日本財団 図書館


(図3.5.5の補足説明)

新方式レーダーで3秒ごとに得られる航海速力が約35ノットまでの一般船舶における移動距離は既存のレーダーで6秒ごとに得られる航海速力が約35ノットまでの一般船舶における移動距離の半分になる。そして、背中合わせのレーダーアンテナ1回転中、つまり6秒間の走査線の数(パルス繰り返し数)は両アンテナとも既存のレーダーアンテナと同じであるから、これらを3秒間で1回転したものとみなすと毎秒の走査線の数が倍増したのと等価になり、これは物標の検出能力を低下させずにアンテナ回転数を倍にしたのと等価になる。従って、新方式レーダーで6秒ごとに得られる一般船舶の取得情報量は既存のレーダーで6秒ごとに得られる一般船舶の取得情報量の倍になる。これで、追尾パラメータなどはそのまま流用して追尾しているため、新方式レーダーによる航海速力が約35ノットまでの一般船舶の追尾については既存レーダーによる追尾に比べてつぎのように安定することなどが期待できる。

 

(1) 追尾結果が既存レーダー方式よりも早く安定する

ある特定時間に取得する船舶の情報量は、新方式レーダーでは既存レーダーの2倍に増加するためこの特定時間での追尾結果の平滑位置などの変動は既存レーダーによる場合の約0.7倍(約1/√2倍)に減少することが期待できる。このことは船舶のある特定数の情報量を取得するために必要となる時間は新方式レーダーでは既存レーダーにおける時間の半分に減少するため、既存レーダーによる追尾と同じ結果を得るために必要とする時間も新方式レーダーではその半分の時間になる。これで、新方式レーダーでは航海速力が約35ノットまでの一般船舶の追尾結果は既存レーダーによるより早く安定する。

 

(2) 追尾で成功する確率が既存レーダー方式よりも向上する

新方式レーダーでは、3秒ごとに得られる航海速力が約35ノットまでの一般船舶の移動距離(約54m)は、既存レーダーで6秒ごとに得られる航海速力が約35ノットまでの一般船舶の移動距離(約108m)の半分になるが、既存技術の追尾パラメータなどはそのまま流用して今回の観測位置と前回の観測位置との位置差が既存のレーダーで6秒ごとに得られる航海速力が約35ノットまでの一般船舶の移動距離(約108m)以内であれば位置の相関が有るとして追尾するため、航海速力が約35ノットまでの一般船舶の追尾で成功する確率が既存レーダーによる追尾で成功する確率より向上することが期待できる。因みに、位置誤差界の大きさ(位置誤差円の半径R)とその内部にその位置が存在する確率(位置確率P)との関係(注1)から、位置誤差円の半径Rがその1倍のR1からその2倍のR2に対応する大きさになった場合の確率を示すと、R1=1.1774でP=0.5に対しR2=2.3548でP=0.9375になる。

(図3.5.5.1から2および表3.5.5.1から2参照 )

 

(注1)位置誤差界または位置誤差円と位置確率との関係についての詳細は参考資料6参照

(誤差円と誤差楕円または確率楕円との関係などについての詳細も参考資料6参照)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION