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● 燃料電池推進船

燃料電池は原理的に熱効率が高いこと、可動部分がないため静粛性、取り扱い性に優れていること、排気ガスがクリーンでNOx、SOxともゼロエミッションであること、電池本体の船舶内での配置上の自由度が高く従来のような大型の機関室を船尾部に設置する必要がなくなる為、船尾形状の設計の自由度が大幅に上がるといった特徴がある。陸上の小規模発電用にはリン酸型燃料電池が一部で使用されているほか、電気自動車用として固体高分子型燃料電池の開発が目覚しく、数年後には実用化される勢いである。この種の燃料電池は、比較的セル容量が小規模なため自動車、一般家庭及び小規模事業所のエネルギー源等には適用できるものの、大出力が必要な外航船舶への応用は困難と考えられている。

シップ・アンド・オーシャン財団では、1990〜1991年に燃料電池推進船についての調査研究を実施した。この研究では、発電効率が高く大出力が得られる溶融炭酸塩型燃料電池を舶用推進機関として利用する上での技術的課題の抽出や、燃料電池推進船に関する試設計などを行った。その結果、もともとボイルオフガスの発生があり改質器への燃料供給が容易なLNG 船、機関室の高さ制限が厳しい大型フェリー(導入により車室の設計自由度があがる)、そして低振動や静粛性が求められる海洋観測船等に対しての適用にはメリットがあるものの、他の船種に対してはメリットが乏しいとされた。今後は改質器の性能向上やセル当たり出力の向上などの技術開発が重要であると考えられる。

 

2] モーダルシフトの促進

先にも延べたように、船舶輸送は元来大量輸送機関としての優秀性がある。

1998年の日本国内における輸送トンキロ当たりのCO2排出量を表7.2-3に示した。内航海運の輸送エネルギー効率は鉄道にはやや劣るものの、営業用トラック輸送に比べれば約1/5、航空貨物輸送に比べれば約1/40である。なお、外航海運は航空機貨物輸送及び陸上貨物輸送に比べて圧倒的に輸送エネルギー効率が高い(鉄道輸送の約1/2、営業用トラック輸送の約1/20、内貿航空貨物の約1/170)。

国際貿易のモーダルシフトについては、各国、各地域の状況によって取り得る方策が違ってくる。例えばわが国は、国際貿易で想定できるモーダルシフトは外航海運と航空機輸送に限定される。一方、欧州地域の場合には、河川を含む船舶輸送、自動車輸送、鉄道輸送の間でのモーダルシフトも考えられる。

ここでは、国際航空貨物と外航船舶のモーダルシフトについて単純な試算を行ってみる。1997年の国際航空貨物輸送量は約100×109トンキロである(平成10年版 運輸白書)。これに表7.2-3に示した航空貨物の輸送エネルギー効率を用いてCO2排出量を計算してみると、1997年の国際貨物輸送によるCO2排出量は約154×106t-CO2となる。表7.2-3の輸送エネルギー効率の比率からすれば、同じ量の貨物輸送を内航海運で行った場合(高速性や発着の頻度を考慮すると外航海運並の効率は期待できない)は約4×106t-CO2の排出である。1997年の外航船舶からのCO2排出量(約370×106t-CO2表7.1-2参照)を考慮すると、航空+外航船のCO2排出量は貨物量の10%のモーダルシフトによって、(154+370=524)→(154×9/10+370+4×1/10=509)となり、約3%の削減が可能であることになる。

 

 

 

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