前2列(または全て)の全没型水中翼には、横安定性を向上させるための上反角3)を設けると共に、例えば、Fig.11に示すように、全ての全没型水中翼につき、揚力を発生させるための揚力翼形成部分1a、2a、3aの両側に整流作用を発揮させるための整流翼形成部分1b、2b、3b(ハッチング部分)を連設形成することにより、各全没型水中翼と没水体およびストラットとの間で発生する翼端渦と境界層と造波との流体力学的干渉の発生を低減抑制し、干渉による抵抗の増加を抑えることができる。
特に、後の全没型水中翼の整流翼形成部分3bの幅を比較的に大に設定して、激しい渦流となる揚力翼形成部分3aの後流T3が直接推進器に及ばないようにすると共に、前の揚力翼形成部分1a、2aの後流T1、T2をもその整流翼形成部分3bで整流し、推進器軸まわりの伴流分布を乱さないようにすることにより、船殻効率の維持向上を図ることができる。なお、各整流翼形成部分1b、2、3bの幅については、前2列のlbと2bは1.0m、後の3bは1.5mとしているが、その幅の最適値については本格的な開発段階での検討事項としたい。
6.9 Foilborne率
要目に記載のように、両船のfoilborne率をかなり低く(20%以下)設定し、全没型水中翼の両端部に形成した整流翼形成部分で没水体内側まわりの流れを十分に整流することにより、SWATH部分の安定性を全没型水中翼で補助的に維持向上させるようにしている。
6.10 離着水動作
主船体の甲板底の中央部に、下方に向けて大きく突出した鋭角状に先尖りな放物線状の断面形状を有する突畝部を縦通させ、その突畝部の両側と、上拡がり状の横断面形状に形成した両ストラットの基部とを略アーチ状に連ねている(Fig.2、Fig.5参照)。このような船体形状により、主船体の浮揚時と着水時には、複雑な姿勢制御に依存することなく、甲板底を容易かつスムーズに離着水させることができる。
その値から、両船は、充分な自己復原力と良好な横揺れ特性を具備しているものと判断される。
(2) 耐航性および凌波性
上述したように、両船は、良好な横安定性と復原性を具備し、かつ、3列の全没型水中翼によって縦方向の安定性も向上するため、PWATH本来の波の影響を受けにくい良好な耐航性を超高速域で安定に維持向上させることができるであろう。
そして、荒天時には、船体自体の持つ耐航性と凌波性および自動バラスト調整で対処できることを大きな特徴とし、波高の程度に応じて喫水を自動調整することにより推進器の没水深度を確保し、波高7m程度(風浪階級6と7の中間程度)の波を充分クリアすることができるであろう。
6.12 旋回性能および操船性
前述したように、浮揚航行時に充分な自己復原力を具備していることと、全長を比較的短く設定できること、および操作性の良好な電気推進方式を採用していることによって、舵を補助として用い、基本的には、左右の推進力の差を発生させることにより、超高速時に、比較的簡易な制御内容で、旋回内傾斜を、スムーズかつ安定性よく実現することができる。