その中でも主立った苦情事例を対象ごとにあげてみると、都道府県等からあったものは「短期入所の限度枠は、その期間に入院や施設入所すると減らされるのか」、「医師が訪問して、健康管理、膝の水抜きを行った場合は居宅療養管理指導になるのか」、「グループホームの入所者が入院した場合、入退院日については報酬の算定ができるか」、「オムツ代に尿パッドや処理代は含まれるか。また、特定診療費において、言語療法に資格要件はあるのか。住宅改修に、現にある建材の処理代は含まれるか」などであり、行政の現場においても介護保険の具体的な運用上の混乱が多数みられたことがわかる。
次に利用者からの苦情の主なものをみると、「家族3人で介護をしており、本人がサービスを受けることを望まないので家族介護を続けるつもりだが、何らかの支援はないのか」、「訪問介護の利用者負担軽減(3%自己負担)の場合、どういう計算で本人負担を求めるのか教えてほしい」、「ケアマネが過労で倒れてしまい、5月以降夫のケアプランを誰が作ってくれるのか不安である」、「消費税率を上げたのは福祉目的に使うためではなかったのか。介護保険料を重ねて徴収するのに納得いかない」など、介護保険の情報が非常に多いことや複雑であることなどからの質問に近いものが多い。
事業者サイドにおいても行政の現場と同様に、「ショートの拡大措置及び振り替えの特例措置について教えて欲しい」、「要介護者に訪問リハビリを行う場合、主治医から情報提供を受けて、別の医療機関のPT・OTが行うことは可能か」、「デイケアの創作活動の材料費を利用者から請求できるのか」、「老健に施設入所した者が、入所から2週間で家族の事情により退所した場合、ショートではなく、施設入所扱いとしてよいか」、「地域差について、利用者の住所地かそれとも事業所の所在地か」、「療養型の退院前後訪問指導加算の算定をするためには医師が居宅を訪問しないといけないか」、「デイサービスを償還払いで行う場合、送迎のみを現物給付できるか」、「入院患者から一律に利用料をとることはできないと聞いたが、例えば、1人1日シャンプー代100円を取ることは可能か。また、居宅療養管理指導について、主治医が同系列の居宅介護支援事業者に情報提供しても算定可能か。退院時指導加算についても同様か」など、個々の様々な事業活動と介護保険制度の具体的運用がどう適用できるかに多くの混乱があった。
介護保険が公表されると多くの不安や批判が出されており、国の行政相談にも多くの意見・要望が寄せられている(後述の「行政相談にみられる介護保険に関する苦情・相談事例」参照)。
参考資料
1. 「介護保険制度における苦情処理マニュアル」 宮城県・宮城県国民健康保険団体連合会、平成11年9月
2. 「介護保険にかかる苦情処理の手引」第2版 国民健康保険中央会、2000年3月
3. 中西啓之・篠崎次男・石川満「介護保険と住民運動」 新日本出版、2000年
4. 地域医療研究会他「医療と介護保険の境界」 雲母書房、1999年
5. 里見賢治・二木立・伊東敬文「公的介護保険に異議あり」 ミネルヴァ書房、1998年
6. 「介護保険 関係法令集」 ぎょうせい、1998年