6.4 船体構造
両船共に、全没型水中翼を含む船体の主要構成部材に主として高張力鋼を用いた堅牢な鋼船構造とする。
1] 「超高速ビジネスフェリー」
主船体には、3層の車両甲板を設け、第3車両甲板と甲板底との間に、縦方向に所定間隔をおいて強度上有効な横隔壁を立設すると共に、主船体の最上層と甲板底との間の中央部に強度上有効な縦壁を略全長にわたり縦通させて横隔壁と交差させ、主船体を捩じれ及び縦、横方向に強い構造とし、かつ、各車両甲板の下部に所定間隔で交差状に設けた横置梁と縦通梁の中間部を所定の間隔をおいて支柱に支持させ、また、各横隔壁の両側下部と位置を合わせて両ストラット内に垂直仕切り板を立設し、かつ、その垂直仕切り板と交差させるように水平仕切り板を設けて両ストラットと主船体を一体的に補強する一方、甲板底の中央部に下向きの突畝部を縦通させると共に、両没水体間に3列の全没型水中翼を架設し、その各全没型水中翼の中間部を支持する支持部材を縦壁の下部と位置を合わせて甲板底から垂下させてその中間部を突畝部の先端部分に貫装固定して充分に補強し、各支持部材で全没型水中翼をそれぞれ安定強固に支持させる。
このような構成により、全体として堅牢かつ軽量なハイブリッド構造を形成することができる(Fig.4、Fig.5参照)。なお、船体建造時や入渠時等のために、没水体底面の形状を平坦化する必要があるが、この点については、抵抗推進性能等を考慮して別途検討するものとする。
2] 「超高速ROROフェリー」
車両甲板を2層とした点、および最上部の客室の外板と位置を合わせて、第1車両甲板、第2車両甲板、甲板底を貫通してストラットの内側まで延びる内側壁を設けた点以外は「超高速ビジネスフェリー」とほぼ同じ構造である(Fig.6、Fig.7参照)。
以上のように、HTHでは全没型水中翼を両没水体間に架設したことにより、船体を大型化することなく(特に、全長を大にすることなく)、載貨重量を大幅に増大させることができ、かつ船殻重量の大幅な軽減化を伴う船体の著しい軽量・コンパクト化が可能となる。また、全没型水中翼の翼面積や配置位置を考慮することにより、船尾の安定化を図るための重心および浮心の適切な位置設定が容易となるため、SWATH部分を抵抗の少ない形状に形成しやすくなり、かつ、推進器の没水深度を安定に確保しやすくなる。