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もちろん、このような単純な試算で結論は出せないが、自動車輸送や航空輸送による貨物輸送を船舶に移行するモーダルシフトは、確実に温室効果ガスの削減に繋がる方策である。

モーダルシフトの実現に向けては多数の困難がある。航空貨物で運んでいる荷物は、高い運賃を負担しても高速で運ぶことに意義があるものであり、これを簡単に船舶輸送で置き換えることはできないだろう。また、エンドユーザー(戸口)への配送にはトラック輸送が必要であり、長距離輸送を船舶に置き換えても、港湾からの輸送距離やトランジットの時間やエネルギーを考慮すると、思ったほどの効果が上がらない場合もある。しかしながら、地球温暖化防止の観点からは、船舶だけでなく広く輸送システム全体の効率化、最適化の観点にたった長期的視点での検討が必要である。

 

表7.2-3 各交通機関における貨物輸送トンキロ当たりのCO2排出量(1998年)

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交通関係エネルギー要覧(2000)、国土交通省総合政策局編より作成。

内航海運にはフェリーによる輸送量は含まれない

 

3] 評価

(2)で述べたように、短期的方策と中期的方策を組み合わせたCO2排出量削減対策では、2020年の排出量は1997年に比べて25〜60%増加すると予測されている。従って、減速航行というオプションを使わずに第2評価基準を達成するためには、長期的対策として30%あるいは50%といった水準で輸送エネルギー効率を改善できる技術を開発・導入し、しかも長期的方策を導入した船舶が全体の相当な割合を占めるように誘導しなければならない。1]で示したように、エンジンコンセプトの大掛かりな変更を伴う輸送エネルギー効率の向上策については、単体としての輸送エネルギー効率の改善効果は極めて大きく、その開発・実用化を大いに促進する必要がある。

また、モーダルシフトの促進は長期的観点に立てば、運輸部門全体での温室効果ガスの削減になり、大変有効な方策である。しかしながら、モーダルシフトの概念やその意義は十分に理解されているものの、国際航空輸送、国際トラック輸送、外航海運輸送を総合した、かつ現実味を帯びた検討は不十分である。このためには、IMOにおいて外航海運のみを対象とした論議だけでは先へ進むことはできない。より大きな枠組み(例えばCOP;気候変動枠組条約締結国会議)の中で、国際輸送部門全体での対応策という視点から外航海運の位置づけと役割を明確にし、輸送部門全体での削減を目指すことが本来の意味での地球温暖化防止への貢献につながることを共通の理解とするよう努力を続ける必要がある。

 

 

 

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