観上の状態についてのBBL Text上の記載は、あたかもそれが紙の船荷証券上になされた場合と同じ範囲・同じ状況下で運送人を拘束する」とも規定しています。従って、Hague Rules及びHague-Visby Rulesの上記条項と同様の範囲の効果迄は認められることは、間違いありません。

問題となるのは、Hague Rules及びHague-Visby Rulesの上記条項ではカバーされない、しかし日本の国際海上物品運送法の上記条項ではカバーされる例、例えば、註35で挙げた判例の事案や、運賃につき電子式船荷証券の記載上はPrepaid=支払済とされつつ、現実には荷送人に一定のクレジットが与えられていて未収であるというとき、その後の権利者がこの記載を援用して支払なしでの引渡を求め得るか(運送人は留置権を行使できないか)といった事案です。

 

33 これは、反証がない限りそう推定するということであり、裏返せば反証自体は許容しています。

34 Carriage of Goods by Sea Act 1971

35 そこでよく冒頭にあげられるのはLeduc v. Ward (1888) 20 QBD 475です。これは、船荷証券所持人が運送人による運送途中の寄港が契約違反の離路である旨主張したのに対し、運送人が、契約当事者たる荷送人とはその点の具体的合意があると抗弁し、それが容れられなかったケースです。

36 これがHague Rules、Hague-Visby Rules又はHamburg Rulesを指すことは明らかです。

37 これがわが国際海上物品運送法や各国のCOGSAを指すことも明らかです。

 

 

 

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