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これらの予測を検証するために、いくつかのコンピューター・シュミレーションが発生区域からのメタノールの移流消散をモデル化するために実施された(Machiele、1989年)。最初の仮説シュミレーションから、開かれた海への10,000トンのメタノールの拡散は漏出の1時間以内において0.36%の濃度に達することが明らかにされた。海岸の桟橋から1時間に10,000リットルの量で漏出があったとする2番目の仮説シュミレーションから、漏出が止まった後、2時間以内で漏出現場で1%以下の濃度、3時間以内で0.13%という濃度が示された。

3.2.2.1 バイオ分解

地表水の中のメタノールの除去に最も有力なプロセスはバイオ分解である。好気性の条件下での地表水の中のメタノールの報告された半減期は短く、24時間以下と報告されている(表3-2参照) (Howardその他、1991年)。流れている水の中では、風と潮で高められた混合により、好気性微生物のプロセスを支援するに十分なレベルの溶け込んだ酸素濃度が維持されている。層を形成した湖の底層のような酸素が制限された環境においても嫌気性のバイオ分解が速い速度で進行するとみられている;嫌気性の状況でのメタノールのバイオ分解に関する報告された半減期は1から5日の範囲である(Howardその他、1991年)。加えて、河川や湖における栄養素の供給は、求められる栄養素の供給が絶えず流れによって補給されているため、メタノールの物質代謝を制限するとは一般に考えられていない(Alexander、1994年)。しかしながら、閉じられた区域における大規模な漏出からの高いメタノール濃度は、水生生物の生命を維持するのに必要な地表水の酸素を消耗させるだろう。

3.2.2.2 非バイオ分解

非バイオ分解(すなわち非生物学的あるいは化学的)反応は地表水からメタノールを除去するためにあまり寄与しないとみられている。加水分解反応は通常、化合物をより極性の強い生成物に変える;メタノールは非常に極性の強い分子であり、水中で安定している。光分解は光を直接吸収する結果、化合物の置換を引き起こす。メタノールは可視スペクトルの中の光と長い波長の紫外線を吸収しない。メタノールは太陽光線にごくわずか含まれる非常に短い波長の紫外線を吸収する。加えてメタノールは、硝酸塩、亜硝酸塩および励起されたフミン素材との反応やH2O2と(酸化)鉄(II)との反応から生じた過酸化水素の光分解によって水中に形成きれたヒドロキシ遊離基により、自然に酸化される(Schwarzenbachその他、1993年)。このように、直接あるいは間接の酸化を通じた自然で発生するメタノールの光酸化が可能である;しかしながら、これらの反応は緩慢でこのため地表水の中では大きくは期待できない。

 

 

 

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