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(3) 長期的検討課題

これまで述べたように、外航船舶の輸送総量は世界の経済成長に伴って大幅な増加が予想されているため、温室効果ガスの増加に今後20年間で実質的に歯止めをかけることは非常に困難な状況である。むしろ、長期的な視野に立って、世界経済の成長と歩調を合わせた方策の検討が必要と思われる。

以下に現状で考えられるいくつかの方策について述べる。

 

1] 輸送エネルギー効率改善技術の導入(エンジンコンセプトの変更)

従来燃料コスト低減のため、低質燃料を用い熱効率を高めてきた舶用ディーゼル機関は、今後長期的には環境負荷の低減のために、クリーン燃料及び自然エネルギーへの多角的対応など大きなコンセンプト変更を検討する必要がある。

シップ・アンド・オーシャン財団を始め関連団体では、地球環境問題への取り組みの一環として様々な長期的技術開発に取り組んできた。ここでは、削減効果が大きく、将来有望と考えられるエンジンコンセプト変更の技術を3点紹介する。

 

● 天然ガス改質舶用セラミックスエンジン

天然ガス改質舶用エンジンは、シップ・アンド・オーシャン財団で研究開発中の技術である。

このエンジンは、天然ガスを燃料とするが、排気ガス中の二酸化炭素から触媒及び排気熱によって、発熱量の高い水素と一酸化炭素に改質した上で、ガスエンジンに供給するものである。このガスエンジンにはセラミックスを用いた遮蔽効果の高い構造を採用することで冷却系を必要とせず従来より高温燃焼を可能とし、その高温の排気エネルギーを回収するものである。開発目標はプラント全体の熱効率70%以上、軸出力当たりのCO2排出量は、通常ディーゼルエンジンの1/2程度、同じくNOx排出量は通常ディーゼルエンジンの1/3〜1/4を目指している。

 

● 外航帆走商船の開発

1970年半ばに近代的帆走による補助推進が検討され、35,000DWTのバルカーに対して設置されたこともあり、一時期実用化に向けて開発が進められていた。

財団法人日本舶用機器開発協会では、平成2年に近代帆走装置による風力利用、船体風圧抵抗の減少などを他の省エネ技術を組み合わせた超省エネ船の概念設計を行い、設計上は貨物船で約41%、バルクキャリアで約34%の輸送エネルギー効率の向上が得られると予測された。その他デンマークにおいても1995年以降大型外航商船への適用を目的に開発が進められており、同様に25〜50%の燃料削減効果が得られるとしている。

荒天時の安全対策や軽量帆材の実用化などを含めて実用化には課題が多いが、気象海象予測の進歩に併せた帆走補助航法の開発や上部構造物が大きな船舶の揺動の研究も含めた今後のさらなる開発が必要であろう。

 

 

 

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