支出を見ると、10年度の支出のおおよそ半分の600万円が、各町村の観光ツアー・体験学習イベントに支出されていて、各市町村の負担金がそのまま、各町村に還元されていた。
11年度には、それに相当する支出が半分の300万円となり、一方ガイドブック作成等の「情報提供発信」事業に支出の半分の600万円が当てられている。また、11年度には、事実上の活動の核となっている「ワーキンググループ会議」への支出が大きく増加している。このワーキンググループ会議への支出と、ガイド・インストラクター協会の支援のための支出とは、すでに見たように、この協議会の活動の中心的担い手に対する財政的裏付けをなすものである。人材の養成は、きわめてむづかしい事業であり、「構想」推進事業の実施を通して地元に人材が育成されるのである。このワーキンググループ会議とガイド・インストラクター協会は、人材養成の点でも大いに期待されるところである。
また、共同して各町村が実施するツアーやイベントに対しての支出が、11年度には前年度の半額となったが、その分、参加者の負担増と、事業規模の縮小となっている。しかし、それは当然のことであって、採算ベースに乗るツアーやイベントの実施の方向が追求されているからである。
5. 成果と課題
九州ハイランド構想が策定されてから5年、そして九州ハイランド活性化協議会が発足してまだ1年半余、今年が2年度目と、まだまだ日が浅い。従って、その成果や課題を今の時点で評価するのは時期早尚であるが、ここでは、とりあえずの評価ということでいくつかの点を記したい。
(1) 全体としての評価
まず、九州ハイランド構想実現への取り組みが、全体として着実に前進していると評価することができよう。構想の策定(平成7年度)から、その実現のための基本計画の策定(8年度)、そして各種事業の実験的試み(9年度)を経て構想推進の主体の確立(10年度:協議会・インストラクター協会の設立)と事業への取り組み(10・11年度)へと着実に展開している。まずこのことをおさえておこう。事業はまだ端緒についたばかりではあるが、順調に滑り出している。
(2) 地域一体感・連帯感
すでに指摘したように関係町村は、自然条件では共通したものをもっとはいえ、2県7郡に跨がり、これまでは行政上の体性・統一性が云々されることはなかった。いや、云々される必然性がなかった。