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各町村の行政担当者にもまた住民にも、「九州ハイランド」地域という地域認識もなければ、ましてや地域の一体感あるいは連帯感を持ちようがなかった。そうした中で、「構想」の実現は、「九州ハイランド」地域としての一体感・連帯感を各町村の行政担当者や住民が抱くか否かにかかっている、と言っても過言ではない。県の補助金が跡絶えれば「九州ハイランド」地域を構成する町村の広域連携が消滅してしまうようであっては意味がない。

地域の連帯感・一体感は、この事業にかかわっている人たちの間には醸成されてきている。とくに、事実上の実施主体となっているワーキンググループ会議の人たちやガイド・インストラクター協会に参加した人たちの間では、事業を実施する中で、連帯感・一体感が生まれている。これは地域の今後を考えるときに、非常に大きな成果であり、貴重な財産である。今後は、より多くの住民、より多くの行政担当者が、この事業に参画することによって、「九州ハイランド意識」を共有するようになることが、事業の発展、「構想」の実現のための重要な課題となろう。

 

(3) 体験ツアー・イベント

 

九州ハイランドの自然・歴史・文化の体験ツアーやイベントを通して都市住民との交流を図ろう、そしてそれによって地域の活性化を図ろう、というのが、この「構想」のいわば大黒柱である。このツアー・イベントは、地域資源の発掘、ガイド・インストラクターの組織化と資質向上、ポスター・チラシ・ガイドブック、情報紙等の作成・配布など多くの事業が結集する「場」である、という意味でも、事業全体の中核をなしている。

平成8・9年度のモニターツアーの結果を踏まえて、平成10・11年度には、活性化協議会の事業として、各町村の地域資源を活かした自然と歴史体験ツアー・イベントが実施されている(表6表8参照)。実施日をほぼ合わせ、「九州ハイランド」観光の名の下に、原則として各町村単位で実施している。11年度の計画を見ると、募集人数が20〜50人程度の1泊2日のツアーが多い。広域にわたるツアーや、九州ハイランドのメイン・イベントといったものはない。それよりもむしろ各町村の自然や歴史・文化の特徴を出した小規模なツアー・イベントに徹底している。各町村の「構想」推進事業への取り組みに格差があるが、地域資源を活用した新しい観光事業をほぼ同時期に実施することが、広域連携を進める手始めとしては適切であろう。

募集人員を満たすことは必ずしも容易でないようだが、住民と参加者の交流を含めた新しい観光を創り出す試みは着実に進んでいると評価されよう。全地域的イベントとしては平成10年2月に催された、「九州ハイランド観光シンポジウム」があるが、今後も、数年に1度、全地域的イベントが、九州ハイランド構想を象徴するものとしても催されることが望まれよう。

 

 

 

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